その体温、正確ですか?
発熱の患者さんがとても増えてきています。
体温が高いからといって、必ずしも重症というわけではありませんけれども、体温の変化をより記録しておくことは病状をつかむためにも重要です。
ですので、体温を正確に測る知識も大事となってきます。
そこで今回は、体温の測り方に関して簡単に解説してみたいと思います。
水銀を用いた体温計は、廃止の方向にある
以前は、水銀を利用した体温計がよく使われていましたよね。
水銀が温まると膨張する力を用いて体温を測定するという方法です。しかし、世界保健機関(WHO)は2020年までに医療機関での水銀を利用した体温計の使用を段階的に廃止するという指針をまとめました[1]。
そのため、医療機関ではほぼ使用されなくなっています。
電子体温計にもいくつか種類がある
そこで、現在よく使われているのは電子体温計、耳式体温計、そして非接触式体温計になります。
そのうち非接触式体温計は、コロナ禍でさまざまな場面で使用されるようになっていますが、皮膚の温度を測定するわけですから外気温の影響を受けやすいという問題があります[2]。
そこで、医療現場で最もよく使われるのが、電子体温計です。そして電子体温計には、実測式と予測式の体温計があります。
実測式電子体温計と予測式電子体温計
実測式電子体温計は、測定し始めて体温の測定値の上がり方が緩やかになったときにアラームがなるようにできています。問題としては、測定時間が10分以上かかり、長いことですね[3]。
ですので、ほとんどの場合、予測式電子体温計が使用されることになります。毎回、長い時間がかかってはなかなか大変ですからね。
予測式電子体温計は、体温を測り始めた後の上がり具合を見て、その先どれぐらいまで上がるかを予測しアラームを鳴らします。そのため、短時間で測ることができるわけです。
実は、予測式の電子体温計も最初のアラームが鳴った後、しばらく測り続けると、実測式の体温計に変わる機能を持つ機種もあります。実測式はより正確に体温を測ることができることが知られていますので、覚えておいて良いかもしれません。
電子体温計による測定方法
さて、正確に体温を測るにはどうすれば良いでしょう。
まず、わきの下で測る場合、汗をかいていると値が低めに出ることがありますので、わきの下の汗をよく拭いてから測ると良いでしょう。
そして、電子体温計のその先のそのセンサーの部分を、わきの下で一番くぼんでいる箇所にしっかりとセンサーを接触させます。良い場所から外れてしまって、体温をもう一度測り直す場合は、体温計の先のセンサーを冷ましておかないと予測がはずれてしまうことがありますので注意が必要です。
耳式体温計は?
耳式体温計とは、鼓膜に赤外線センサーをあてて体温を測る方式です。体のより奥の体温を測ることができるという利点があるのですが、わきの下よりも少し高い体温が出ますし、耳垢が溜まっていたりすると鼓膜にセンサーの赤外線をあてることができない場合があります[3]。
ですので小児科医の私としては、耳式体温計よりも一般的な予測式の電子体温計の方が使いやすいなと思っています。
体温をグラフにして記録する熱型表は重要
発熱が心配な場合、例えば風邪が良くなってきているかどうか心配、そういった場合には『熱型表』をつけておくことが大事です。
熱型表とは、熱の経過を朝と夜など定期的に測って記録をとり、グラフにしたものです[4]。コアラ小児科の藤本先生のツイートがわかりやすいですので転載させていただきます(転載の許可をいただいています)。
熱型表を医師に示していただければ、病状の参考にすることができます。
現在のように患者さんがとても多くなり混み合っている時期は、熱型表だけでなく、病状のメモを持参していただいたりすると情報をスムーズに共有でき、大きな助けになります。
今回は、体温の測り方に関し簡単に解説してみました。この記事がなにかのお役に立つことを願っています。
参考文献
2022年12月18日アクセス
[2]American journal of infection control. 2021;49(11):1445-1447.
[3]チャイルド ヘルス. 2008;11(12):847-849.
2022年12月18日アクセス