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明治大学ラグビー部、慶應義塾大学戦の負けから何を学んだか。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
今季はポジションごとに設置されたリーダー陣がチーム力を底上げ。

 鬼門を乗り越えられなかった。

 昨季、19シーズンぶりに大学選手権決勝へ進んだ明治大学ラグビー部は11月4日、東京・秩父宮ラグビー場で加盟する関東大学対抗戦Aの慶應義塾大学戦を24―28で落とした。

 今季は大学選手権9連覇中の帝京大学に春季大会、夏合宿の練習試合で連勝するなど好調を維持も、前年度も落としていたこの一戦でミスを連発。向こうの防御のプレッシャーを受け続けた。昨季ヘッドコーチに就任した田中澄憲新監督は、敗戦から数日後に「まだ絶対的な自信を持つには至っていなかった」と潔かった。

 試合直後の会見では、指揮官と福田健太キャプテンがいくつかの局面を振り返りながら「自分たちのやるべきプレーができなかった」と反省。11月18日には秩父宮で帝京大学との対抗戦第6戦目をおこなう。

 以下、共同会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

田中

「たくさんのファンの方の前でプレーできたことをありがたく思います。試合は慶応義塾大学さんが素晴らしい戦いをしたと思います。明治大学は自分たちのやるべきプレーができなかった。慶応義塾大学さんは自分たちのやるべきプレーを実行された。そこで最後に差が出たと思います。対抗戦残り2試合。この敗戦を受け止めて、順位が最後まで分からなくなるような戦いをしていかなきゃいけないと思います。本日はありがとうございました」

福田

「見ての通り、明治大学としては悔しい負け方をしました。チームとして準備してきたことを80分間、慶応義塾大学さんを相手にできなかったことが敗因だと思います。我が目指しているのは1月12日に大学チャンピオンになること。ここは過程に過ぎないです。きょう、最後に得点をされたところには、チームの隙、甘さが少なからずあったと、ピッチ上にいて感じた。再来週、帝京大学さんと当たります。9連覇しているチームです。今後、このような隙を与えては、拮抗している対抗戦を勝ち抜いていくのは難しいと思います。勝って反省できるのが一番いいですけど、きょうは負けて学べることがあった。慶応義塾大学さんにいい薬をもらったとポジティブに考えて、精進していきたいと思います」

――スクラムがよかった半面、ミスが多かった。

福田

「チームとしてスクラムを強みにしていて、その点に関してはよかった。練習の成果が出ていると思います。チームとして痛かったミスは、タッチキックのミス、ゴール前で明治大学のチャンスだった時のノックオン。80分の試合では必ずターニングポイントがあるのですが、そのターニングポイントでミスがあったのが一番の敗因です」

――最後の逆転トライを奪われたシーンでは、自陣深い位置で相手ボールのスクラムを押し込みながらその脇を突破される形でした(後半36分)。

福田

「あそこのスクラムで最後に抜かれたのは(フランカーの石井)洋介ですけど、洋介のせいじゃないと僕は思います。チームとしてあの時間帯であの場所でスクラムを組む状況を作ってしまったのがよくなかったと思います。僕らがリードして中盤の陣地にいて、ノープレッシャーの簡単なところでノックオン(前半31分頃。その後のスクラムで反則を取られ、自陣深い位置に進まれた)。あそこが原因だと思います」

――対する慶応義塾大学は1週間前に帝京大学とゲームをしていて、強度の高い試合に慣れた状態で明治大学とぶつかりました。対する明治大学は、この日初めてタフなゲームに挑んだと言ってもいい状況です。

田中

「そこの難しさは毎年のことなので、それがどうこう(敗因)とはならないと思います。準備のところでは、コンタクト。慶應義塾大学さんはコリジョン(衝突)のところでファイトしてくるので、そこでの姿勢の高さなどについてはこの1週間、準備してきた。その部分ではできていたんじゃないかなと。ただ、福田が言うように、簡単なエラーが結局は勝敗を左右したと思います」

――では、ミスが増えた理由はどこにありますか。

福田

「自分が思うに、ファンの方も多い状況でのビッグゲームが今季初めてで、雰囲気にのまれてしまったところが少なからずあったと思います。今後はチームが持っている力を最大限出すために、主将として声掛けとか(を意識したい)。また、日頃の練習から緊張感を持ってやっていくことが大事だと思います」

田中

「日頃の練習での丁寧さを、僕らではなく学生同士が突き詰めていくのが非常に大事になると思います。あとは、試合の最初に簡単な選択肢を選んでいたのではないかと思います。慶応義塾大学さんのプレッシャーをうまくかわすようなオプションを使っていたので。強いプレーができていたら前に出られていたので、もっとそこにこだわってシンプルに戦えればなと思いました」

――受け身になっていたのか。

田中

「福田が言うように、ビッグゲームへの経験値のところもあったと思います。それはどんなチームにもありがちなことです。これを、今後に向けたいい経験にしなきゃいけない」

――11月18日に帝京大学と戦います。

福田

「きょうの負けでいい課題をいただき、2週間準備をする。帝京大学さんには春、夏に2連勝していて自信にはなりましたが、それを1回、忘れて、チャンピオンチームを相手にスタンダードを崩さないで緊張感を持ってやっていきたいです」

田中

「チャレンジするしかありません。1戦、1戦、いい準備をする。いい準備とは、学生とスタッフが一緒になって緊張感のある準備をすることです。そうして、次の試合に臨みたいです」

 明治大学にとっての今度の慶應義塾大学戦は、今秋初の高強度なゲームであり、今季初の1万人超の観衆(公式で15157人)を集めた興行だった。チームが右肩上がりで上昇するなか、期待に応えるというミッションの重さを再確認した格好か。王者との直接対決を前に、気を引き締める材料を得た。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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