【危機感】韓国、コロナ感染拡大で「5人以上の集まり禁止」のクリスマス。”最終ステップ”への正念場へ
「要は外出を控えろ、ということだと理解しています。政府は細かい段階を設定して行動規制を促していますが、あれこれと考えず、外出をしないということですよね」
ソウルに暮らす30代のスポーツ系メディア勤務の男性が言う。自身も11月下旬ごろから再びリモートワーク態勢に戻る日々となっている。
24日0時から韓国全域で実施されている「5人以上の集まり禁止令」を受けての話だ。
韓国政府が実施する1月3日までの「特別防疫体制」。特に厳しいのが食堂・レストランに対するもので、「5人以上の集まり」が確認された場合、客側に10万ウォン(約9400円)以下、運営者側には300万ウォン(約28万円)以下の過料が科せられる。禁止”令”ゆえのものだ。
日本では政治家のセンセイの食事会参加人数の話題で大騒ぎだが、韓国では「8人が4人、4人に分かれて座るのも禁止」とされている。そもそも今回の規制で飲食店が予約を受け付けられなくなった。
ソウル首都圏以外はやや緩やかで、食堂・レストラン以外での5人以上の集まりは「最小限の勧告」にとどまる。
いっぽうで全国のスキー場、スケート場、子どものそりの遊び場などが閉鎖となる。「朝鮮日報」によると全国で閉鎖となるウィンタースポーツ会場は合計179か所となる。
さらに年始の初日の出の名所も閉鎖に。ホテルは客室の50%のみ予約が可能で、パーティーなどは基本的に禁止。映画館も夜9時までの営業となり、デパートや大型マートでは試飲・試食コーナーが開設禁止となる。
すでに23日0時から首都圏がこれに近い態勢となっていたが、24日0時からは全国的にこれが拡大となった。国内メディアの「ハンギョレ新聞」はまだソウル首都圏自治体の行政命令だった12月21日に背景をこう報じた。
「現在、新型コロナの3次流行が大きく拡散している状況下で、クリスマスと年末年始期間の移動量増加、そして人的接触が拡大された場合、防疫システムに深刻な影響を与え、崩壊へと向かう心配があるためだ」
急遽、「クリスマス感染を食い止める」手が打たれたのだ。前出のソウル在住の男性はその雰囲気をこう話す。
「テレビのニュースでは5人以上集まっていないか、行政側のスタッフが”取締”っぽくチェックする映像が流されていましたが…さて、これに効果があるか。首都圏にある飲食店なんて、数え切れませんからね」
韓国のコロナの全般的状況
韓国もまた、新型コロナの状況が深刻度を増している。
3月下旬には「国内で新規感染者より隔離解除者の方が多い」という状況(つまり感染者が減少した)となり、また4月末には「国内の地域内新規感染者ゼロ」という日があるなど、抑え込みに成功した。しかし11月中旬からいわゆる「第3波」により再び急増。下の記事にあるようにここ数日は全国での1日あたりの新規感染者増が1000人前後で高止まりという状況だ。
「韓国の新規コロナ感染者985人 1千人前後で高止まり」(聯合ニュース)
ちなみに12月23日の日韓の10万人あたりの新規感染者数は「日本=2.58人、韓国=1.90人」となっている。
明確な韓国の「行動規制ルール」
では、日本は韓国のこういった状況について何を見出すべきなのか。
韓国のような”きっちり型にはめた対策”と日本の”緩やかで状況に応じて決めていく対策”の違いだ。筆者は疫学の専門家ではないがゆえ「どちらが正しい」という言い方は避ける。ここではあくまで違いの提示を。
韓国ではかなり明確に新型コロナによる行動規制のステップや、そこで使われる用語までも決められている。感染がどういう状態になればどんな規制があるのか。基準が明確で、かつどの用語が何を示しているかも明確。行動規制のステップは当初は1、2、3段階だったが、幾度か修正が加えられた。1.5と2.5が追加されたのは11月12日だ。
現在のコロナ関係の現場責任者である政府疾病管理庁のチョン・ウンギョン長官は、2015年にMERSを流行させてしまった失敗から叱責された苦い経験をもつ。これが今回の新型コロナ対策に生かされていると言われている。積極的なPCR検査とあわせ、明確な基準づくりも「K-防疫」として韓国側が誇ってきた点だ。
これは、日本とは大きく違うものでもある。日本では4月17日に政府が緊急事態宣言を行い、一気に日常生活から大きな変化が起きた。また当時は専門家会議や自治体の会見などから「オーバーシュート」「ロックダウン」といった新しい用語が次々と発信されるというようなことがあった。
韓国のコロナ対策の”苦悩”
そういった背景から見ると、今回の韓国の「5人以上の集まり禁止」は「苦悩の表れ」に見える。本来のルールにないものだからだ。
現在韓国政府が最も大きな行動規制を発令しているのはソウル、釜山を含む8都市・地域に対する「2.5」。政府側は”全国的な流行本格化”という言葉で表現している。
これを「3」に進めるかどうか。実のところ数字上は移行すべき「新規感染者1日1000人増基準が1週間続く」に達しており、本来ならこの態勢に移っているはずだ。
しかし、ここへの進行を防ぐため、新たに独自に「2.5」にない規制を作り出したのだ。現状は「3」はない「2.75」といったところか。
上記グラフィック右下にあるように、ステップ「3」のイベント開催禁止人数は「10人以上」。それよりも厳しい制限である「5人」をクリスマス・年末年始向けに設定したのだ。
第3段階となれば、日本の緊急事態宣言の時のような生活上の規制が加わる。
- スポーツ競技は「中止」。
- 国公立ほか多くの施設は屋内外を問わず運営中止。
- 社会福祉施設も、急な子どもへのケアが必要な時以外は閉鎖。
- 学校がリモート授業に。
- 会社への出勤も必要最少人員以外は在宅勤務が義務化。
- 宗教関連行事(キリスト教の日曜礼拝など)は「リモート」となり、集合、食事などが禁止される。
この段階へと進むのか。「YTN」など複数メディアは12月20日頃からすでに 「政府は第3段階への移行を検討中」としている。そこに”政治的判断”の要素が入るのだろうか。この「最終ステップ」への移行はある意味、K-防疫の大きな後退ではある。もしくはそういった面子よりも感染状況を最優先させるか。
一般の声はこういったところだ。
「じつのところ、会社員にとっては2.5であれ、3であれ大きな影響はないでしょう。『とにかく外出しない』という点には変わりがありませんから。問題は食堂などの個人経営の店です。私の知っている店でも、もうすでに11月中旬から店を閉めているところがありますから。個人的な感覚では、経済面を考えるとより厳しい第3段階へは行かないのではないかとも感じています」(前出のソウル在住の30代男性)
韓国のコロナ対策は、分かりやすさ・明確さがストロングポイントである反面、「決めすぎ」による悩みも見られる。はたまた日本よりも「方針が明確に示されている」という点は安心か。
韓国ではきょう25日は「聖誕節」という公休日となる。25日にピタッとクリスマスムードが終わる日本とは少し違い、韓国では本来、その週の週末までクリスマスムードを楽しむ傾向があった。
いっぽう年明けは1日のみが公休日で2日から始動となるのが一般的。正月に関しては毎年、旧暦に沿った休みをしっかりと取るからだ。
この週末の感染者数増の状況で、どんな判断が下されるだろうか。