ニューヨーカーが最も愛すビール、ブルックリンブルワリー東京旗艦店オープン【知られざる本店裏話】
東京旗艦店が2020年2月1日オープン
古い倉庫や工場跡地を利用したおしゃれなホテルやレストランが立ち並ぶ、NYカルチャーの発信地、ブルックリン・ウイリアムズバーグ。ここに1987年に創業して以来、ブルックリナイツ(地元の人々)に愛され続けてきたビールがある。
ニューヨーカーが最も愛す「ブルックリンラガー」(Brooklyn Lager)だ。
その醸造所、ブルックリンブルワリー(Brooklyn Brewery)の世界初となる旗艦店が「B」(ビー)という名で、2月1日東京・日本橋兜町にオープンする。場所は、大正12年に建設された築97年の歴史的建造ビル「K5」地下。再開発地区に店を構えるというのも、ブルックリンの雰囲気そのものだ。
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ブルックリンブルワリーの歴史
当時、ただの工場街だった殺風景な通りに誕生したブルックリンブルワリーは、昨今のトレンドになっている現代クラフトビールの先駆者的存在だ。80年代のアメリカ・ビール市場と言えば、バドワイザー、クアーズ、ミラーのビッグ3が独占していた。そこにほろ辛い香りが特徴のオールモルト(麦芽)ラガービールで、殴り込みをかけたのが、ブルックリンブルワリーだった。
創業者はAP通信の元ジャーナリスト、スティーブ・ヒンディ氏。アルコール規制のある中東地域で5年半の駐在を終え帰国後、自宅で趣味のビール作りをはじめたのが原点。その後近所に住むビール仲間と意気投合し会社を設立。96年に今のような、ブルワリー内のテイスティングルームを併設した。
その後、共同創業者の退職に伴い、長年の友人であるオッタウェー家に会社を売却。14年以降はオッタウェー家の息子2人が中心に事業を展開している。
「ただのビール会社」と呼ばれないワケ
ブルックリンブルワリーはただのビール会社ではない。地元アーティストによる絵画や音楽など、現代カルチャーをビールを飲みながら体験できる場、いわばニューヨークの最新文化発信基地だ。隣接の巨大テイスティングルームでは、地元ミュージシャンによるバンドの生演奏や芸術家による壁画なども観賞できる。
啓蒙活動にも力を入れている。定期開催している工場見学ツアーでは、ニューヨークの水などを使ってどのようにビールが作られるかを、わかりやすく解説してくれる。
ブルックリン本店のテイスティングルームでは昨年12月より、ブルックリン在住の日本人画家、中山誠弥(まさや)氏による壁画が披露されている。作品は「環境に優しく差別のない世界の実現に向けたブルワリーとの共有フィロソフィーを表現したもの」。
中山氏は壁画制作を通して、ブルックリンブルワリーについて感じたことがあると言う。
「制作中は1週間ここに通い、本社スタッフと触れ合う機会があったが、とても風通しがよく和気藹々とした雰囲気だった。スタッフが皆生き生きと働き、ファミリー感がある。差別のない自由な雰囲気を間近で感じ、ますますここのビールが好きになった」
また意外と知られていないが、地元で愛着のあるブルックリンブルワリーのロゴは「I(ハート)NY」や雑誌『ニューヨークマガジン』を手掛けた世界的著名デザイナー、ミルトン・グレイザーによる1987年の作品だ。せっかくロゴを作るならトップの人に依頼したいと、同ブルワリーが無名だったにもかかわらず、ヒンディ氏が何度もグレイザー氏のオフィスに電話をし、口説き落として作ってもらったもの。
それらの裏話を思い出しながら飲むと、その日のブルックリンラガーはいつもに増してさらに味わい深く感じられる。
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