首都直下地震で都内の断水率26.4%、水道復旧までの17日間をいかに過ごすか
施設の被害や停電が発生すれば断水期間はさらに長期化
東京都は5月25日、「首都直下地震等による東京の被害想定」の更新版を公表した。建物、人、交通インフラ、ライフライン、生活、経済などの項目別にまとめられているが、ここでは上下水道インフラの被害想定を紹介する。
まず、上水道の断水率は想定する4つの地震のうち、「都心南部直下地震」で最大となり平均26.4%(区部34.1%、多摩9.2%)。復旧するまでに約17日かかると想定されている。
私たちは1日に約250リットルの水道水を使用している。用途は、飲み水、食事の準備や後片付け、風呂やシャワー、洗濯、トイレの流し水など。17日間、蛇口から水が出ない影響は、想像できないほど大きい。
ただ、この結果はあくまで「水道管の物的被害率」から定量的に算出したもので、浄水場など施設の被害、停電の影響は含まれていない。
浄水施設が被害を受ければ断水は拡大し、復旧までの期間はさらに長期化する可能性もある。
また、住宅内に設置された受水槽や給水管などの設備が被害を受けた場合も、断水被害は拡大する。とくに高架水槽を設置するマンションなどでは、停電によってポンプで水を揚げられなくなる。
災害時給水ステーションなどで給水活動が行われるが、断水世帯数が多くなるため、水を得るまでに時間はかかるだろう。また、タワーマンションの上層階まで水を運ぶのはきつい。10リットルのポリタンク2つに水を入れたとしたら、20キロをもって階段を上がることになる。
水の備え「何もしない」が41.5%
ミツカン水の文化センターが「水にかかわる生活意識調査」(2021年版/東京圏、中京圏、大阪圏の1500人を対象)において、「災害時に対する水の備え」について調査したところ、以下のような結果がでた。
1位「市販のペットボトル入りの水を買い置きしておく」(43.5%)
2位「何もしない」(41.5%)
3位「風呂の水をいつも溜めておく」(15.9%)
4位「水を使わなくても済むような対策グッズを準備する(簡易トイレ、歯磨きシート、ドライシャンプー、ラップフィルム等)(13.2%)
5位「消火栓、防火水槽の場所を知っておく」(7.7%)
「何もしない」人が41.5%いたが、今回の報告を見ると「災害時に対する水の備え」は必要だ。
1人が1日に必要な飲み水は2リットル程度とされる。被災するとビスケットや乾パンなど乾燥した食べものが中心になり水分が不足しがちになる(普段は食べものに含まれる水分を1リットル程度吸収している)。
だから1日に3リットル程度の飲み水が必要だ。また、手や顔を洗うなど、衛生を保つための水が1日に10~15リットル必要。
支援活動が本格化するまでを3日と考え、飲用9リットル、衛生用30~45リットルを水道水のくみおき、風呂の残り湯などで備える。以下のような方法で、ポリタンクに水道水を貯めておくのもよい。
下水道管きょの被害率は最大4.3%、復旧までに21日
下水道管きょの被害率は、「多摩東部直下地震」で最大となり、平均4.3%(区部4.7%、多摩3.8%)、復旧までに約21日かかると想定されている。管路に甚大な損傷が生じた場合は、トイレの利用が制限される。また、管路に土砂や地下水が流入したり、マンホールの浮き上がりが発生したりすると下水の流下が止まる場合がある。
ただ、この結果も「管きょ」に限定して算出されたもので、水再生センターやポンプ場が損傷すると、下水道の利用が困難となる世帯がさらに増加する。
オフィスビルやマンションなどの集合住宅では、周辺の管路に被害がなくても、排水管等の破損によって、トイレが利用できなくなるケースもある。上層階の人が汚水を流すと階下で漏れる場合もある。
仮設トイレ、マンホールトイレなどが設置されるが、簡易トイレなどを用意しておく必要がある。東日本大震災の被災自治体では、下水道の仮復旧までに「平均34日、最大で4か月以上」(NPO法人日本トイレ研究所)かかった。トイレゴミは、原則「自宅保管」となり、戸建であれば庭に埋めることができるが、マンションの場合はベランダ保管になる。
凝固剤、消臭剤とポリ袋がセットになった簡易トイレを、1人1日5回×1週間分用意するのが理想とされる。市販の簡易トイレを用意するのが難しい場合は、新聞紙、猫砂、ポリ袋などの代用品を使う方法もある。