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山歩きが災害の備えに!? 新年から始めたい生存力を高める7つのポイント

加藤智二日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン
あの日から25年。寒空の屋外生活を余儀なくされた日 ※写真はすべて筆者が撮影

忘れた頃にやってくる災害への備え、大丈夫ですか?一人一人の生きる力を高めたいと思っても、その意識を維持し続けるのは難しいものです。山歩きを楽しく続けながら、知らず知らずのうちに防災力を身に付けるポイントをご紹介します。

頂に向って一歩一歩
頂に向って一歩一歩

1:熱さ・寒さ・雨風など、変化する環境に備えた装備を準備して屋外に飛び出してみましょう。

 暖冬とはいえ、快適な空調に馴れた身体にとって冷えた空気に肩をすぼめる時期です。山歩きは汗をかいて歩き、時に休憩をとる「ストップ&ゴー」を繰り返します。濡れた服は冷たくて不快なだけでなく身体を冷やしてしまいます。皮膚表面から汗を素早く吸い上げ、行動中に素早く乾かすことができるアウトドアウェアは山歩きには欠かすことができません。最近では抗菌防臭性を兼ね備えたモデルも増えたので、数日にわたって着たままでも、自分だけでなく周りの仲間にも不快さを与えにくくなっています。洗濯に不自由する避難所生活でも重宝する機能です。

 様々な時期・天候・標高の違う山歩きを通じて快適ではない環境を経験しておくことが重要です。身体の適応能力向上には実体験が必要です。

 ウェアのポイント  ⇒ 肌を乾いた状態にし保温性を向上させる登山用アンダーウェアと3枚程度の重ね着(レイヤリング)

 保温のポイント  ⇒ 防寒着は膨らみ(空気層)が重要です。合わせて防風に配慮します。頭部と頸部、手足首の保温は集中保温箇所です。

 体温低下を防ぐ! 

 

体温を守らなければ見ることができない絶景
体温を守らなければ見ることができない絶景

2:様々な路面状況の上り下りを安定して歩くためには、グリップ力が高く足の怪我を防ぐ登山靴を用意しましょう。

 長時間、屋外で過ごす山歩きで怪我をすることは、その後に大きなトラブルを招き、遭難に発展することになりかねません。ねん挫や外傷の予防、水の浸み込まない防水性はとても重要になります。

 災害時には快適な移動手段がないものと考える方がよいでしょう。自分の足が頼りです。ガレキやガラス破片が散乱する中を歩くことを安全にするなら登山靴が最適です。普段の山歩きで履き慣れておけば安心です。

サイズだけではなく、自分の足と靴の足型が合うものを見つけよう!
サイズだけではなく、自分の足と靴の足型が合うものを見つけよう!

 靴選びのポイント1  ⇒ 自分の足型に合った登山靴は実際に履いてみなければわかりません。靴に足が納まるかではなく、フィットするか(足が靴の中で動き回らないか)がとても重要です。

 靴選びのポイント2  ⇒ 地面の凸凹からの衝撃を緩和し、防水性・保温性、異物の侵入を防ぎ、足首を守る構造のタイプを選びます。

木々は冬籠り、落ち葉を踏んで
木々は冬籠り、落ち葉を踏んで

3:必要な装備・食料・水を詰めた荷物を背負って移動するためには、丈夫で背負いやすい登山用リュックサックを用意しましょう。

 泊りがけの登山では衣食住、つまり家財道具一式を背負って歩きます。最近の登山用具は軽量化とコンパクト化が進み、テント泊登山でも50リットル程度のリュックサックで十分なことが多くなりました。テント・寝袋・マットレスといった「住」に関わる部分、朝夕の食料とコンロ・燃料・コッヘルという「食」に関わる部分を背負わない「日帰り登山」であれば、30リットル程度で良いでしょう。衣類などは丁寧に畳み大き目のチャック付保存袋を活用するのも良いでしょう。圧縮し空気を抜いてパッキングすればコンパクトに運ぶことができます。

用途別に書き込んでおくと便利です。
用途別に書き込んでおくと便利です。

 災害時、自宅が壊れる或いは安全が見込めない場合、家族の命を守る装備は持ち出さなければなりません。そして、最も重く運ぶのが大変なのは「水」です。手に持って長距離を運ぶのは困難です。背負うのが一番楽です。

わが家の大黒柱ならどれを選ぶ?使いやすい40~50リットルなら夏のキャンプでも活躍するでしょう。
わが家の大黒柱ならどれを選ぶ?使いやすい40~50リットルなら夏のキャンプでも活躍するでしょう。

 

 選ぶポイント  ⇒ 体格に合った背面長のリュックサックを選ぶと良いです。

 背面長とは  ⇒ 容量が同じでも背中にあたる部分の長さがモデルで異なります。

自分の背中には大切なものが全て詰まっている!
自分の背中には大切なものが全て詰まっている!

