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串カツ田中の元店長逮捕、更衣室で盗撮未遂か 「防犯目的だった」と弁解のワケ #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

愛知県豊橋市の「串カツ田中」で店長だった男が、制服のサイズチェックと称し、アルバイトの採用面接に来た女性に更衣室で着替えさせ、盗撮しようとしたとして逮捕されました。女性が録画状態のスマホを発見して発覚したというものです。男は「防犯目的だった」と容疑を否認していますが、男のスマホには別の女性の着替えを撮影した複数の動画があり、警察は余罪の捜査を進めています。

7月に施行された性的姿態撮影等処罰法は、意に反する性的画像・動画の撮影や記録、提供、送信、保管などを広く処罰の対象にしています。撮影罪だけでも最高で懲役3年であり、未遂も処罰されます。

ただ、「ひそかに撮影する行為」には「正当な理由がないのに」という要件が付されています。男の弁解は信用し難いものですが、それでも法的には更衣室への防犯カメラの設置が「正当な理由」にあたると主張していることになります。参考となる記事をまとめました。

▼医師が救急搬送された意識不明の患者の上半身裸の姿を医療行為上のルールに従って撮影する場合などが「正当な理由」

▼更衣室への防犯カメラの設置は、カギ付きロッカー導入など合理的代替手段がないといった要件をみたす必要がある

▼防犯カメラ自体を見える位置に設置したり、設置していることが分かるように掲示したりする必要がある

▼防犯目的であれば、カメラの存在を従業員に周知しておく必要がある

以上からすると、男に「正当な理由」があったと認定されることはないでしょう。防犯カメラの設置を巡っては、プライバシー保護の観点から、個人情報保護委員会や各自治体などがガイドラインを定めています。設置の表示を行うこと、撮影された動画などの適正な管理を行うこと、設置目的以外の利用や他者への閲覧・提供を禁止することなどです。

この店舗の運営会社は、直ちに男を懲戒解雇しました。こうした事件は大きなイメージダウンになりますし、ただでさえ人手不足の飲食業界ですから、女性が安心して働けない職場だということで、アルバイトの応募者が減ることにもつながりかねませんね。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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