「E」と「A」の誤記で話題のビールが「転売ヤー」の餌食に 法規制は?
「LAGER」タイプのビールを「LAGAR」と誤記した「サッポロ開拓使麦酒仕立て」の販売が紆余曲折を経てファミリーマート限定で始まった。話題性が高く、早くもオークションサイトで高額転売されている。
酒税法で規制
しかし、酒税法は、アルコール分1度以上の飲料を「酒類」と定義した上で、酒税を確実に確保するとともに未成年者などの手に渡らないようにするため、様々な規制を行っている。
製造のみならず、販売業を行う場合も、販売場ごとに管轄する税務署長から販売業免許を受けなければならない。違反に対する最高刑は懲役1年、罰金だと50万円以下だ。ネットオークションを舞台にする場合であっても同様だ。
問題は「販売業」とは何を意味するのかという点だ。酒税法にはその定義に関する規定がない。そのため、国税庁も、通達やQ&Aで次のような解釈や例を示すにとどまっている。
「『酒類の販売業』とは、酒類を継続的に販売することをいい、営利を目的とするかどうか又は特定若しくは不特定の者に販売するかどうかは問わない」
「継続して酒類を出品し販売を行う場合には酒類の販売業に該当し、販売業免許が必要」
「ご自身の飲用目的で購入した又は他者から受贈されたなどの酒類のうち、家庭で不要になった酒類をインターネットオークションに出品するような通常継続的な酒類の販売に該当しない場合には、販売業免許は必要ありません」
「業として」か否かがポイント
そこで、実際に転売が事件化されるか否かに際しては、「業として」といった規定が置かれている他の法令の解釈が参考にされるだろう。
これは「反復継続の意思をもって」という意味だ。その判断はあくまでケースバイケースであり、転売品を入手した数や転売した数、転売価格、転売に及んだ回数や頻度などを総合的に考慮して判断される。
例えば、約2か月のうちに2回ほど無許可で医薬品の製造をしただけでも「業として」に当たるとされ、薬事法違反で有罪になった事件や、同様に約1年1か月のうちに4回ほど投資資金を預かっただけでも「業として」に当たるとされ、出資法違反で有罪になった事件もある。
必ずしも短期間に数十回、数百回と反復継続している必要はない。長いスパンでわずか数回の転売を行っただけでも、「業として」と評価されることもあり得る。
国税庁に通報を
もっとも、「転売ヤー」が複数のアカウントを使い分けている可能性もあり、オークションサイトの出品者情報などを見ただけでは、希少な酒類の転売が「業として」行われているのか否かはまでは断定できない。
調査が必要となるので、もしオークションサイトで転売を見かけたら、国税庁に通報しておくとよいだろう。
それにより、「転売ヤー」が転売で得た利益を申告せず、脱税するといった事案が発掘される可能性もある。(了)