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世界基準の注目シンガー遥海 「言葉の壁をぶち壊し、歌える、伝えられる歌手になりたい」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/アリオラ・ジャパン

初のホールライヴで見せた、“進化”

昨年、世界的なオーディション番組「X-FACTOR 2018 UK」にチャレンジ。イギリス・ウェンブリーアリーナのステージに立ち、審査員、観客を魅了した4オクターブの音域を誇る世界基準のシンガー・遥海が、4月11日、初のホールワンマンライヴ『HARUMI ONEMAN LIVE “MAKE A DIFFERENCE” 2019』を、マウントレーニアホール渋谷で行った。

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オリジナル曲はもちろん、アデルやレディ・ガガ、セレーナ・ゴメス、そして手島葵など、邦洋のカバーを披露。その圧巻のボーカルパワーはいわずもがなだが、表現力の素晴らしさが光ったライヴだった。緩急つけたセットリストを、一曲一曲丁寧に歌い、一人ひとりにしっかりと届けようという思いが、熱を帯びて伝わってきた。オリジナル曲は、4月19日(金)に配信限定リリースする自身初のオリジナルEP『MAKE A DIFFERENCE EP』からの楽曲を中心に披露した。様々なチャレンジをした2018年。濃厚な時間を過ごした中でみつけた、これからの遥海に必要な“何か”を詰め込んだEPだ。この作品について遥海にインタビューした。

「これまでの活動は「点」。今年はそれを「線」にする年」

遥海は昨年、クラウドファンディングに挑戦し支援を募り、見ごと4月19日にZepp DiverCityでのフリーライヴ『Road to Zepp』を実現させた。あれからちょうど一年。『MAKE A DIFFERENCE EP』で、変化し進化を遂げた自身の歌を伝えたかった。

「今まではとにかく頑張ろうと全速力で走ってきた感じでした。流れが速すぎて、何に頑張ればいいのかも見失う事もありました。でも今は心に余裕ができ、どういう心持ちでいたほうがいいのかが見えてきました。『MAKE A DIFFERENCE』というのは“唯一の人”になるっていうか、最近は例えばフォロワーの数が人気やその人のパワーの判断基準になっているような気がして。でもそうではなくて、どういうアーティストであるべきかを明確にして、誰も真似できない、唯一無二の存在になりたいという気持ちの現われです。とにかく変化している自分を見せたい。今までは、色々なところに「点」をマークしてきましたが、今年はそれを繋げて、「線」にするという意識です」。

2018年は、Zepp DiverCityでのフリーライヴを実現させ、「X-FACTOR 2018 UK」に挑み、三度の渡英。緊張感が続く中、数か月を過ごした。そして男性デュオ、サカタケントとの対バンライヴツアーや自身のライヴ、さらに12月からは男女混合ボーカルグループ「Love Harmony’s Inc.」への参加と、とにかく時間に追われ、精神的に余裕がなかった。そんな時を経て『MAKE A DIFFERENCE EP』の制作に臨み、時間をかけレコーディングし、納得いくまで歌うことができた。この作品には「Road to Zepp」の来場者にお礼として制作された初のCD作品「Road to Zepp」に収録されていた、ライヴではおなじみの「DANCE DANCE DANCE!」「DIAMOND」と新曲3曲という内容だ。英語詞2曲が含まれ、英語詞でも日本語詞と同じように、しっかり“伝える”ことができる遥海のボーカリストとしての力、さらに進化した圧巻の表現力を堪能できる。

「英語だからこそ伝わる曲」

配信限定EP『MAKE A DIFFERENCE EP』(4月19日配信)
配信限定EP『MAKE A DIFFERENCE EP』(4月19日配信)

『DANCE DANCE DANCE!』『DIAMOND』はZeppライヴの時に作った、お返しCDの中にしか入っていなくて、最近私のファンになってくださった方には届かないじゃないですか。この2曲は本当にみんなのパワーが必要で、みんなのパワーがないと歌えない曲だから、みなさんに知って欲しいという思いもあって、今回収録しました。英語って日本語に比べるとストレートで、そのまま歌った方が言いたいことが伝わると思います。英語の曲でも伝わる曲を歌いたいなってずっと思っていて。海外のアーティストが来日公演でMCでしゃべっても、理解できる人と理解できない人がいて、でも私は、その英語がわからない人にでも歌が伝わる歌手になりたいんです。言語の壁をぶち壊して、歌える人になりたい。『Don’t Break My Heart』は“一聴き惚れ”した曲で、私にしか歌えない曲だと思いました。私は恋愛に関しては、傷つけられるのがすごく怖くて臆病なタイプなんです。傷つけるなら近づいて来ないでという意識が強いので、すごく共感できました。でも、今までの恋愛があったからこそ、自分のことをもっと好きになれたというか、誰かのために頑張るというより、自分のために頑張ろう、その方が裏切りがないと思えるようになって、開放感を持って歌えることができました」。

