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ワグネルが武装蜂起、ロシア軍の南部軍管区司令部を制圧

JSF軍事/生き物ライター
ロストフ・ナ・ドヌ市を制圧したワグネルのT-80BV戦車と歩兵(写真:ロイター/アフロ)

 6月24日、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が反乱を起こし、ウクライナ侵攻で展開中の部隊を隣接しているロシア領ロストフ州に進撃させ、ロストフ・ナ・ドヌ市にあるロシア軍の南部軍管区司令部を戦車と装甲車で包囲して制圧しました。

 最近になってワグネルとロシア軍の関係は急速に悪化しており、ロシア国防省からはワグネルの傭兵を正規軍に吸収しようとする動きが出ていました。これに対してワグネルのトップであるエフゲニー・プリゴジン氏が猛反発し、「ウクライナの激戦地バフムートでワグネルが味方であるはずのロシア軍からミサイル攻撃を受けた」と訴え(事実かどうか不明)、諸悪の根源はショイグ国防相とゲラシモフ総司令官など軍幹部だと糾弾(プーチン大統領は批判しない)、武装蜂起を宣言しました。

 そして本当にロストフの南部軍管区司令部を制圧してしまったのです。

ロストフ・ナ・ドヌ市を走行するワグネルの戦車 @Liveuamap

ロストフ・ナ・ドヌ市を制圧したワグネル @Liveuamap

本格的な交戦は発生せず、不可解な武装蜂起の推移

 しかしロシア軍はまともに抵抗した様子が無く、無血開城に近い形で南部軍管区司令部をワグネルに明け渡しています。この他に行政府の庁舎や警察署、FSB(情報機関)の庁舎、軍事基地、飛行場なども制圧されています。一体何が起きているのでしょうか?

 今のところワグネルの武装蜂起に正規軍や国家親衛軍が合流する動きは見られません。ですが正規軍がワグネルの武装蜂起に何も反撃しないというのも奇妙です。

 ワグネルは民間軍事会社としては異例の戦車などの重装備を保有していますが、それでもロシア正規軍が本気を出せばまともな勝負にはなりません。つまり本格交戦を避ける何らかの政治的な駆け引きがあり、それに失敗したら踏み潰される運命という、危険な綱渡りをしていることになります。

 またワグネルのプリゴジン氏の最終目標は、政権打倒が目的ではなく、ショイグ国防相らを失脚させてワグネルを存続させるのが目標なのでしょうか? ワグネルはロストフを通過して北上を開始し、既にヴォロネジまで到達している報告まであります。首都モスクワを目指しているのかもしれません。

 なおプーチン大統領以下ロシア政府はこのワグネルの武装蜂起という大事件に対して未だに声明を発表していません(2023年6月24日14時の時点)。これもまた不可解です。

※追記1:プーチン大統領が日本時間15時から演説すると伝えられていましたが、16時を少し回ったところで始まりました。「反逆罪」「全員処罰」といった強い表現でワグネルの反乱を徹底的に取り締まる旨を宣言しています。この演説が真意であるなら、プリゴジン氏は窮地に立たされることになります。

 未だ混乱の中で事態は現在進行形で推移していますが、このワグネルの奇妙な武装蜂起はロシア国内での盛大な内輪揉めであることは確かなので、ロシアの侵攻を受けているウクライナにとっては有利に働く可能性があります。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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