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「打てる投手」になった大谷翔平が規定投球回数到達でMVPとサイヤング賞をダブル受賞できる?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今やサイヤング賞も狙えるような投球を披露し続ける大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【WARでMLBトップに立った大谷翔平選手】

 依然として不振が続くエンジェルスにあって、まさに孤軍奮闘の活躍を続ける大谷翔平選手だが、ここに来てMVPレースで先頭に立ち始めた。

 現在のMLBで選手評価に関する最大の指標とされる「WAR(Win Above Replacement)」を統計化しているファングラフス(Fan Graphs)によれば、7月14日時点で大谷選手が4.8まで上昇し、MLBのトップに立っている。

 昨年満票でMVPを受賞した際も、MLBで唯一8を超え(8.1)トップに立っており、注目される2年連続MVP受賞の可能性が着実に高まりつつある。

【昨年の「投げられる打者」から「打てる投手」へ変貌】

 ただ昨年同様に投打にわたり活躍を見せている大谷選手だが、同じ二刀流でも今年の中身は昨年とまったく異なってい簡単にいってしまえば、昨年の大谷選手は「投げられる打者」だったが、今年は真逆で「打てる投手」の傾向が強くなっているのだ。

 それは前述のWARをチェックしても明らかだ。

 大谷選手のWARは、投手としてのWARと打者としてのWARを合計したものなのだが、昨年の大谷選手は打者のWARが5.1で、投手のWARが3.0となっており、活躍度という点では明らかに打者の方が高かった。

 ところが今年に関しては、打者のWARが1.8に止まっている一方で、投手のWARはすでに3.0に到達しているのだ。ちなみにWARは活躍すればするほど数値が上がっていくので、投手のWARが昨年を上回るのはほぼ確実な状況だ。

【今やエンジェルスの絶対的エースに】

 今更説明するまでもないと思うが、投手として大谷選手が披露し続けているここ最近の安定感はMLBの中でも群を抜いている。

 ジョー・マドン監督が解任されて以降、大谷選手は6試合に登板し、6勝0敗、防御率0.45、58奪三振と圧倒的な成績を残している。この間31.2イニング連続無自責点と球団記録を塗り替えることにも成功している。

 しかも6月9日のレッドソックス戦で、大谷選手が投打にわたる活躍でチームワーストの14連敗をストップさせてからも、大谷選手の6勝を除いたチーム成績は6勝20敗という低迷ぶりで、最早大谷選手はエンジェルス内で絶対的エースの地位を確立したといっていい。

【ここ最近はサイヤング賞受賞投手と同等の安定感】

 ただ今年の大谷選手はエンジェルス内だけに止まらず、MLB全体でも絶対的なエース的存在になり始めている。

 エンジェルス広報が発表したところによると、前述のように6試合のスパンで6試合すべてに勝利し、58個以上の三振を奪い、さらに自責点が2点以下だったのは、大谷選手がMLB史上4人目だということだ。

 残りの3人は、2004年のヨハン・サンタナ投手、2012年のRA・ディッキー投手、2014年のクレイトン・カーショー投手なのだが、この3投手はいずれも同年のサイヤング賞を受賞しているのだ。

【規定投球回数到達でMVPとサイヤング賞のダブル受賞が視野に】

 また大谷選手は7月13日のアストロズ戦で今シーズン9勝目を挙げており、現在ア・リーグの最多勝争いでトップに立つジャスティン・バーランダー投手に2差に迫っている。

 大谷選手の場合、基本的に6人の先発ローテーションで回っており、他チームの主力先発投手より登板試合数が少なくなる中で、ハーラーダービー争いに加わるのは簡単なことではない、これだけでも驚異といわざるを得ない。

 登板数が少なくなってしまう大谷選手が、今年も規定投球回数に到達するのは簡単なことではないし、投手のタイトル争いに加わるのも至難の業だ。

 ただシーズン後半戦に70試合を残している中で、もし大谷選手が主力投手としてローテーション通りに回っていけば、最多で11試合に登板できる計算になる。この11試合で75イニングに達すれば、規定投球回数に達することができるのだ。現在の大谷選手の投球内容なら十分に狙えるところだ。

 現在は規定投球回数に達していないものの、防御率(2.38)はア・リーグ5位につけている他、勝利数(9勝)3位タイ、奪三振数(123)4位タイと、主要部門すべてでリーグ上位につけている。

 現在の投球内容をシーズン後半戦でも継続し、しかも規定投球回数に達したとするならば、間違いなくサイヤング賞の有力候補に加わっていくはずだ。

 MVPとサイヤング賞のダブル受賞が本当に実現するようなことになれば、大谷選手はさらに伝説として語り継がれることになるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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