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"兄弟"で世界を目指すスーパーライト級サウスポー

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Esther Lin/SHOWTIME

 スーパーライト級のサウスポー、ミッケル・スペンサーがプロ3度目のリングに上がり、初回KO勝ちを飾った。

 彼は16戦全勝10KOの兄、ジョーイ・スペンサーを追いかけている。下の写真は試合後のチームの面々。Tシャツを着ているのがミッケル、その隣が父親。そして、父の向かって左隣が兄のジョーイ。

 「兄弟とはいえ似ていない」と感じるのも当然だ。弟のミッケルは、養子としてスペンサー家が面倒をみてきたからだ。

 兄は言う。

 「弟のミッケルは、ミシガン州フリントの貧困地区で、本当に荒れた生活をしていました。ミッケルの家庭環境は、控えめに言ってもかなり酷いものでした。私たち親子は、彼の兄弟をずっと助けていました。たぶん、ミッケルが4歳くらいから、僕たちはスパーリングを始めたんです。グローブをはめてリビングルームに行き、ソファを動かして、大きな試合で戦っているようにファイトしたものです」

Esther Lin/SHOWTIME
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 現在は、スパーリングというものの、彼らはしょっちゅう家の中で殴り合いをした。兄弟喧嘩と呼べるものだったかもしれない。いずれにせよ、アマチュアボクシング歴のあったスペンサーの父は、実子であるジョーイと、養子として迎えたミッケルにボクシングを教えた。

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 6歳からジムに通ったジョーイは、後に9度全米王者となる。

 「2016年のオリンピックを目指していましたが、出場を果たせず、プロに転向しました」

 以来、連勝街道を走っている。

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 その兄の姿に感化され、弟もプロボクサーの道を歩み始めた。身近にいた優秀なスパーリングパートナーのお陰で、伸びるのが早かった。

 血のつながりの無い兄弟は、現在もライバルであるようだ。彼らはどこまで上れるだろうか。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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