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王者撃破も妻が流産…ユヴェントスを沈めたアタランタ選手、帰宅後に届いた悲報

中村大晃カルチョ・ライター
1月30日、コッパ・イタリア準々決勝でC・ロナウドをマークするトロイ(写真:ロイター/アフロ)

国内で圧倒的な強さを誇る絶対王者に完勝したのだから、アタランタの選手たちが天にも昇る気持ちだったのは想像に難くない。だが、ラファエル・トロイはいま、計り知れない悲しみを抱えている。試合から一夜明け、キックオフの前から嫌な予感を覚えつつ大一番に臨んだと明かした。

◆プロヴィンチャが絶対王者に快勝

1月30日のコッパ・イタリア準々決勝で、アタランタは王者ユヴェントスを3-0と下した。ティモシー・カスターニュのゴールで先制すると、2分後にドゥバン・サパタが追加点。終盤にはサパタがドッピエッタ(2得点)を達成しての快勝だった。

近年は好成績を残し続けているアタランタが、いわゆるプロヴィンチャ(地方の中小チーム)であることは変わらない。その彼らが絶対王者を前半から苦しみ、勝利し、大会から追いやったのだ。どれだけの偉業かは、『スポーツ・メディアセット』が伝えた統計からも分かる。

・コッパでユーヴェが失点したのは2017年4月以来8試合ぶり

・公式戦でユーヴェが前半に2失点したのは2017年8月以来

・前半のユーヴェは枠内シュートゼロ、公式戦2試合連続は2018年3月以来

・アタランタはユーヴェとの公式戦ホームゲーム5試合のうち4試合で複数得点

・アタランタのユーヴェ戦勝利は2004年11月のコッパ・イタリア以来

・ユーヴェに3-0で勝利した直近2チームは、レアル・マドリー(2018年4月)とバルセロナ(2017年9月)

マッシミリアーノ・アッレグリ監督が就任してから、ユーヴェは4年連続で国内2冠を達成していた。クリスティアーノ・ロナウドを獲得した今季は、チャンピオンズリーグを含む3冠も期待されていたのだ。いや、すでにスーペルコッパを制していただけに、4冠も夢ではないと言われていた。アタランタは、そんなチームを倒したのだ。

◆帰宅後に待っていた悲しい知らせ

しかし、フル出場で快挙に貢献してから帰宅したトロイを待っていたのは、妻が第2子を流産したとの知らせだった。以下、拙訳ながら、トロイの言葉を紹介する。

昨日のことをみんなに伝えたい。

試合前はいつもスタジアムに行く前に妻と娘に連絡する。昨日は、連絡したときに何かおかしいと気づいた。僕は妻をよく知っている。何かあったと分かった。

妻は妊娠8~10週で、昨日は定期検査だった。初めて心臓の音を聞けるはずだったんだ!僕は検査の様子を送ってくれと頼んだ。彼女は何も送ってこない。携帯電話の充電が切れたという。

そのとき、何か良くないことがあったんだと思い始めた。でも、彼女は僕に何も言わなかった。僕が試合に100%集中することを望んだんだ。

良くない考えが渦巻く中で、僕には戦わなければならない大事な試合があった。自分に言い聞かせた。何か悪いことがあったのなら、少しでも喜びを持ち帰ることができるように、この試合に勝つべくチームメートたちを助けることが、僕にできる最低限だと。

僕らは世界有数のチームに3-0で勝利し、コッパ・イタリア準決勝に進んだ。チームメートやファンタスティックなサポーターと魔法のような夜を過ごした。でも、家に帰ったとき、とても恐れていた知らせを受け取った。僕たちは子どもを失ってしまったんだ。とてもつらく、悲しいことだ。

でも、僕は、何とかしてこのつらさをほんの少しでも和らげようと助けてくれたチームと仲間たち、そしてベルガモの人たちに感謝したい。

愛する妻には、ひとつだけ言っておきたい。君を愛している。フラビア・トロイ、僕は永遠に君と一緒にいる。

これが人生だ。僕たちはどんなときでも強くあらねばならない。神はこれから僕らに良いことも与えてくれる。僕はそう信じる。

出典:インスタグラムのトロイ公式ページより

想像を絶する悲しみの中で、それでも前を向く強さを見せたトロイの投稿には、支援のメッセージが多く寄せられている。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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