 寝袋、どうしていますか? 

 寝袋は狭くたってプライベート空間! 

4:携帯コンロと鍋(コッヘル)を実際に使ってみましょう。

 温かい食事と安全な飲み物は喜びであり、生きている実感が湧く瞬間です。コッヘル内部にガスカートリッジとコンロを収納できる登山用モデルなら、日帰りの登山でもとても重宝します。

 災害時にはガス・電気供給が止まり、地域の安全が確認できるまで供給再開がされないのが普通です。水で戻すフリーズドライや温めずに食べることも可能なレトルト食品を用意することも大切です。

時間はかかるが水からも美味しく食べられる。
時間はかかるが水からも美味しく食べられる。
温めなくても美味しいと評判のレトルトカレーも。
温めなくても美味しいと評判のレトルトカレーも。

 使用上のポイント1: ⇒ 燃焼中は周りに可燃物が無いことと、五徳に載せたコッヘル(鍋)から手を離さないようにします。キャンプでの熱湯火傷は起きやすいトラブルです。

 使用上のポイント2: ⇒ 燃料節約のためには「湧いたら消す!」ようにしましょう。

 お湯作りと調理、火を確保! 

5:水の確保 一人一日2リットル必要といわれています。

 家族4人が3日分を想定すると一家族24リットルの備蓄が必要といわれています。自宅での備蓄をすすめる必要があります。

 飲料に相応しい「水」を一回に何リットル運ぶことが出来るでしょうか。給水ポイントから自宅へは6~10リットルといったところだと思います。

 小さ目のお風呂でも1000リットル以上は貯めることができるので、浄水器を活用することで生きるための水は確保できます。風呂の水=トイレ使用は何故ダメなのか? ⇒ 詰まります!詳しくは  ↓  

重力式の流下で浄水可能水量は380000リットル!!
重力式の流下で浄水可能水量は380000リットル!!

 命をつなぐ「水」を手に入れる! 

6:携帯トイレを使う体験をしておきましょう。  

 自宅外で用を済ますのは慣れが必要です。天災時、生活環境維持のためのトイレ環境の整備は重要事項です。水洗トイレは十分な水量が無ければシステムとして成り立ちません。自宅トイレから流し去っても、配管内で詰まればその後に起きる事態は悲惨なことになります。そこで必要なのが携帯トイレです。自宅で使うトレーニングをしておきましょう。

携帯トイレを使ってみた! ⇒ 

7:個人用のヘッドランプと空間を明るくするランタンを準備しておきます。

 登山では日帰りであってもヘッドランプは必ず持っていきます。暗闇の中での行動以外に、最近の明るいLEDランプの光は救助要請時に自分の位置を知らせることにも使えます。予備電池の用意も忘れないようにしましょう。

 電気供給が絶たれた自宅ではLEDランタンも重宝します。長期間の場合は太陽電池パネルとリチウムイオンバッテリーの組み合わせもあると良いでしょう。スマホなどの充電、写真・ビデオの記録に必要となります。

 安全を高める! ヘッドランプ 

最後までお付き合いいただきありがとうございます。

2020年1月17日は阪神淡路大震災から25年、四半世紀となります。

防災持ち出しセットを準備に加えて、ストック食品のローテーション管理を兼ねた登山やキャンプを計画してみてはいかがでしょうか。

日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン

ネパール・パキスタン・中国の8000m級ヒマラヤ登山を経験。40年間の登山活動で得た登山技術、自然環境知識を基に山岳ガイドとして活動中。ガイド協会発行「講座登山基礎」、幻冬舎「日本百低山 日本山岳ガイド編」の共同執筆。阪急交通社「たびコト塾(山と自然を学ぶ)」、野村證券「誰でもできる健康山歩き」セミナー講師。山岳・山歩きに関するテレビ番組への出演・取材協力。頂上を目指さない脳活ハイキングの実践。登山防災協議会会員、一般社団法人日本山岳レスキュー協会社員、公益社団法人日本山岳ガイド協会安全対策委員会委員長、山岳ガイドステージⅡ。

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