「温泉が熱くて入れない!」ときはどうする? 温泉好きが実践する2つの解決法
温泉地に行くと、「泉温が高すぎて入れない」ということがある。銭湯などで湯の熱さに面食らった経験をもつ人もいるだろう。
日本人が好む泉温は42度くらいとされるが、温泉施設の中には45度近くに達するところもある。温泉に入り慣れている筆者でも、42度を超える温泉に入るには気合いがいるし、ゆっくり湯船につかってはいられない。
水で埋めることが許されている温泉であればよいが、そもそも水を自由に入れられない構造になっている温泉施設が多く、共同浴場などでは勝手に水を入れて地元の入浴者とトラブルになることもある。適温の基準は人それぞれだから難しい。
せっかく温泉旅行に来たのに、湯船に満足につかれないのでは、あまりに残念である。
では、どうすればよいか。
解決法として、まず考えられるのは「湯をもむ」ことである。
熱くて新鮮な湯ほど湯船の表面に滞留しがちなので、かき混ぜることで下部にたまっている古い湯と混ざり合い、泉温は下がる。
ただ、この方法は湯船が小さい場合に限られる。大きな湯船では現実的に難しい。
そこで、おすすめしたいのが「かけ湯」である。
ご存じの通り、かけ湯というのは、湯船に入る前に、湯で体を流すこと。もちろん、体の汚れを落としてから入浴するのがマナーであるが、かけ湯には、もう一つ重要な意味がある。
それは、温泉の温度や刺激に体を慣らすこと。これをすることで、心臓発作や脳卒中といった入浴中の事故を予防できるだけでなく、熱い湯にも対応しやすくなる。
とくに熱い湯に入る前は、入念にかけ湯をすると、体をびっくりさせずに、湯船につかることができる。
かけ湯のポイントは、心臓と離れた部分から湯をかけていくこと。手足からはじめて、徐々に肩からかけるようにすると、体への負担が少ない。普通の泉温の場合は、だいたい計10回ほどかけ湯をすれば十分だろう。
泉温が高い場合は、「かぶり湯」まですれば万全だ。頭から温泉をかぶるのである。
個人差はあるかもしれないが、筆者の場合は、かぶり湯をすることで、熱い湯に入る準備が整う。5回ほどかぶれば、45度くらいの湯でも、なんとか克服できる。しかも、かぶり湯は立ちくらみ防止にもなる。
一度、肩まで湯船につかれれば、こっちのもの。熱く感じるのは最初だけで、体が慣れれば気持ちよく入浴できるケースは少なくない。
そんな「かぶり湯」を江戸時代から風習として行っている温泉が鳥取県東部にある。山陰最古の温泉地といわれる岩井温泉だ。岩井温泉は開湯から1300年の歴史を誇る。なんと、奈良時代から湯が湧いていることになる。
数軒の温泉宿が並ぶ静かな温泉地の真ん中に、共同浴場「ゆかむり温泉」がある。白壁の蔵づくりが特徴だ。
「ゆ(湯)かむり」とは、てぬぐいを頭にかぶり、柄杓を使って湯を頭からかける岩井温泉独自の風習のこと。つまり、かぶり湯の一種である。
少しでも長く湯につかり、温泉の効能にあやかるために、「湯かむり唄」を歌いながら湯をかぶるのが特徴で、岩井温泉周辺の景勝地などが歌詞に盛り込まれている。実際、岩井温泉の泉温は高めだが、かぶり湯をすることで入浴しやすくなる。
もちろん、かぶり湯をしても克服できない泉温もあるが、熱い温泉に遭遇したときは、ぜひ頭から湯をかぶってみてほしい。無理だと思った湯にも入浴できるかもしれない。