火星に長さ1800kmの「巨大のろし」!?その謎がついに解明
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「火星で起こるのろしのような現象の謎を解明」というテーマで動画をお送りしてきます。
●火星の「のろし」
2020年7月の17日と19日、火星を周回しながら探査を続けている探査機マーズエクスプレスが、火星表面にて「のろし」のような奇妙な現象が発生している瞬間を撮影しました。
のろしのような現象が確認されたのは、標高16000mにもなる火星で3番目に高い山「アルシア山」です。
これで3番目というのですから、本当に火星は巨大な山が多いですね。
そしてこののろしのような現象は最大で長さ1800km、幅150kmに達するほど巨大で、なんと地球からでも望遠鏡でその様子が確認できるほどなんだそうです!
ではこののろしのような現象の正体は何なのでしょうか?
これは「AMEC(Arsia Mons Elongated Cloud)」と名前が付けられている、アルシア山にのみ現れる特徴的な雲なんですね。
アルシア山は火山なので、AMECは火山活動によって上がる噴煙のようなものというイメージが浮かぶかもしれませんが、実際はAMECは水の氷でできています。
そして実はAMECは今回の観測以前にもその姿を何度も観測されてきました。
地球の西暦でいうと2009年、2012年、2015年、2018年、そして2020年にも撮影されています。
直前の画像も、2018年の10月のAMECの画像となります。
AMECは火星の南半球で太陽が最も高く昇る南至を迎える頃、毎年アルシア山にて朝方によく見られる、季節的な現象なんだそうです!
AMECは早朝から約3時間ほど雲が現れ、数時間後にまた消えてしまいます。
そして80日間にもわたって現れては消え、現れては消え…というサイクルを繰り返しています。
●AMECの謎が解明!?
AMECはその形成メカニズムが長らく解明されていませんでした。
これまでAMECは火星を周回する探査衛星が午前中にアルシア山上空を通過する際に偶然撮影されたことが多いので、散発的にしか観測されていなかったためです。
ですが去年2021年の3月9日、このAMECが形成される瞬間からの映像を鮮明に捉えることで、そのメカニズムが解明されたと発表があり、大きな話題を呼んでいました。
今回観測に用いられたのは、ESAが打ち上げた火星周回衛星マーズ・エクスプレスに搭載されている、通称「VMC」と呼ばれる古いカメラです。
VMCは2003年製のウェブカメラ相当の性能しか持っておらず、マーズエクスプレスから着陸機を切り離す際にそれを確認する役割を果たして以来、一般向けの画像を撮影するのみで、研究的な目的で使われることはありませんでした。
ですが解像度が低い代わりに広い視野で時間的な変化を観測することに長けているというメリットがあったため、研究チームはVMCを研究のために用いて、AMECの変化を観測することを試みました。
(以下は映像が前提の解説部分なので、YouTubeの動画4分13秒あたりからの視聴をおすすめします。)
そしてこちらが実際にVMCを用いて撮影されたAMECの様子です!
左の方に移動していく黒い部分は日の光が当たらない夜の部分で、青い線が夜明けの瞬間の部分です。
画面中央少し右にアルシア山がありますが、夜が明けた瞬間から白い雲が出現し、左に伸びていく様子が鮮明に映し出されていますね!
今回の研究で明らかになったAMECの発生メカニズムとしては、まずAMECが毎年発生する南半球の春から夏にかけての時期の明け方に、アルシア山の麓にある高密度の空気が山の斜面を登り始めます。
斜面を登り、周りの気温が下がるにつれて高密度の空気は徐々に拡散していき、空気中の水分が塵の粒子の周りで凝縮し、地球でいう飛行機雲のような現象が発生します。
これがAMECの形成メカニズムなんだそうです!
具体的には標高45km辺りから空気が膨張し始め、その後2時間半ほどかけて時速600kmもの暴風に乗って西へと流れていくことで、これほどまでに長く巨大な雲が形成されているとされています。
そして太陽が真上に来る正午になると、氷の雲は蒸発して消えてしまいます。
この一連の流れが、数か月の観測期間中毎日繰り返されていました。
太陽系の中で、火星ほど地球に似た性質の大気を持つ惑星は存在しません。
今回メカニズムが解明されたAMECも、先述の通り地球の飛行機雲と似ています。
ただし、地球上でこれほどまでに巨大で鮮明な飛行機雲が形成されることはありません。
今後もこの雲を研究することで、火星だけでなく地球の気候をもより深く理解できるような理論が構築されることが期待されています!