7月の売上、前年同月比7%増。根強い人気のすき家で働けるか
長らく「パワーアップ工事中」だった近所のすき家がようやく再オープンした。労働状況の悲惨さがあれだけ指摘されているのに、さっそく昼食客が詰めかけている。新聞報道によれば、すき家の7月の売り上げは前年同月比7%増らしい(『日経MJ』8月10日)。
かくいう僕も、近所のユニクロを使っている。特に下着類は、他社製品に比べるとコストパフォーマンスが圧倒的にいいからだ。
安い割にモノがいい、お得だ!と感じられたら、僕のような安直な消費者は買い物に行くことをやめられない。企業イメージなどあまり関係がないのだ。イメージダウンで危機感を募らせた会社がさらなるサービスをしてくれたらラッキーだ、ぐらいに考えている。市場経済とはそういうものだと思う。
しかし、買い手ではなく働き手になるなら話は別だ。特に外食や小売りの場合は、人件費を含めたコストを徹底的に削ることで商品価格の安さを実現しているので、若くて素直で体力もある従業員を限界まで働かせることになる。
学生時代のアルバイトならば「いい経験」になるかもしれないが、社会人として知識と実績を積み重ねるべきときに使い捨てられたらたまらない。ごくたまに「大変な会社だったけれどいろいろ学ばせてもらった」と従業員時代を振り返る新興企業の経営者がいるが、何を学んだのかと問うと「若者を安く使って儲ける方法」だったりする。
すき家やワタミの採用状況が改善したという話は聞かないので、多くの人は「客としてなら構わないけれど従業員として入るのは無理」だと感じているのだろう。冒頭のすき家店舗も、二面に渡って「アルバイト募集中!」という貼り紙が出ていた。ガラスの向こう側では、従業員がたった一人で大勢の客を必死で応対していた。
こんな会社ばかりではない。ある食品スーパーチェーンは週末は駐車場がいっぱいになるほど人気だが、「激安」でも「高級」でもない。新鮮で良質な食品をほどほどの値段で売っている。従業員の人数が多くてその表情は明るい。聞けば、平均年齢は50歳であり、新卒社員の離職率はわずか数%だという(ちなみにユニクロは3年で50%前後が辞める)。
この会社では、「粗利益の半分は人件費として従業員に還元する」という驚くべき施策を続けている。それでは会社としてのうまみがないのでは、とオーナー経営者に問うと、「非常識」な答えが返ってきた。
「パートナー(従業員)の給料はコストではありません。目的なんです。経営者は自分や親族には高い給料を出しながらも、『他人』とみなした従業員の給料は安く抑えたがる。それは間違っていると思います。みんな豊かな生活がしたいのですから。がんばって働いて稼いだら、その果実はみんなで分け合うべきです。パートナーに高い給料を払うのは会社の存在目的であり、誇りでもあるのです」
この人自身も、10年以上前にある先輩経営者から「給与は目的」との話を聞いてショックを受け、今まで愚直に実行してきたという。従業員を使い捨てるのではなく、悲喜を分かち合う方法を先達から学んだのだ。
人を使い捨てる会社と人と分かち合う会社。働き手としてどちらを選ぶのかは明らかだ。理想を言えば、消費者としても後者をたくさん利用して支えたい。