なぜ森保ジャパンはクロアチアに敗れたのか?防がれた“戦術三笘”とピッチ上で生じた誤算。
歴史を塗り替えるための、戦いだった。
森保ジャパンはカタール・ワールドカップで、グループステージを首位で通過した。決勝トーナメント1回戦では、東欧の雄クロアチアと激突することが決まった。
■ベスト8を目指した戦い
日本代表にとっては、史上初のW杯ベスト8進出が懸かる試合だった。
初めて挑んだ2002年の日韓W杯では、ベスト16でトルコに敗れた。以降、パラグアイ(2010年の南アフリカ大会)、ベルギー(2018年のロシア大会)といった代表チームが日本の前に立ちはだかった。
そして、今大会においては、クロアチアが日本の壁となった。
今大会のクロアチアは【4−3−3】を基本布陣としている。日本戦でも、その布陣で臨んできた。
一方、日本は4バックではなく5バックを選択。【5−4−1】でクロアチアを迎え撃った。
■森保ジャパンの誤算
試合はクロアチアがボールを保持する展開で進む。日本としては、グループステージのドイツ戦やスペイン戦と同様に、自陣に閉じ籠りカウンターを狙っていた。
だが、日本と森保一監督に二つの誤算が生じた。
ひとつ目はクロアチアがドイツやスペインほどには丁寧にボールを繋いでこなかったことだ。アバウトなロングフィードを、厭わずに入れてくる。日本のWBと左右CBの間が狙われる。また、サイド・アタックではゴール前に人数をかけて放り込んでくる。その辺りの対応に苦しめられた。
ふたつ目は、日本が先制したことである。前半43分、前田大然の得点でスコアを動かした。素晴らしい時間帯のゴールだったが、日本が先制点をマークしたのは今大会で初めてだった。
森保ジャパンは前半を「0−0」あるいは「0−1」で折り返すプランで今大会に向けて準備していた。「1−0」のプランはなかったのだろう。これにより、日本の選手交代が難しくなる。逃げ切るのか、追加点を奪いに行くのか、そこの判断が求められる初めてのゲームになった。
後半に入り、戦い方を徹底したのはクロアチアの方だった。前半以上に、クロス攻勢を強める。また、前線にロングボールを送り、こぼれ球を拾いセカンド・アタックを仕掛けるというのを徹底してきた。そして、後半10分、クロアチアが同点に追いつく。右からのクロスに、イバン・ペリシッチがヘディングを叩く。このクロスを送ったのはCBのデヤン・ロブレンだった。
先述のように、日本の交代策は難しくなっていた。しかしながら同点に追いつかれ、指揮官の迷いが消える。後半19分、長友佑都に代わり三笘薫が投入された。
だが三笘はグループステージの時のような活躍を見せられなかった。クロアチアが、しっかりと研究して対策を練ってきたからだ。
クロアチアは三笘へのパスコースを遮断した。左CBの谷口彰悟からパスが出ないようにプレスを行い、限定した。良い形で三笘にボールが渡らず、入ってもウィング、インサイドハーフ、ボランチ、センターバックがサイドバックと連携してダブルチームで対応した。
攻撃で三笘の左サイドが思ったように機能せず、日本は苦労した。それでも、ドリブル突破からミドルシュートを放つなど、三笘は見せ場をつくった。しかしゴールは生まれず、個人の打開能力に頼った日本は得点を奪うというフェーズにおいて後手を踏んだ。
■クロアチアのゲームプラン
日本はズルズルとクロアチアのゲームプランに引き込まれていった。それはまるで、日本がグループステージでドイツやスペインを自分たちのペースに引き込んだ時のようだった。
思えば、ロシアW杯で、決勝トーナメント1回戦(PK戦)、準々決勝のロシア戦(PK戦)、準決勝のイングランド戦(延長)と幾度となく延長戦を乗り越えて準優勝を果たしたのがクロアチアだった。
新しい景色をーー、見るためのカタールでのチャレンジは幕を閉じた。
ここから、また4年だ。再び積み上げの日々が、始まる。
※文中の図は全て筆者作成