レノボによるIBM低価格サーバー事業買収が合意、ただし、米政府による厳しい審査も
中国レノボ・グループ(聯想集団)による米IBMの低価格サーバー(x86サーバー)事業の買収がまもなく決まりそうだと米ウォールストリート・ジャーナルが1月22日付の記事で伝えた。早ければ23日にも発表される可能性があるという。
富士通、デルも買収を検討
これに先立ちウォールストリート・ジャーナルは、日本の富士通もIBMの同事業の買収を検討していると伝えていた。
富士通はIBMや米ヒューレット・パッカード(HP)と同様に、ハードウエア、ソフトウエア、サービスを一括して法人顧客に提供するワンストップショップを目指している。
また現在、4割弱となっている海外事業の売上高比率を高めたいとも考えていると同紙は伝えている。
一方、パソコン大手の米デルも買収に興味を示していると伝えられている。
創業者らによる自社の買収が完了し、株式を非公開化した同社はパソコン依存の収益体制からの脱却を目指している。x86サーバーは利益率が低いものの、IBMの事業を買収すれば規模の拡大が図れる。主要顧客を法人にシフトさせるという同社の戦略とも一致しているという。
レノボにとってサーバーは新たな収益源
米IDCによると、世界市場でサーバーの売上高が最も多いのはHP。2位はIBMで、3位はデル。この後、米シスコシステムズ、米オラクルと続いている。
このIDCの調査によると、昨年7〜9月期における業界全体のサーバー売上高は121億ドル。このうちx86サーバーは95億ドルと、全体の8割弱を占めている。
また別の調査会社、米ガートナーによると、サーバーの出荷台数ベースのシェアは同じくHPがトップ。デルがこれに続き、3位はIBM、4位は中国・華為技術(ファーウェイ)、5位は富士通。
2005年にIBMのパソコン事業を買収し、その後、出荷台数で世界1位になったパソコン大手のレノボは、ほかの分野でも事業を拡大しようとしている。今回IBMの事業を買収できれば、サーバー分野でもHPやデルに対抗できるとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
IBMは不採算事業からの撤退狙う
また事業売却はIBMの方針にも沿っているという。
21日に同社が発表した2013年通期の業績は、サーバーを含むハードウエア事業「システムズ&テクノロジー部門」の税引前利益が前年から約17億ドル減り、5億700万ドルの赤字となった。10〜12月期は7四半期連続の減収で、売上高は1年前から5%減少した。ウォールストリート・ジャーナルによると、これは過去約4年間で最大の落ち込み。
そうした中、IBMは利益率の低い事業から撤退し、主力のサービス事業やソフトウエア事業を強化しようとしている。先ごろは、12億ドル以上を投資し、クラウドサービス事業を強化すると発表した。
ただし、たとえIBMとレノボが合意したとしても、そこには米国の国家安全保障上の問題が立ちはだかるという。米国では対米外国投資委員会(CFIUS)が外国企業による投資を審査する。その内容が安全保障を脅かすものと判断された場合、大統領によって拒否される。
ウォールストリート・ジャーナルによると、レノボに買収される製品が米政府機関でどのように使われるかが審査の焦点になるという。場合によっては米国のリスクを低減するために何らかの条件が付けられる可能性がある。
また中国大手による米大手事業の買収は、政治的な問題もからんでくる。中国企業によるこの手の大型買収に対し、米議会が懸念を表明するのは必至だという。
(JBpress:2014年1月24日号に掲載)