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SNSでよく見かける柴犬ですが… 散歩中にグルグル回る病気を知っていますか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの感染を防止するために在宅で過ごす時間が長くなり、癒しの対象を求める人が増えています。時間があるので、SNSを覗くと、柴犬が、「庭で寝ている写真」やシャンプーを気持ちよくしてもらっている動画などが多くあります。それらを見ると「柴犬っていいな」と思ってしまいます。確かに、表情があって日本犬で歴代、人気の犬種です。その柴犬がシニアになると、グルグル回る病気があるのをご存じでしょうか?

散歩でグルグル回っているのは、大半がシニアの柴犬ですね。

撮影筆者の知人 若いときに柴犬は認知症になりにくい。
撮影筆者の知人 若いときに柴犬は認知症になりにくい。

コロナ禍の中、その柴犬・花子ちゃん(仮名)は3密を避けて診察にやってきました。

待合室に、他の人がいないので、花子ちゃんを放していました。花子ちゃんは、オムツをつけて、ゆっくり部屋の中を回っています。そして、狭いところに入って出て来られなくなってしまいました。花子ちゃんの飼い主は「シニアになって、散歩でグルグル回っているのは、大半が柴犬ですね。でも一番、困っていることが、夜泣きです」と訴えました。

柴犬などの日本犬は、認知症が多い

花子ちゃんの病気は、認知症です。

理由はよくわかっていませんが、日本犬に多いといわれています。秋田犬、甲斐犬、北海道犬にもあるのですが、柴犬が多く飼われているので、目立ちます。もちろん、柴犬とのミックス犬もなります。

認知症以外にくるくる回るときは、

・前庭疾患

・脳腫瘍

・てんかん

・ストレス

・興奮

などがあるので、ぐるぐる回り出したら、かかりつけ医に診察してもらいましょう。

認知症の症状

・食欲旺盛になります。食べたことを忘れます。でも、消化器はそれに追いつかないので、食べすぎると下痢をします。

・いままで食べなかったものを口にします。たとえば、石など。

・生活が昼夜逆転します。夜に動き回って、昼は寝ています。

・抑揚のない、単調な声で鳴き続けます。遠吠えの声です。

・狭いところに入ります。後ろに下がれないので、どうしようもなくなって鳴き続けます。

・同じところをグルグルと歩き回ります。

・飼い主の呼びかけに反応しなくなります。

・オテやオスワリなどを教えたのに、それも出来なくなります。

このような症状ですが、一般的な来院の理由は、朝夜逆転で夜鳴きです。夜に鳴かれると近所に迷惑がかかるし、飼い主も寝られないからです。

認知症の治療

撮影筆者 認知症の子のレーザー治療をしている
撮影筆者 認知症の子のレーザー治療をしている

・食事を変更します(まだ、よくわかっていませんが、牛のタンパク質より魚のタンパク質がいいといわれています。江戸時代から飼われている柴犬は、牛のタンパク質をうまく代謝できない可能性があります)。

・サプリメントを与えます。

・安定剤や睡眠導入剤を内服します。

・漢方薬を与えます。

などありますが、人の認知症と同じでこれだけすれば大丈夫というものは、なかなかないです。

飼い主のできること

・朝日に当てます。

・散歩に連れていき、外の刺激を受けると夜によく寝てくれるケースもあります。

・マッサージをしてあげます。

・上記のような症状があれば、病気なので、かかりつけ医に早めに相談しましょうね。

まとめ

新型コロナウイルスの影響で、家にいる時間が増えました。SNSで見る柴犬は、表情が豊かでかわいいですね。そして、飼ってみたくなります。こんな犬がいれば、家族の中での話題も増えるし、人の癒しになります。

その一方、柴犬も生きているので、老いがきて、認知症になりやすいという犬種です(もちろん、他の犬もなりますが、柴犬などの日本犬がなりやすい)。いま、犬が欲しいという一時の感情ではなく、シニア犬になってもずっと飼い続けてくださいね。ペットと暮らすということは、一生涯愛するということなのです。花子ちゃんの飼い主は、「13年間、ずっと私たちに癒しを与えてくれましたから、最後までお世話をします」といわれて、診察室を花子ちゃんと一緒に出て行かれました。

 

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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