「『出会ってくれてありがとう』と、今素直に思える人の存在が大きい」

レコーディング方法も、歌の部分に関しては、細かい修正を重ね、繋げていくやり方ではなく、何テイクか録って、そこから選択するという、彼女の感情を殺さず、そのまま伝える方法を採用し、その時の空気を瞬間パックした。

『DARE ME』も英語詞で日本語とは全く違うニュアンスで、英語だからこそ伝わる曲だと思います。恋愛に臆病な私が久々に、この人ならかけてもいいと思える人が現れたのですが、結局終わってしまって。でも結果的に、恋愛に関して壁を作っている私の心を溶かしてくれた人だから、最後は出会ってくれてありがとう、という感謝の気持ちになれて。一緒に過ごした時間はやっぱり忘れないし、感謝してるって素直に思えるようになったから歌えた曲です。その人のおかげで、新しい自分を発見できることができました。こうやって前向きに頑張れるのも、その人の存在があったからなんですよね。聴いて下さる方も共感していただけると思います」。

日本語詞の「君のストーリー」は、<いいんだよ>という歌詞で始まる、優しく背中を押してくれる壮大なバラードで、遥海の圧倒的な“歌力”で聴き手の心を癒し、勇気づけてくれる。

「『君のストーリー』は、作詞家の方に『エモい曲が欲しいです』ってリクエストしました。同時に『でも私への手紙のような曲が欲しいです』と言いました。私は<いいんだよ>から泣きそうになりました。今まで頑張ってきて<いいんだよ>って言われたことがなかったかも。頑張ってるね、という言葉が逆にプレッシャーでした。だからこんなにも優しい言葉から始まるこの曲は、どうしてもファンのみなさんの手元に置いて欲しいというか、いつでも聴ける曲にしたいと思いました。嫌なことがあって、心が挫けたしまった時は、いつでも癒してあげたいという気持ちが強いんです。だから早く音源にして、出したかったんです。でもその人にしかわからない痛みは、100%他の人には伝わらないと思うし、私もそうです。だからこそ自分の事を癒せるのは最後は自分だと思い、そういうイメージでこの曲を歌いました。みなさんにも聴いて欲しいですし、自分にも向けて歌っている曲です」。

一年前のZeppDiverCityでのライヴは「私を信じてくれている人たちの存在が、大きな勇気になった」

昨年4月19日に行ったZepp DiverCityでのフリーライヴ『Road to Zepp』から一年。クラウンドファンディングで募った支援金は、瞬く間に250万円を超え、それだけ遥海の生の歌を聴きたいという人が多い、気になる存在になっていた。あのライヴを行ったことで、彼女の心の中にも変化が現れ、その後の活動の原動力になっている。

「人を集める大変さを実感しました。同時にこれだけの人が私を支えてくれている、育ててくれているんだなって実感できました。自分に自信がない私を信じてくれてる人たちがたくさんいて、大きな勇気になりました。私は歌う前は緊張しすぎて、パニックになることが多くて、でもマイクを握ると不思議と気持ちを切り替えることができるんです。ただあの時は、マイクを握っていても大泣きしてしまって(笑)。MCでも感極まって、すぐに泣いてしまうので、歌でその思いを爆発させることを心がけたいです(笑)」。

「2018年は人間として、シンガーとしての土台を作ることができたと思う。今年はひとりで多くの人に私の歌を聴いて欲しい」

2019年は遥海にとって、大きく飛躍する年になりそうだ。「MAKE A DIFFERENCE」はそんな決意を込めた言葉でもある。

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「2018年は自分を人間としてもそうですが、アーティストとしての土台を作ることができた年だと思います。なので2019年はひとりでも多くの人に、私の歌を聴いて欲しいですし、海外でも通用するシンガーになりたいです。『Don’t Break My Heart』と『DARE ME』は、海外の人に『遥海は今までどういう曲を歌ってきたんだ?』って聞かれたときに、自信を持って紹介できる楽曲です。私はこれからも頑張っていきますし、私ができる事は全てやってきたつもりなので、後は時間が味方してくれれば、大丈夫!そう信じて歌い続けていきたい」。

遥海 オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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