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メディアの方にも責任と自覚を!プロ野球の年間表彰に投票する記者が「匿名」なのは納得できない!

上原浩治元メジャーリーガー
MVPに選出された柳田悠岐選手。侍ジャパンでも活躍が期待される。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 シーズンを活躍した〝ご褒美〟の一つが各タイトルの表彰式かもしれない。

 年の瀬が近づき、プロ野球の年間表彰式の「NPBアワード」でセ・パ両リーグの最優秀選手(MVP)やベストナイン、新人王が17日にそれぞれ発表され、翌18日には「ゴールデン・グラブ賞」で守備の名手が脚光を浴びた。

 今季のMVPはセ・リーグがリーグ2連覇の巨人からエース菅野智之投手、パ・リーグは3年ぶりのリーグ制覇と4年連続日本一に輝いたソフトバンクの柳田悠岐外野手がそれぞれ選出された。

 6年ぶり2度目のMVPを獲得した智之(菅野投手)の今季成績は、プロ野球記録となる開幕投手からの13連勝を達成し、最多勝の14勝(2敗)に加え、勝率もリーグトップ。防御率1・97で、2年ぶり4度目のベストナインにも選出された。

 5年ぶり2度目の受賞となった柳田選手は打率3割4分2厘、146安打、29本塁打、86打点、出塁率4割4分9厘の5部門がチームトップ。初めて最多安打のタイトルも獲得した。ともにMVPにふさわしい成績を残した。

 MVPは誰が決めているのか。新聞社、通信社、放送局のプロ野球記者で取材歴5年以上を目安に投票資格を得られるそうだ。資格のある記者が1位、2位、3位に票を投じ(該当者なしを含む)、1位は5点、2位は3点、3位に1点がそれぞれ与えられ、合計点数の最も高い選手がMVPに選ばれている。ベストナイン、新人王、ゴールデン・グラブ賞も記者による投票で決まっている。

 NPBのホームページにも掲載されているが、たとえばセ・リーグの1位票は智之がトップで、2位票は巨人の「打」でリーグ優勝に貢献した岡本和真選手がトップになっていた。3位票ではこの2人以外に、12人の選手が票を獲得していた。ベストナインの内訳をみると、「外野手部門」で戦力外通告を受けた巨人のイスラエル・モタ選手に1票が投じられた。

 票が散らばることは記者それぞれに評価の基準があるということだろう。戦力外の選手が票を得ることもそのことだけで悪いとは言えない。ただ、どういう理由があるのかは、勉強の意味でも知っておきたい。

 疑問なのは、票を投じられた選手は当然ながら実名で、内訳もすべて明らかになるのに対し、投票した記者は公になっていない。〝顔〟が見えない。どの記者がどんな理由で、MVPや新人王、ベストナインを投票したのかがわからない。そのことで昔から「担当球団の選手に入れる傾向にあるから、番記者の数が多い巨人や阪神の選手は有利」「この1票はどう考えても、『遊び』か、記者にとって、よほど付き合いの深い選手なのだろう」などと憶測を呼ぶことがあった。

 タイトルは選手にとって生涯にわたって「肩書き」としてついてまわる名誉でもある。一票は決して軽くない。

 米大リーグではどうなっているのか。全米野球記者協会(BBWAA)が選出する最優秀選手(MVP)、サイ・ヤング賞(最優秀投手賞)、最優秀新人(新人王)、最優秀監督の4つについては、取材実績のある記者に投票権が与えられているという。ただ、大きく違う点がある。それは、メジャーの記者投票の結果は社名、実名がともに公開される点で、投票理由の説明を求められることもあるそうだ。このことは、BBWAAがいかに賞の選考にプライドと重責を担っているかを裏付けているように思う。

 NPBのタイトルについても、ぜひ日本の記者の人たちには、ぜひ誰に投票したかを公開してほしい。選んだ理由も明かしてほしい。

 たとえ少数票であっても、「この記者は大勢に流されることなく、こういう考え方で票を投じたのか」と独自の観点に納得することができれば、票を投じた記者の評価も高まるはずだ。もちろん、逆もありうる。「なんとなく」の票ではなく、きちんとした理由があってこそ、賞の重みもあると思う。

 私自身、MVPに関しては、20勝をマークした新人イヤーの1999年のときに主な投手タイトルを独占したが、選出されなかった過去がある。選ばれたのは優勝した中日で19勝を挙げた野口茂樹さんだった。野口さんの成績はもちろん素晴らしいものだったが、選考から漏れた理由に「チームが優勝しなかったから」という声を漏れ聞いたときには、釈然としなかった。「選考項目に優勝チームから選出する」と明記しておいてくれれば納得できるけれど、過去には優勝チーム以外からも選ばれている。基準が曖昧というのは、どうなんだろう。その気持ちはいまも晴れていない。

 投票する側が「優勝チームから選ぶべきか、否か」もはっきり示すべきではないかと思っている。優勝チーム以外の選手から大記録が生まれる場合もあり、選考がそんな単純ではないというのなら、それぞれの記者が選考した理由と優勝チームからの選出の是非についての見解を明らかにしてくれればいい。そうすることでMVPのあり方についての議論も深まっていくと思うのだが、どうだろうか。

 投票制度をすぐに変更することはできないかもしれない。一方で、ツイッターやフェイスブックなど、記者もSNSで積極的に発信している時代だ。試合の速報などをアップするだけではもったいない。「私は今季のMVPに〇〇選手を1位とした。理由は〇〇〇だからだ」と公開する記者がいれば、責任と自覚を持って票を投じているんだという目で見ることができる。そんな気概を持った記者が出てきてほしいなと思っている。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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