球児先輩の言葉を胸に“侍のセットアッパー”へ 阪神タイガース・石崎剛投手
あす11月16日に開幕する『ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017』(東京ドーム)。それに先駆け、9日から宮崎市清武総合運動公園のSOKKENスタジアムで「侍ジャパン宮崎秋季合宿」が行われました。3対3で引き分けた12日の日本ハム戦に続き、合宿最終日の13日は西武と練習試合があり、日本代表は7投手による完封リレーで6対0と快勝しています。
阪神タイガースから唯一の参加となった石崎剛投手(27)も、この練習試合で7回に登板し、先頭の西武4番・木村文選手にカウント2-2から左前打されましたが、次の戸川選手は三邪飛、代打・斉藤選手を三ゴロに、同じく代打の駒月選手を二飛に打ち取って無失点!最速は152キロだったそうです。
そのあと8回の中日・又吉克樹投手(27)も1安打無失点、最後はDeNA・山崎康晃投手(25)が2三振を奪うなど三者凡退締め。さすがJAPANのセットアッパー、ストッパー陣です。石崎投手は又吉投手と2人で本番のセットアッパー役を任されたとか。しっかり抑えて“ヤスアキ”投手へつないでほしいですね。
5日間の宮崎合宿を終えた侍ジャパンは、きのう14日に東京へ移動して最終調整をするとか。『ENEOS アジア プロ野球チャンピオンシップ2017』の試合日程は以下の通りです。
【予選】
16日 日本-韓国
17日 韓国-チャイニーズ・タイペイ
18日 チャイニーズ・タイペイ-日本
【決勝】
19日 予選1位-予選2位
×よそいき、○普段着
さて、代表メンバーに選ばれたことを「すごく光栄」と喜び、JAPANのユニホームを着てもやることは同じだと言っていた石崎投手ですが、その反面「よそいきのピッチングをしてしまいそうで…」という言葉も口にしました。不安というほどのことではないと思いますが、でも練習試合の初登板は大丈夫だったみたいですね。本番も“普段着”でお願いします。
ことしは2月の沖縄キャンプに参加しながら、2月の練習試合で1イニングを投げただけ。その後はオープン戦ではなく、ファームの春季教育リーグからウエスタン公式戦へと移行していきました。ようやく1軍へ昇格したのは8月9日のことです。でも、そこからの活躍は記憶に新しいところでしょう。
8月11日のDeNA戦(横浜)から9月5日の広島戦(マツダ)まで登板した12試合で連続無失点。翌6日の広島戦(マツダ)で1点を失い、プロ初黒星を喫しますが、次は8日のDeNA戦(甲子園)から24日のDeNA戦(甲子園)まで、また9試合連続無失点。25日の同カードで3失点したものの、その後は3試合とも0点に抑え、最終戦だった10月10日の中日戦(甲子園)でプロ初勝利!CSも2試合に登板、失点はしていません。
今季の1軍公式戦成績は26試合、30回2/3を投げて1勝1敗(4ホールド、5HP)。三振32、四死球17で失点と自責点は4、防御率が1.17です。ちなみに今季ファームでは26試合、28回2/3で防御率が3.77でした。登板試合数は同じ、投球回もあまり変わらないのに、防御率は1軍の方が3倍もよかったわけですね。
「藤川投手のおかげです!」
1年目も昨年も1軍は経験している石崎投手。でも今季は8月が初昇格だったにもかかわらず、そしてビハインドの場面で出ることが多かったにもかかわらず、今までより強烈な印象が残っています。一体どんな“秘訣”があったのでしょうか?そのあたりを聞いてみました。
一番に出てきたのは「球児さんのおかげです!」というコメント。藤川球児投手(37)から何かを授けられたのでしょう?「こちらから質問をした時はもちろんですが、球児さんの方から話しかけてくださるんです。石崎の場合はこうしたらいいよ、って。ものすごくよく見てくれて、僕をわかってくれる」
そんなに見てもらっている自覚があるんですね。「はい!たとえば肩の力を抜いてタコのように投げるということで、『きょうはよかった。理由は柔らかく使っていたから。だめな時はカチカチ』とか。本当に気にかけてくださっています」
去年はそうじゃなかった?「ことしは8月から最後まで1軍にいたので、時間も長かった。その間にいろんな話を聞きました。技術はあまり言われないですね。去年は具体的にヒザの使い方とかを言われたけど、ことしはそれより視野を広げるという話です」
視野とは?「自分がキャッチボールをしていて、その隣でバッティング練習をやっていても、僕は打球を見ていないんですよ。そこも注意されました。周りを見られるようにしなさいと。何気ない言葉ですが、すごくハッとなることもあります」。試合にも生きる?「生きます!だいぶ違います。なのでバックスクリーンを見たり、スタンドのお客さんを見たりしました」
一流のクローザーから教わったこと
これも球児さんのアドバイスなんですけど、と続きます。「相手バッターを観察するとわかってくると言われました。こっちが大量リードしている時はコースを狙うんじゃなく、甘くても強い球を投げればいい。逆に大差で負けている時は、むこうはどんどん振ってくるから集中していけよって」
なるほど、確かにそれは言える。「やっぱりクローザーをやっていた人は、場面や力の入れどころ、短い期間なら余計に配球を考えてボールを多めに投げるとか、やり方があるんですね。CSでも教わりましたよ。自分が苦しい時も余裕を見せろ、わざとボールを投げているんだよって」
石崎投手の心に、次々と飛び込んでくる藤川投手の言葉。アップの時も、キャッチボールでも、ブルペンでも、何ひとつ聞き逃すまいと耳を傾ける様子が目に浮かびます。しっかり吸収していますね。
「はい!ただ言われたことをマウンドで思い出せない時も、実はあります。9試合無失点とか続けていた時は、自分にゆとりがあるから思い出せましたけど。切羽詰ってくるとガチガチになってしまって…。場面に関係なく、やりたいことができる心の整理がつくようになればいいかな」
自分のことだけでは相手を抑えられない
最後に、ふと「ブルペンの作り方が下手だと言われています」と付け加えた石崎投手。ブルペンの作り方?下手?どういう意味ですか?「僕は1球ずつハアハア、ヒイヒイ必死で作っているみたいで、スイッチの入り方が早すぎるって指摘されました。“よし、行くぞ!”という時に力を入れればいいのに、と」
一方の藤川投手は?と尋ねたら、ブルペンでピッチングをしている時に投げていない他のピッチャーから「次のバッター○○です」という連絡が入るのですが、石崎投手いわく「それを聞いて、頭の中で打ち取るイメージができている」とのこと。その差を今季の1軍でも痛感したみたいです。
まあ場数を踏めば、徐々にわかってくるでしょう。「そうですね。ほんとタイガースには、お手本になる先輩がいっぱいで、ありがたい。球児さん、高橋さん、桑原さん」。そんな先輩方とブルペンで過ごした時間が、いかに貴重だったか。今回の石崎投手の話でよく理解できます。「自分を作ることだけ考えていても、相手バッターを抑えることはできないと教わりました」
球界屈指のセットアッパー陣から学んだ心得を胸に、石崎投手は侍JAPANのセットアッパーとしてマウンドに立ちます!最高の仕事をして、また大きくなって戻ってきてください。
<掲載写真は筆者撮影>