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眞子内親王の極めて危険なオトコの選択

安積明子政治ジャーナリスト
名誉をかけた文書をあっさりと撤回。落としどころはいったいどこに?(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

わずか4日後にひっくり返す

 おそらく誰もが「舌の根も乾かぬうちに……」と思ったに違いない。4月12日夕方に「小室圭さん“解決金”を支払って金銭トラブルを解決したい」との速報が流された時だ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/dd4685f0142d4335d15fccc7df28eb70fcfdc55f

 秋篠宮家の長女・眞子内親王と国際基督教大学で同級生だった小室圭さんは2017年9月に婚約が内定したが、同年12月に週刊女性が小室さんの母・佳代さんと元婚約者の金銭トラブルを報道し、翌2018年2月には納采の儀など一切の行事が延期された。同年8月にフォーダム大学ロースクールに入学するために渡米した小室さんは、2019年1月に文書を出したきり、ダンマリを決め込んでいた。

説明文書」で小室さんが主張していたこと

 その沈黙を破ったのは今年4月8日で、小室さんは28枚もの「説明文書」を公表。その目的を「私や母と元婚約者の方との間にこれまであったやり取り等について実際の経緯をある程度明らかにすることを通じて、これまで世の中に出回ってきた金銭トラブルと言われている事柄に関する誤った情報をできる範囲で訂正すること」としている。では小室さんは何を言いたかったのか。

 「一般的には金銭トラブルと呼ばれていますが、切実に名誉の問題でもありました」と小室さんは訴える。また「(解決金を渡せば)どのような理由があろうと、早期解決と引き換えに借金でなかったものが借金であったことにされてしまう事態を受け入れることはできないと考えた」「借金だったことにされてしまえば、元婚約者の方のおっしゃることは正しかったということになり、私や母は借金を踏み倒そうとしていた人間だったのだということになります」と述べている。そこには「借金は良くない」という前提があり、「借金を踏み倒した不名誉を否定したい」という意識がある。

様々な矛盾

 しかしながら、小室さんの母・佳代さんは実際に元婚約者に借金を申し込んでいたのであり(元婚約者の携帯メールの記録がある)、「借金ではない」と否定するのはどだい無理だ。そこでその債務を元婚約者からの婚約破棄による慰謝料請求権と相殺したという法構成を主張した。ちなみに2019年1月の文書では、この相殺は双方が「確認した」と記載しているが、実際にはそうではなかったようだ。いずれにしろ法律家の卵にしては、事実認定が甘すぎないか。

 この「説明文書」にはもちろん、国民から強い批判が浴びせられた。脳科学者の茂木健一郎氏は4月9日に公開した動画で「日本人が文化として大事にしてきた“すっきりしたところ”、“清らかさ”がない」と述べ、12日放映のフジテレビ「バイキングMORE」でもタレントの峰竜太氏が「(今は困窮している)お世話していただいた人に対するやり方ではない」、MCの坂上忍氏が「眞子さまの婚約者として自分に非がないとする思いが強すぎて、相手に対する気持ちがないのが残念でならない」などとコメントしている。

 また同番組に出演した弁護士の横粂勝仁氏は「母は贈与税を払った」との小室さんの主張に対し、「(元婚約者から佳代さんへの金銭授受が)贈与であれば贈与税はかかるが、債務免除なら贈与税を払う必要はない。また(小室さんが「借金はない」という主張の前提とする)慰謝料請求権には贈与税はかからない」と矛盾を指摘。弁護士の西川研一氏も「(和解によって)解決金を支払ったからといって、借金を踏み倒したとは普通はしない」と法律上の常識を述べ、横粂氏も「和解という形にすれば守秘義務を課して、表にしないですむ」と弁護士なら当然に採用すべき解決方法を披歴した。要するに小室さんは「複数弁護士に相談した」としているが、初期対応が悪かったわけだ。

果たして解決金で解決できるのか

 しかも今さら「解決金」を払っても、この騒動は収まりそうにない。そもそも元婚約者は「返してもらおうとは思わない」と述べており、解決金の前提となる話し合いが行われるのかどうかが疑問だ。

 さらなる疑問は「解決金」はどこから出されるのかという点だ。留学中の小室さんには収入がないが、母の佳代さんの収入だけですぐに約400万円を用立てることはできるのか。もし小室さんが文書ではからくも「借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続ける将来の私の家族」と暗示した眞子内親王が支払うのだとしたら、国民が黙ってはいないだろう。

 国民が小室母子に抱く疑問の本質は、約400万円の借金問題ではない。多くの国民が怒っているのは、小室さんが安直な名誉論を展開し、小手先の法構成での言い逃れしようとしている点だ。それは日本人が長らく誇ってきた歴史、伝統、文化を体現する皇室のありようとはとうてい相いれない。にもかかわらず4月8日の「説明文書」が公表された直後の会見で、宮内庁の西村泰彦長官は「非常に丁寧に説明されている印象だ」「小室さん側と元婚約者との間の話し合いの経緯についても理解ができた」と“大絶賛”し、国民の理解については「それぞれが判断されること」と突き放した。小室さんが冗長な「説明文書」を出したことで一応“任務”をまっとうできた西村長官だが、さすがに「国民が理解できた」と言えるはずがない。

国民は小室さんを求めていない

 国民が求めているのは、皇室の名誉の保持であり、日本の名誉の尊重である。2年以上も沈黙の後にようやく表明した文書で「名誉のために解決金を払わない」と主張しながら、国民の批判が大きいと知るや、わずか4日後に翻すような名誉とはわけが違う。

 そのようなことを皇室に生まれ育った眞子内親王が理解せず、またこうした国民の声を聞こうとしないのなら、皇室の将来はますます危うい。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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