グーグルが自動車分野で新サービスの実験開始、完全自律走行車を見据えた技術開発か
米ニューヨーク・タイムズや米ウォールストリート・ジャーナルなどの報道によると、米グーグルは傘下のイスラエル企業を通じて、カープール(自家用車の相乗り)サービスの実験を始めたようだ。
「目的は地域住民同士の助け合い」
同社は2年前に、モバイル端末用カーナビゲーションアプリを手がける「ウェイズ(Waze)」という会社を買収したが、報道によると、ウェイズは今週からイスラエルのテルアビブとその近郊の通勤者を対象にした「RideWith」と呼ぶカープールサービスの試験運用を開始した。
これにより、利用者は同名のAndroid用アプリを使って、自宅と通勤地の間を走る自家用車にカープールを申し込むことができる。
一方自家用車の運転者はウェイズのカーナビアプリを利用する。
もし自分の行き先と同じ方向にカープールの希望者がいれば、そのことがアプリに表示される。運転者がそれを承認し、アプリのGPS機能を使って利用者を拾い、目的地まで送り届けるという仕組みになるという。
利用者はアプリに紐づけられたクレジットードで料金を支払うが、その対価の対象はガソリン代と自動車の使用に伴う消耗費用のみで、運転に関する報酬は支払われない。
RideWithはあくまでも地域住民のカープールを支援するサービスであり、日本で言うところの一般乗用旅客自動車運送業に当たるハイヤーやタクシー事業ではないのだという。
ウォールストリート・ジャーナルによると、グーグルの広報担当者は同紙の電子メール取材に対し、「(RideWithは)交通量の多い時間帯にテルアビブの通勤者が互いに助け合うためのプラットフォーム」と説明している。
同紙によると、RideWithにはそれを徹底するための仕組みが用意されている。
例えば通勤の行き帰りにカープールを利用したい人だけがこのサービスの対象となる。運転者が利用者を乗せられるのは、自分が自宅近くから職場に行くとき、あるいは職場から自宅近くに帰るときのみとなり、その1日の回数は2回までという制約がある。
次世代の旅客自動車運送サービス
今回の報道に先立ち、グーグルが独自の配車サービスを計画していると米ブルームバーグが伝えていた。同社は以前から自動運転車の開発に取り組んでいるが、ブルームバーグによると、グーグルの配車サービスはこの自動運転車プロジェクトと連携して進められる可能性が高いという。
大手自動車メーカーはドライバーの運転操作を補助する自動運転機能を段階的に導入しようとしている。これに対しグーグルは、ドライバーの運転操作が一切不要の完全自律走行車を目指している。
例えば、グーグルの自動運転車開発プロジェクトのディレクタ、クリス・アームソン氏によると、同社が想定する用途は、視覚障害者が自動運転車に乗って昼食に出かけたり、1人暮らしの高齢者が行事に参加するために自動運転車を利用したりすること。
また、オフィス街でスマートフォンアプリを使って車を呼び寄せる、といったシステムも同社が取り組みたい分野の1つだと同氏は説明している。
グーグルでは現在、時速25マイル(約40キロ)以下で走行する近隣移動用の自動運転車の開発に取り組んでいる。つまり、これは高速道路を時速100キロで長距離走るといった大手自動車メーカーの車とはまったく異なるコンセプト。
こうしたことから、同社は今回のイスラエルの試験サービスを通じ、次世代の旅客自動車運送サービスについて研究しているのではないかと見られている。
世界各地で波紋広がる配車サービス
一方で、モバイルアプリとネットを使った配車サービスについては、世界各地で波紋が広がっている。7月3日には米ウーバー・テクノロジーズが、フランスで行っている一部のサービスを一時中止すると発表した。
フランスでは今年6月にウーバーのサービスに反対するタクシー運転手が激しい抗議活動を行い、65人のドライバーが襲われ、10人が病院に運ばれたと伝えられている。
ウーバーには旅客輸送業の免許を持たないドライバーを利用した「Uberpop」という低価格サービスがあるが、かねてこのサービスの違法性が指摘されていた。
同社はドイツ、イタリア、スペインなどでもサービスの制限や禁止を言い渡されており、フランスでは幹部2人が警察に身柄を拘束されたとも伝えられている。
(JBpress:2015年7月8日号に掲載)