Yahoo!ニュース

芸能3きょうだいの末っ子・土屋神葉、大ベテラン声優と役を取り合いながら奮闘中!

島田薫フリーアナウンサー/リポーター
活動の幅を広げたいと夢を語る土屋神葉さん

 現在声優を中心に活動している土屋神葉(しんば)さん。人気アニメの主演を務めるなど、注目度がアップしている若手声優・俳優です。アクションをはじめとする多くの特技を持ち、さらに仕事の幅を広げたいと活動する中、実話を基にした舞台『7本指のピアニスト』に出演することになりました。

—今は声優を中心に活動されているんですね。

 はい、最初はアクションが好きでこの世界に入りました。スーツアクターとして、ヒーローショーに出ていたんです。そのヒーローに声優さんが声を当てていて、声だけでここまで想像をかき立てられるのかと感銘を受けて、声優の仕事に惹かれていきました。

—声優も狭き門です。どうやって仕事ができるようになったんですか?

 まず、自分がスーツアクター時代に憧れた声優さんの事務所(劇団)に入りました。声優はすべてがオーディションなので、たくさん受けてアニメデビューすることができたのですが、これはご縁なので、本当に運が良かったんだと思います。

 親からは、大学時代に「3年で結果が出なかったら就職するように」と言われていまして、運良く(劇団に)入団して1年でアニメデビューできて、約束の期限の3年目に主人公のオーディションに受かったので、本当にギリギリでした。声のお芝居は、先輩方の背中を見て現場で勉強してきたことが大きいですね。

 先日、(主演した)アニメ映画『バクテン!!』の上映・舞台あいさつが行われました。これは、東日本大震災から10年が経ち、被災地へのエールとして作られたプロジェクトで、東北3部作の最後の作品なんです。

 上映・舞台あいさつは宮城・仙台市で行われたんですが、家族全員(父母・姉2人)が駆けつけてくれました(笑)。でも、僕が翌日のアフレコの仕事のためにすぐ東京に戻らなくてはいけなくて、結局家族全員、大急ぎで新幹線で帰ってきたんです。仙台を満喫はできなかったけど、特別な土地の温かさを感じることはできました。

 きょうだい全員が芸能系を選択した形になりましたが、本当に偶然。3人とも、初めから芸能の世界に行きたかったわけではなく、たまたま扉を開いたら、皆がそこに自分のアイデンティティを見いだしていたという感じなんです。

—神葉さんは特技がたくさんありますね。アクション、殺陣、乗馬、社交ダンス…。

 元々アクションから入っているということもありますが、特殊技能を持つところから新たに声優という特殊な世界に入って、幅が広がりました。

 アニメの世界は、僕にとっては役作りやキャラクターを固める時間が短いので、アフレコ期間中になるべく作品と関連することに触れておくようにしています。

 ジョッキーを描いた『群青のファンファーレ』(今年4月期放送)というアニメでは、馬に乗りに行きました。大学時代に馬術部だったので乗馬はやっていましたが、改めて馬に乗ることで、アニメの世界を感じられるようにしていたんです。

 また、『ボールルームへようこそ』(2017年放送)という社交ダンスのアニメでは、実際に社交ダンスも習いに行きました。

—アニメだから実際に踊れなくてもいいのでは?

 そうなんですけど(笑)、アニメの出演が2作目でしかも主人公だったので、全精力を傾けて演じないといけないという思いが強くて…半年間教室に通って、スタンダードは踊れるようになりました。主人公と同じくらいのレベルまで頑張りましたね。現場では、燕尾服を着てアフレコに臨んでいました。

 今の世の中の流れを見ていると、1つの世界でキャリアを積んでから次の世界に挑戦するという例が多いように思います。例えば、舞台を長くやってから声優へ、という人も多いですが、僕は声優・俳優、舞台も映像も同時にやっていきたいと考えています。実際にこの現場で分からなかったことが、別の現場で気づくことがあったりするんです。

 特に声優の仕事は、大ベテランの方々と役を取り合わないといけないので、多くの引き出しを持っていることが非常に大切です。いろいろな分野で吸収したことを自分なりの見せ方で打ち出していくためにも必要なことだと思っています。声優業と並行して、舞台・映像のお芝居をやっていきたいということが、僕の目標になりました。

