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中盤を牛耳るゲイェ。20歳のオランダ人DFと「誤爆」された、現代版マケレレ。

森田泰史スポーツライター
競り合うアザールとゲイェ(写真:ロイター/アフロ)

豪華攻撃陣を欠くパリ・サンジェルマンを、救う活躍を見せている。

パリSGはネイマール、キリアン・ムバッペ、エディンソン・カバーニ不在で、チャンピオンズリーグ・グループステージ第1節レアル・マドリー戦(3-0)に臨んだ。第2節ガラタサライ戦(1-0)では、ネイマールとカバーニが欠場した。そのパリSGで輝いたのがイドリッサ・ガマ・ゲイェだ。

■中盤を牛耳る

「我々は中盤の攻防で敗れた」とは、レアル・マドリーを率いるジネディーヌ・ジダン監督のパリSGに敗れた後の弁だ。現役時代、クラッシックな司令塔として活躍したフランス人指揮官の言葉には重みがあった。

その中盤を牛耳ったのが、ゲイェである。パス成功率(93%)、ボール奪取数(6回)、インターセプト数(5本)、走行距離(8.8Km)と攻守において存在感を示した。

パリSGは、2017年にブレーズ・マテュイディがユヴェントスに移籍。2018年には、チアゴ・モッタが現役引退を表明した。中盤の再構成を強いられ、近年ヨアン・カバイェ、グジェゴシュ・クリホヴィアク、ラサナ・ディアラ、レアンドロ・パレーデス、ジョバンニ・ロ・セルソといった選手が加入した。だが、彼らにマテュイディとモッタの穴を埋めることはできなかった。

ムバッペ、カバーニ、ネイマールの「MCN」が注目を集める一方で、パリSGは中盤に問題を抱えていた。センターバックを本職とするマルキーニョスをボランチに押し上げ、アンヘル・ディ・マリアをセントラルハーフ化したとしても、完全なる課題克服には至らなかった。そして、トーマス・トゥヘル監督が選んだのが、ゲイェだった。

トゥヘル監督は2018-19シーズン、冬の移籍市場におけるゲイェの加入を望んでいた。だがエンリケ・アンテロ前スポーツディレクターの了承が得られず、獲得は保留された。2019-20シーズン開幕前、補強方針をめぐり指揮官と対立していたアンテロがクラブを去り、レオナルドがスポーツディレクター職に就いた。すると、今夏エヴァートンに移籍金3000万ユーロが支払われ、ゲイェの移籍が成立している。

■20歳のオランダ人DF

この夏、耳目を集めていたのがネイマールの移籍騒動である。喧騒の中に身を置いていたパリSGが、ゲイェの獲得を発表したのは7月30日だ。その際、パリSGは「20歳のオランダ人DF」の加入を伝えていた。しかし、これは完全な「誤爆」であった。実際に加入したのは、29歳のセネガル人MFだったからだ。

「誤爆」に気付いたクラブ側は、即座に発表を取り消して修正した。それは奇しくも、この夏に獲得が噂されたマタイス・デ・リフトのプロフィールと同じだった。

ゲイェに対する期待値は決して高くなかった。しかし見る人が見れば、分かる。ゲイェという選手の魅力はそこにある。

ゲイェは2015年夏にリールからアストン・ヴィラに移籍。その翌年、アストン・ヴィラからエヴァートンに移籍した。プレミアリーグでプレーした4年間で、タックル数(539回)、タックル成功数(392回)、ボール奪取数(1130回)という数字を残して守備力を見せ付けた。

特筆すべきは2016ー17シーズン、エンゴロ・カンテがプレミアリーグでまさしく「無双」と化していた頃である。タックル数でカンテ(157回)を上回る選手がいた。それがゲイェだったのだ。ゲイェは176回のタックル数でプレミアリーグ1位の数字を残した。インターセプト数においても、カンテ(127回)に次いでいたのはゲイェ(124回)だった。

「銀河系軍団」と称されたレアル・マドリーには、クロード・マケレレという汚れ役が存在した。そのマケレレは、奇しくも、2008年から2011年までパリ・サンジェルマンでプレーしてキャリアを終えている。

現代版マケレレ。新たなカンテ。メディアでは、ゲイェを称賛する言葉が踊っている。だがしかし、ゲイェはゲイェの歴史を、パリSGで築いていくはずだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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