海外赴任の日本人がヨーロッパへ戻り始める。JAL、羽田~ヘルシンキ初便は海外赴任者家族の姿が多かった
JAL(日本航空)は、7月1日から国際線について運休中だった路線の一部の運航を再開させた。具体的には欧州路線では、羽田~パリ、羽田~ヘルシンキ、成田~フランクフルトの3路線、北米路線では羽田~ニューヨーク、羽田~ダラス、成田~サンフランシスコ、成田~ロサンゼルス、アジア路線では羽田~ホーチミン、成田~バンコク線が運航再開となる。
基本的に運航を再開する路線においては、週1~3便程度の運航となる。
出国審査後のエリアも閑散としていた
7月1日、筆者は羽田空港第3ターミナル(旧国際線ターミナル)で、取材許可を得て羽田~ヘルシンキ線の搭乗ゲート前で取材をすることができた。筆者自身、新型コロナウイルスの影響で国際線エリアに約半年間入る機会がなく、3月~6月にかけては、誰でも立ち入ることができる羽田空港第3ターミナルと成田空港第1・第2ターミナルのチェックインエリアで定期的に取材を続けていたなかで、チェックインエリアは閑散としていた。
5月下旬の緊急事態宣言の解除や6月19日の県をまたいだ県外移動自粛の解除によって、羽田空港や伊丹空港、那覇空港などでは国内線のチェックインエリアに明らかに人が戻ってきているが、今でも国際線のチェックインエリアは閑散としている。
運航便のゲート前には一定の乗客がいた。ヘルシンキ行きは75人が搭乗
実際に出国審査後の制限エリアに入ってみると、免税店も一部を除いてほとんどが休業状態になっており、空いている免税店やショップなどは数える程であった。本当に寂しい光景である。現状、国際線の9割以上が運休になっているなか、筆者が取材した7月2日の朝9時~お昼にかけては、ANA(全日本空輸)のマニラ行きとJALのヘルシンキ行きの2便しかなかったが、どちらの便も利用者がゲート前に集まっていた。4月・5月は10人以下で出発する便もあったが、現在は限られた運航便に一定の乗客は乗っているようだ。日本の緊急事態宣言、各国のロックダウンの解除や経済活動の再開で、わずかではあるが人の動きがでてきている。
今回、羽田空港のゲート前で取材したJL47便、フィンランドのヘルシンキ行きは、今年3月28日までは成田~ヘルシンキ線として運航されていたが、羽田空港の日中時間帯発着枠拡大により、3月29日より羽田~ヘルシンキ線として就航する路線だった。しかし、新型コロナウイルスによる入国制限などの影響で羽田~ヘルシンキ線は乗客を乗せずに、3月29日から貨物だけの搭載で運航されていたが、7月1日からは週3往復で旅客便として乗客を乗せての運航となった。
約3ヶ月遅れで就航したJALの羽田~ヘルシンキ線はボーイング787-9型機(195席仕様)で運航され、JL47便はビジネスクラス5名、プレミアムエコノミー3名、エコノミークラス64名、座席を使用しない幼児3名も含めて合計75名で羽田空港を午前10時42分に出発した。4割弱の搭乗率となった。EUの日本人の入国制限も続いているなかで、どのような人が利用しているのかについて興味深くゲート前で取材をしていると思わぬ姿を見ることができた。
ヘルシンキ行きでは、子供も含めて駐在者の家族が赴任先へ戻る姿が多かった
ヘルシンキ行きの搭乗ゲート前では、想定以上に子供の姿が多かったのだ。少なくても15人近くは確認できた。フィンランド在住の日本人赴任者が新型コロナウイルスの影響が拡大し始めた段階で、家族と共に一旦日本に帰国していたが、EU(ヨーロッパ連合)での経済活動再開が進んできていることから、直行便の再開を機に赴任先に戻ることを決め、初便となる7月1日に合わせてヘルシンキ直行便を利用したようだ。日本に滞在していた外国人がヨーロッパへ戻る為に利用していた人もいたが、ヘルシンキ行きは大部分が日本人であった。
ただ路線によって状況は異なるようで、同じ時間帯に出発したANAのマニラ行きは乗客のほとんどがフィリピン人で、ほぼ満席の状態で羽田空港を出発していたほか、午後のフィリピン航空のマニラ行きでもチェックインカウンターではフィリピン人の長い列ができていた。
現状、EU内のフライトも限られていることに加えて、入国に時間を要する可能性も高いことから、乗り継ぎではなく直行便を利用したい傾向があるのは間違いなく、海外赴任先に戻る際も直行便の再開が戻るタイミングの1つのきっかけになっているだろう。7月2日運航予定のヘルシンキ発羽田行きには約40名の予約が入っているそうだ。
JALが一部路線の国際線運航再開を決めた理由は?