—今回は舞台に挑戦ですね。『7本指のピアニスト』の話が来た時はどう思いましたか?(20代でジストニアを発症しながら7本の指が動かせるようになった、ピアニストの西川悟平さんの実話。ニューヨークのアパートに強盗に侵入されながらピアノを弾く…という内容)。

 最初に聞いた時は、ポエミーな題名だなと思いました。ところが台本を読み進めていくうちに、中盤あたりから「これは…」という感じに変わってきました。実は今年1月に、偶然西川さんが出演している番組を見ていたんです。なので「あの時に見ていた話だ!」と運命を感じて、「ぜひ、この作品に出たいです!」とお伝えしました。

 実際に演奏を聴きに行きましたが、本当に素晴らしくてお話もおもしろくて、ものすごいエネルギーを受け取りました。そのエネルギーがあふれている西川さんだからこそ成立した泥棒との物語は、何かに挑戦したいけどできない、壁にぶつかってへこたれそうだ…という人に対してのエールになると僕は思っています。

 今作は、フィクションならおとぎ話になってしまうかもしれないと思うくらい、奇跡と奇跡が重なり合ってできている話です。西川さんは泥棒から逃れられた、泥棒は西川さんと心を通わせることができた、特殊な事例です。「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、現実というものは、作られた話よりも奇妙であったり奇跡が起こったりするものだと、改めて考えさせられました。

 ただ、演じる側に立った時に、これは難しいな、とも思いました。これを実話として、皆の生活の延長線上として広げるには、どういう風にしたらいいんだろうと非常に悩みました。

ー役柄は泥棒ですね。役作りはどうされていますか?

 スラム街の歴史を勉強しています。参考になるような映画などを見ながら想像してはいるんですけど、自分に置き換えることが難しい役ですね。僕は普段ドラマチックな生活も送っていないし、ごく普通の人間です。僕がその立場だったら、泥棒たちが入ってきても話しかけらずに縮こまっちゃったと思います。今回は自分の想像力をいかに使って伝えられるかが勝負かなと思います。

 そして、主演の松本利夫さん(「EXILE」)のダンスが本当にめちゃくちゃかっこよくて、歩くモーション1つで目を奪われます!たった1歩で魅了できるマンガのようなことが目の前で起こる衝撃!松本さんはセリフをしゃべり続け、踊り、表現をストップすることなく2時間走り抜けるので、そのエネルギーが皆様に伝播すると思います。僕も“泥棒”頑張ります。

【インタビュー後記】

澄んだ瞳で一生懸命話してくれる姿に好感を持ちました。途中、「姉弟そろってなぜそんなに人柄が素晴らしいのか?」と聞いてしまいましたが、通常運転なのでよく分からない、との答え。見えないところでの努力、いい仕事をしたいという貪欲さは、この先大きな花を咲かせてくれそうです。多彩な才能を生かして、目標通り様々な分野で活躍されることを期待しています。

■土屋神葉(つちや・しんば)

1996年4月4日、東京都生まれ。2020年、第15回「声優アワード」新人男優賞受賞。主な出演作に、アニメ『ボールルームへようこそ』(主演)、『群青のファンファーレ』、『バクテン!!』(主演)など。現在ドラマ『オールモスト・ネバー夢みるバンド物語』、『陳情令』、アニメ『シュート!Goal to the Future』など、吹き替え作品も放送中。舞台『7本指のピアニスト~泥棒とのエピソード~』は7/24~31、東京・サンシャイン劇場にて上演。映画『ウルフハンターが行く!アメリカ南北戦争編』は8/19より公開。

フリーアナウンサー/リポーター

東京都出身。渋谷でエンタメに囲まれて育つ。大学卒業後、舞台芸術学院でミュージカルを学び、ジャズバレエ団、声優事務所の研究生などを経て情報番組のリポーターを始める。事件から芸能まで、走り続けて四半世紀以上。国内だけでなく、NYのブロードウェイや北朝鮮の芸能学校まで幅広く取材。TBS「モーニングEye」、テレビ朝日「スーパーモーニング」「ワイド!スクランブル」で専属リポーターを務めた後、現在はABC「newsおかえり」、中京テレビ「キャッチ!」などの番組で芸能情報を伝えている。

島田薫の最近の記事