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「手洗い」の基本と皮膚科医に聞く「手洗い」後のスキンケア

石田雅彦科学ジャーナリスト
(写真:アフロ)

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19、以下、新型コロナ感染症)の流行が収まらないが、基本的な感染防御対策は「手を洗う(手指衛生)」ことだ。だが、こまめに手を洗い過ぎ、肌荒れに悩んでいる人も多いだろう。どうすればいいのだろうか。

WHOの手指衛生ガイドライン

 新型コロナ感染症の予防に限らず、手を洗ったり清潔に保つなどして病原体を除去するのは一般的な感染防御対策の一つだ(※1)。手洗いを励行すると、呼吸器感染疾患のリスクを約16%減らすことができ(※2)、大腸菌などによる下痢性疾患のリスクを約半分にすることができる(※3)。

 医療従事者向けの規準は米国とヨーロッパで若干の違いがあり、日本は米国(CDC=疾病管理予防センター)のものを準拠している。ここではWHO(世界保健機関)が2009年に策定した「医療における手指衛生に関するWHOガイドライン」を使う。

 このガイドラインによれば、手指衛生の基本は流水、石けん、擦式アルコール製剤で手を洗うとされている。

 流水、石けんで手を洗う場合、水で手を濡らし、十分な量の石けんによって手を洗い、流水ですすぎ、タオル(単回使用)で完全に乾燥させる。この際、頻繁に温水を使うと皮膚炎のリスクが増加する。

 蛇口を閉める際は、タオルやティッシュペーパーなどを使って直接触れない。濡れたままにしておくのは推奨されていない。石けんは、液体、固体、粉末などがあり、石けんは乾燥させるための石けん入れを使う。

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石けんによる手の洗い方。40〜60秒(『Happy Birthday to You』や『Twinkle Twinkle Little Star』を2回、最後まで歌う時間が目安)。0:手を水で濡らす。1:十分な量の石けんを取る。2:手の平同士で手を擦る。3:指を組み合わせ、左右の手の平を逆の手の背に当てて洗う。4:指を組み合わせ、手の平同士を擦り合わせる。5:連結させた両手の指の後ろを反対の手の平に当てる。6:両手の親指を交互に回転させて擦る。7:指の先を逆の手の平の中で回転させながら擦る。8:流水で手をすすぐ。9:タオル(単回使用)で手を完全に乾燥させる。10:タオルなどを使い、蛇口を止める。11:清潔になった手。Via:WHO Guidlines on Hand Hygiene in Health Care, 2009

 擦式アルコール製剤を使う場合、手の平に適量を取って手全体に塗り、乾燥するまで擦る。ちなみに、WHOのガイドラインでは、皮膚への刺激が強くなる危険性があるため、石けんとアルコール製剤の併用は避けるべきとしている(※4)。

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擦式アルコール製剤による手の洗い方。20〜30秒。1a、1b:お椀型にした手にアルコール製剤を取る。2:手の平同士を擦る。3:指を組み合わせ、手の平で逆の手の背を交互に擦る。4:指を組み合わせ、手の平同士を擦る。5:両手の指を連結させ、指の背で逆の手の平を擦る。6:親指を逆の手で握って回転させて交互に擦る。7:指の先で逆の手の平の内側を回転させながら擦る。8:完全に乾燥させる。Via:WHO Guidlines on Hand Hygiene in Health Care, 2009

気をつけたいスキンケア

 ところで、新型コロナ感染症の予防でも、手を洗って清潔に保つのが基本的な予防対策として推奨されている。だが、手を洗い過ぎると、肌が荒れてしまうという悩みを抱いている人も多い。

 肌の状態や石けんなどによる刺激の反応は人それぞれだが、皮膚科医はどうやってスキンケアをしているのだろうか。肌荒れに悩む多くの患者を長年、治療してきた皮膚科医の菅原由香子さんに聞いてみた。

──手洗いに使う石けんはどのようなものがいいのでしょうか。

菅原「使う洗剤によって手荒れは全く違います。一般の液体洗浄剤は、合成界面活性剤の影響で手の皮膚のバリア機能を壊しやすいのです。私の場合、固形の石けんで何度、洗っても手荒れは起きませんが、外出している時どうしても備え付けの液体洗浄剤を使わなくてはいけないことがあると、一度の使用でガサガサになってしまいます」

──そういう人は多いようですが、どうすればいいでしょうか。

菅原「手荒れが起きないように、自宅では液体洗浄剤ではなく固形の石けんを使うのはファーストチョイスですが、私は普段、自分用の液体石けんを持ち歩いています」

──それでも手荒れが起きてしまう人はどうすればいいでしょうか。

菅原「私のように、自分用の液体石けんを持ち歩くようなことは皆さんなかなかできないと思います。外出先で、どうしても液体洗浄剤を使わざるを得なくなって手荒れが起きる場合、やはり何かで保護してあげるのは妥当だと思います。ただ、ハンドクリームの添加物でさらに手荒れが悪くなる方がいらっしゃるので、私のお勧めは純度の高いワセリンを使うことです」

 今ほど手洗いや手指衛生の重要性が広く社会に知られている時代はない。手洗いをすれば、感染症にかかるリスクをかなり抑えることができる。手を清潔に保ち、スキンケアを欠かさず、外出から帰ったらまず手洗いとうがいという基本を続けていきたいものだ。

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菅原由香子(すがわら・ゆかこ)

1970年、北海道旭川市生まれ。弘前大学医学部を卒業後、札幌医科大学皮膚科、大手美容外科美容皮膚科部門勤務を経て、岩手県一関市に「菜の花皮膚科クリニック」を夫とともに開業。自身、大学時代から20年以上肌荒れに悩み、肌荒れの原因は化粧品の使い方や化粧品に含まれる添加物や、化粧品の使い方にあることを突き止める。その後、肌荒れに悩む患者に長年、寄り添ってきた。

※1:G Reybrouck, "Handwashing and hand disinfection." Journal of Hospital Infection, Vol.8, Issue1, 5-23, 1986

※2:Tamer Rabie, Valerie Curtis, "Handwashing and risk of respiratory infections: a quantitative systematic review." Tropical Medicine and International Health, Vol.11, No.3, 258-267, 2006

※3:Val Curtis, Sandy Cairncross, "Effect of washing hands with soap on diarrhoea risk in the community: a systematic review." THE LANCET Infectious Diseases, Vol.3, Issue5, 275-281, 2003

※4-1:G Kampf, H Loffler, "Dermatological aspects of a successful introduction and continuation of alcohol-based hand rubs for hygienic hand disinfection." Journal of Hospital Infection, Vol.55, Issue1, 1-7, 2003

※4-2:G Kampf, H Loffler, "Prevention of Irritant Contact Dermatitis among Health Care Workers by Using Evidence-Based Hand Hygiene Practices: A Review." Industrial Health, Vol.45, 645-652, 2007

科学ジャーナリスト

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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