今回、JALにヘルシンキ線を含めて7月1日から欧米路線を中心とした一部便の運航再開についての基準について話を聞くと以下のような回答があった。「経済活動の再開や国内の移動制限の緩和の動きがあるものの、各国の入国制限については大きな緩和は見られず、引き続き厳しい状況が続くと想定している。一方で各国が夏休みに入ることに伴い、母国へ帰国する留学生や駐在家族の帰国需要があること、一部地域においてはビザ発給開始の動きもあり、これまで赴任できずにいた赴任者の需要など決して大きな規模ではないものの、大切なお客様の動きが出てくることが期待されている。運航に必要な一定規模のコストを十分に賄えると想定できる路線に限定の上、週2~3便程度の範囲において旅客便の増便や運航再開を図っていく。ただし、中国、インド、ロシアなど物理的に旅客便の運航自体や便数制限が課されていることは除きます」と話した。
また、運航再開に際しては、「お客様の感染防止はもちろんのこと、運航乗務員・客室乗務員・JALグループのスタッフに十分配慮して対応します」とコメントした。
貨物には一定の需要があり、貨物専用便の運航を増やしている
ANA、JALの両社を取材していて感じることとして、定期便が大幅減便になっている影響で貨物スペースが限られていることから、限られた定期便の貨物スペースは満載で出発することも多く、ANAでは貨物機や旅客機を使った貨物専用便、JALでは旅客機を使った貨物専用便の運航を増やしており、JALでは北米・欧州・東南アジア・東アジア・オセアニア方面へ7月だけでも約960便、旅客機の貨物スペースを使った貨物専用便を運航する。
7月1日の羽田~ヘルシンキ線の初便旅客は4割弱であったが、貨物スペースは満載で出発した。現状、貨物の料金も高止まりしていることもあり、貨物が満載で出発できれば、少なくても固定費は捻出可能であることから、貨物の需要も考慮しながら貨物専用便を運航している。
7月のANA・JALの欧米、オセアニア路線の運航状況
ANA、JALの欧州、北米、オセアニアの長距離路線の7月の運航状況については以下の便が運航される予定となっている。
■北米
ANA:成田~ロサンゼルス(週7往復、※1日1往復)、成田~サンフランシスコ(週3往復)、成田~ニューヨーク(週2往復)、成田~シカゴ(週7往復、※1日1往復)、羽田~バンクーバー(週3往復)、成田~メキシコシティ(週5往復)
JAL:羽田~ニューヨーク(週2往復)、羽田~シカゴ(週3往復)、羽田~ダラス(週2往復)、成田~サンフランシスコ(週2往復)、羽田~ロサンゼルス(週2往復)、成田~ロサンゼルス(週1往復)、成田~バンクーバー(週1往復)
※ハワイ路線は、7月は全便運休が決定している。
■欧州
ANA:羽田~ロンドン(週3往復)、羽田~フランクフルト(週5往復)
JAL:羽田~ロンドン(週3往復)、羽田~パリ(週2往復)、成田~フランクフルト(週2往復)、羽田~ヘルシンキ(週3往復)
■オセアニア
ANA:羽田~シドニー(週3往復)
JAL:全便運休を継続(羽田~シドニー、成田~メルボルン)
国際線全体の運航率は、ANA・JAL共に7%となっているが、JALでは7月について、北米路線では15%(6月は3%)、ヨーロッパ路線では21%(6月は6%)と長距離路線で運航率が上昇している。最終的な運航スケジュール及びアジア路線などについては、各社ホームページから最新情報を確認していただきたい。
まだ国際線の回復には時間がかかる
EUも日本人の入国を認める動きが6月末から出てきているが、最終的にはヨーロッパ各国と日本政府による協議で決定されることから、もう少し時間がかかる可能性が高い。
オーストラリア、ニュージーランド、タイ、ベトナムの4カ国のビジネス渡航の一部が7月以降、条件付きで緩和されることに加えて、台湾やブルネイについてもビジネス往来の再開へ向けての協議が始まっている模様だ。
JALによると、国際線における6月の予約率は前年比9割減少、7月の予約率は8割減少しているとのことだが、渡航が解禁される段階で復便が更に増えることになるが、同時に日本国内も含めて新型コロナウイルスの感染者数の推移を見ながらになることから、帰国時のPCR検査や自主隔離も含めて、海外へ自由に出かけられるようになるにはもう少し時間がかかりそうだ。
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