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救出活動続くタイ洞窟 4割増の今年のモンスーン

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
洞窟の入口付近の看板には、7月~11月は許可証なしの立入りが禁止、と書かれてある(写真:ロイター/アフロ)

奇跡の発見から3日。タイ北部タムルアン洞窟に閉じ込められたサッカー少年とコーチの13人が、奇跡の生還を果たすことができるのか、世界中が固唾をのんで見守っています。

生存の要因

少年たちは先月23日から行方不明になっていました。その間スナックをみんなで分け合ったり、洞窟内の水を飲んでいたりして、わずかながらの栄養を取り、さらに無駄な動きをしないようにするなど、体力を温存していたと伝えられています。

彼らが生存できた他の要因は、洞窟内の気温も関係していました。日本の洞窟といえば夏でも肌寒いイメージですが、このタムルアン洞窟内の気温は20~25℃はあり、比較的体温が奪われずにすんだともいわれています。いっぱんに洞窟内の気温は、その土地の年間平均気温に近いことが知られています。

これまでの雨の状況

×は洞窟付近(タイ気象局の画像に筆者加筆)
×は洞窟付近(タイ気象局の画像に筆者加筆)
タイ気象局のデータをもとに筆者作成
タイ気象局のデータをもとに筆者作成

今年のタイのモンスーン(雨季)は5月26日に始まりました。モンスーンの時期は、非常に激しいスコールが突然降りだします。

タイ気象局のデータによると、洞窟に近いチャンライにおける今年6月の降水量はおよそ250ミリで、平年よりも約4割も多く雨が降っていました。つまり少年たちが閉じ込められた23日以前に、すでに洞窟内には例年より多くの水があったと考えられます。

今後の雨の予想

では今後の雨の予想はどうでしょうか。

タイ気象局の画像に筆者加筆
タイ気象局の画像に筆者加筆

2日(月)〜4日(水)にかけては洞窟周辺で雨が降らず、排水の効果で水位がやや下がったとも伝えられています。

しかしタイ気象局の予報によると、今後少なくとも一週間は雷雨の可能性があり、特に6日(金)~10日(火)にかけては北部で局所的に大雨の予想が出ています。

例年、タイ北部のモンスーンは10月中旬まで続きます。特に7、8月は一年を通じ最も雨が多く、チャンライではひと月で300ミリ超の雨が降ります。

今後、洞窟内の水かさ・水流ともに増すことは必然的で、生徒たちに潜水の知識を身につけさせ脱出させるのか、洞窟の上から掘削するのか、はたまたモンスーンが終わるまで待機をさせるのかなど、救出方法において様々な方法が議論されています。

(↑救出方法のイラスト)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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