錦織圭、全仏テニス初のベスト4ならず。グランドスラムでの勝利への執念、初制覇への精神面の成熟も課題に
テニス4大メジャーであるグランドスラムの第2戦・ローランギャロス(全仏テニス)の準々決勝で、第8シードの錦織圭(ATPランキング9位、5月29日付け、以下同)は、昨年の全仏準優勝者で第1シードのアンディ・マリー(1位、イギリス)に、6-2、1-6、6-7(0)、1-6で敗れ、自身初のベスト4入りはならなかった。
「3回戦と4回戦で体が一番きつかった」という錦織だったが、4回戦から1日おいて臨んだ準々決勝ではフィジカルコンディションが回復して、「今日は、意外とだいぶ良くなってきていた」と、大きなトラブルなく戦うことができた。
体に不安がなくなった錦織は、第1セットで攻撃的なテニスを披露した。
錦織のサーブからマリーのリターンが浅くなって、甘いボールになった時は見逃さずに、錦織が攻撃的なグランドストロークを打った。いわゆる“3球目アタック”だが、錦織の攻撃の起点になった。さらに、錦織から先に左右へ打ち分けて、マリーを走らせてミスを誘った。
「すごく落ち着いて、自分がしなきゃいけないことを的確にできた。これ以上ないようなプレーの内容で、結果がついてきた」と錦織が振り返ったように、第1セットではミスを6本に抑えることができ、上々の形でセットを先取した。
だが、第2セット以降は、逆にマリーがミスを減らしてきた。さらにマリーのグランドストロークが深くなり始め、錦織の浅い返球を攻撃的に打ってきた。
特にマリーは、錦織のセカンドサーブに対しては、ベースラインの内側に入ってステップインしながらリターンを打って、錦織にプレッシャーをかけた。
マリーのプレーのレベルが上がったことに、錦織は耐え切れなくなっていった。
「少しあせり出した。最初の自分のゲームを落としてから、ちょっとずつリズムが変わり始めた。もうちょっと落ち着いてプレーできればよかったなという悔いは、特に第2セット目は残ってますね」(錦織)
セットオールになってからの第3セットでは、両者2回ずつサービスブレークをされてタイブレークに入ったが、この時点で錦織にメンタル面での余裕がなく、集中力に欠けた錦織は、一気に0-3とされてネガティブになり、ダブルフォールトがあったり、ミスが相次いだりして、1ポイントもとれずに第3セットをマリーに献上してしまった。
「一番やっぱり悔いが残るのはタイブレークですね。第3セットをどうにかして取っていれば、また第4セットを自信もってプレーできたかもしれない。どっちかというと、自分に原因があったかもしれない」
試合が終わってみれば、錦織はミスを第2セットで13本、第3セットで15本、第4セットで11本、合計45本まで増えた。一方、マリーのミスは最終的に26本に抑えられた。
錦織が残したローランギャロスでのベスト8という結果は、決して悪い成績ではない。
だが、錦織自身がグランスラムの初優勝を一番の目標に掲げている以上、手ばなしで喜べない現実もある。
「もちろん負ければ、いつでも課題はあるので、まぁ毎度のことですけど……。ポジティブなことも今週はあったので、クレーシーズンでいい準備ができなくて、結果が出ていない中、またいいプレーが戻って来ていた。やっぱりチャンスがありながら負けるというのは、また違った悔しさがありますけど、ポジティブな面もあったので、まぁ、いい1週間(大会)だったと思います」
グランドスラムの優勝経験者であり、百戦錬磨のマリーに対して、錦織は、攻撃的なテニスとミスの少ないテニスを両立しなければならない。
「より安定することが必要ですし、(準々決勝の)第1セットでやったようなプレーを維持すべき」と錦織は課題を口にした。
そして、錦織の課題は、テニスだけではない。錦織よりテニスの実力が勝る、マリーのようなグランスラムの優勝経験者に打ち勝つ、強いメンタルもあらためて備えなければならない。錦織は、元来メンタルが強い選手ではあるが、テニスの“ビッグ4”といわれる、ロジャー・フェデラー(5位、スイス)、ラファエル・ナダル(4位、スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(2位、セルビア)、そして、マリーと比較すると、やはり正直見劣りする部分があるのは事実だ。彼らと比較して、勝負への執念やグランドスラムでの勝負の執着が錦織には足らない。
27歳の錦織は、初の4大メジャー制覇をするには、選手としての経験を重ねながら、精神面もさらに成熟させなければ、悲願成就は難しいだろう。
今年残るグランドスラムは、ウインブルドン(7月上旬)とUSオープンテニス(8月下旬)となり、そこで錦織が、上位選手に対するテニスをどう改善させ、どんな覚悟で臨むのか……。
錦織が、世界のトッププレーヤーであり続ける実力はまだまだあるが、グランドスラム初優勝を狙うという意味において、錦織に残された時間は決して多くはないのだ。