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北朝鮮の金正恩総書記が戦略ミサイル基地を視察、火星18と火星12ナを確認

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・労働新聞(2024年10月23日)より「戦略ミサイル基地の視察」

 10月23日、北朝鮮は「金正恩総書記が戦略ミサイル基地を視察された」と公式発表しました。同時に公開された写真では基地の写真や弾道ミサイルが写っていましたが、2枚あるミサイルの写真から種類は「火星18」と「火星12ナ」だと推定されます。(※発表文にはミサイルの詳しい説明は未掲載)

火星18:固体燃料大陸間弾道ミサイル

北朝鮮・労働新聞(2024年10月23日)より「戦略ミサイル基地の視察」
北朝鮮・労働新聞(2024年10月23日)より「戦略ミサイル基地の視察」

 10月23日発表の「戦略ミサイル基地の視察」で映っているこのミサイルは、固体燃料大陸間弾道ミサイルの火星18で間違いありません。正式名称は火星砲-18です。

 ミサイルを収納するキャニスターの先端の下部に火星18の特徴である油圧駆動式の蓋の開閉を行う部品が見えます。2023年12月18日の3回目の発射実験から改良装着したこの装備は、量産型にも採用されています。

関連記事:北朝鮮のICBM「火星18」の蓋が切り離し式から油圧駆動の開閉式に改良される(2023年12月19日)

火星12ナ:液体燃料極超音速滑空ミサイル(推定)

北朝鮮・労働新聞(2024年10月23日)より「戦略ミサイル基地の視察」
北朝鮮・労働新聞(2024年10月23日)より「戦略ミサイル基地の視察」

※ミサイルは発射車両に載せておらず、基地の床の上に置いています。おそらく低い台がある筈ですが、このアングルの写真からは見えません。

 10月23日発表の「戦略ミサイル基地の視察」で映っているもう片方の種類のミサイルは、極超音速兵器の火星12ナだと推定されます。同じ設計の滑空弾頭を持つ固体燃料式の火星16ナもあるのですが、写真のミサイルは弾頭も胴体も迷彩塗装を施されており、キャニスターを持たずミサイルを剥き出しで搭載する液体燃料式の火星12ナの方だと思われます。(固体燃料式の火星16ナはミサイルをキャニスターに収納しているので、ミサイルへの迷彩塗装は必要がない)

【関連記事】

 今回の10月23日発表の「戦略ミサイル基地の視察」で少し驚いたのは火星12ナです。固体燃料式の火星16ナこそが本命だと思われていましたが、液体燃料式の火星12ナが基地に実戦配備されています。

 またICBM(大陸間弾道ミサイル)の火星18と、IRBM(中距離弾道ミサイル)相当の射程の極超音速兵器である火星12ナが、射程が異なるにも関わらず同じ基地に配備されているというのもやや疑問です。固体燃料と液体燃料のミサイルが同じ基地に配備されているというのも整備や運用が少し面倒になりそうに思えます。

比較:北朝鮮の極超音速滑空弾頭

上:火星16ナ(比較用に左右反転)、中:火星12ナ、下:火星8。いずれも朝鮮中央通信より
上:火星16ナ(比較用に左右反転)、中:火星12ナ、下:火星8。いずれも朝鮮中央通信より

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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