スケボーにもヘルメットを
堀米雄斗選手、東京オリンピック2020 スケートボード(ストリート)優勝おめでとうございます!!メダルラッシュでCOVID-19で暗くなった世の中に少し明るさが戻っているところですが、ちょっとだけ心配なことがあります。
「なんでヘルメットしてないの?」
(西矢椛選手、中山楓奈選手はヘルメットしていて、白井空良選手は帽子だったので、制限が無いのかもしれません)
駅前の公園などに行くと、しばしば若い人たちがスケートボードをしていて、時には素人の目からしても「すごいな」というような技をキメている人がいます。
そして、ストリートの文化だからか、駅前でプロテクターやヘルメットしている人は皆無です。(もしかしたら、人目のないところではしているのかも?)
堀米選手も、何度か骨折したということを語っているようですが、やっぱり他人の足を止めて見入らせる、あるいは感動させるような技を極めるには、多くの練習が必要であり、ケガは付きものなのかもしれません。
すでにTwitterでは多くの整形外科医が、メダリストに影響を受けてスケートボード絡みのケガ(骨折)が増えることを懸念しています。
それは、脳外科医も同じで、「アタマが割れて運ばれてくる患者が増えるんじゃないか」と心配です。
手足の骨折でも、折れ方によっては動かせる範囲が狭まったりする後遺症が残ることがありますが、頭のケガも、重症になれば後遺症に繋がります。
しかも、残念ながら骨折のようには治らなかったり、脳に傷が付くことでてんかん発作と付き合っていくということにもなりかねません。
スノーボードではヘルメットが当たり前に
同じようなことは、スノーボードでもありました。
最近は、ゲレンデに行っても多くのスノーボーダーがヘルメットをかぶっていますが、2000年頃は、滑りには気合いが入っていても、ヘルメットどころか、帽子さえかぶらずに滑っている人がたくさんいました。
ファッション性もあってスノーボード人口は増えていきましたが、その中で、数は少ないものの、エッジが引っかかって転倒し、頭蓋骨の中で出血を起こして意識不明、緊急手術が必要になるということが起こってきました。
もちろんその中には、残念ながら意識が戻らないという方もいたわけです。
受け身を取れずに転倒して、衝撃で脳の太い静脈が引きちぎれてしまうと考えられ、特に後頭部への衝撃を避けるように、どこのスノーボードスクールでもヘルメット着用が義務づけられるようになりました。
何よりメディアに登場するトップスノーボーダー達のほとんどが(ルールもあるのだと思いますが)ヘルメットを着用していることから、「ヘルメットが当たり前で、カッコいい」という文化ができあがったと言えます。
競技としての魅力を高めるためにも
今回の東京オリンピック2020 スケートボードでは、技術は一流のアスリートが技を競っていましたが、特に男子ストリートでは、その姿は本当にストリートからやってきたようなスタイルでした。
しかし、これだけ日本中の若いコ達を熱狂させる以上は、競技としての魅力をさらに高めるためにも、十分な安全策をトッププレーヤーから見せていくべきだと考えます。
ウィンタースポーツであるスノーボードでは、ヘルメットでムレたり、汗をかきやすくなるにしても、涼しいので着けていられるという有利な点があるでしょう。
これについては、自転車用ヘルメットのように通気性が良くて、かつ十分な衝撃吸収性があって、そしてカッコいいヘルメットの登場が待たれます。
また、ヘルメットをすることで「過剰に」安心して、自分の実力以上の技に挑戦してしまうというデメリットが、スノーボードでも指摘されています。
自分の能力の範囲で「コントロールする」ことが大事であることは、言うまでもありません。
しかし、頭の外傷、特にスピードが出ていたり、高いところからの転落は命取りになり得ます。しかもスノーボードと違い、落下先はコンクリートだったり、階段の角だったりするわけですから。
上達して、よりカッコいい技をキメるためにも、チャレンジし続けられるように、からだの安全を第一に考えてほしいのです。
参考文献;
Nakaguchi H, Tsutsumi K. Mechanisms of snowboarding-related severe head injury: shear strain induced by the opposite-edge phenomenon. J Neurosurg. 2002 Sep;97(3):542-8. doi: 10.3171/jns.2002.97.3.0542.
Snowboard Safety | Helmets - Canadian Ski Council
https://www.skicanada.org/safety/