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「ここからが本番」。日本代表・田村優、ニュージーランド代表戦をどう見る?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
代表キャップは51保持。(写真:アフロ)

 ラグビー日本代表は10月14日から宮崎で合宿を張る。

 26日に大阪・東大阪市花園ラグビー場で世界選抜との国際試合をおこない、11月3日には東京・味の素スタジアムで世界ランク1位のニュージーランド代表と、17日にはロンドン・トゥイッケナムスタジアムで元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏率いるイングランド代表と戦う。

 続く24日にグロスター・キングスホルムスタジアムでぶつかるロシア代表とは、2019年のワールドカップ日本大会で対戦予定。今度のツアーは、1年後の大本番に向けた貴重な機会と言える。

「ここからが本番」と静かに意気込むのは、田村優。スペースにパスやキックを配するジェイミー・ジョセフヘッドコーチ体制下、司令塔のスタンドオフに入って勝負を左右する。

 合宿集合日前日の13日は、東京・秩父宮ラグビー場で国内最高峰トップリーグの第6節に先発出場。昨季4強のヤマハに17-52で完敗し2勝3敗1引き分けとなったが、強豪と苦しんできた歩みさえも代表活動にフル活用しそう。昨季キヤノンへ加入した背景に、来年を見据えたある理由があった。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――ヤマハ。どうでしたか。

「ヤマハ、強かったですよ。セットピースでプレッシャーをかけられて」

――向こうは左右にボールを振るうちに、防御の薄いエリアで数的優位を作っているような。

「キャリーする位置とかは、こだわっているかもしてないです」

―― 一方で、田村選手のプレーするキヤノンはどう映りますか。

「頑張っていると思いますけどね。いいところもあれば、悪いところもある」

――チームは、元南アフリカ代表ヘッドコーチのアリスター・クッツェーさんが率いています。

「南アフリカみたいなスタイルでやって欲しいとは言われていますが、僕からはもっとこうしたいということは伝えています」

――確かにトライシーンを含め、最終的にスペースにボールを運ぼうとする意図が見えます。

「そうですね。アタックしている時は。僕はダグが来てくれて、やりやすい。同じフィーリングの人がいてくれて、きょうは大分、僕の走る機会も増えました」

 

 ダグとは、新加入で元ニュージーランド代表のイズラエル・ダグ。この日はフルバックで先発した。

 前半32分、キヤノンが連続攻撃から敵陣22メートル線付近左にラックを作ると、スクラムハーフの天野寿紀の後ろに3名のフォワードが立ち並ぶ。その先頭に立つアニセサムエラが深い角度のパスを放つと、陰から右方向へ飛び出した田村がキャッチ。余裕を持って走りながら右に展開する。最後はダグのランとラストパスが決まり、ナンバーエイトのフィリップ・ヴァンダーウォルトのトライが生まれた。クラブの攻撃の形が垣間見えた瞬間だった。

――さて、14日から代表合宿が始まります。

「ここからが本番。ヤマハとかのようにいつもいいボールが出るわけじゃない、自分にプレッシャーがかかる状況で準備をしてきている。…ここからが、本番です」

――以前、専門誌のインタビューで6月と11月の代表活動を優先的に考えている旨の発言をされていました。

「手を抜くという意味では全くなくて、もちろん(トップリーグでも)全力でプレーしています。ただトップリーグでは、強いチームでプレッシャーがない状況でプレーするということはしたくなくて。移籍する時もそれは思っていて。下から上に挑戦するという図式は、ジャパンと似ているかなと思っています」

――田村選手が昨季NECから加入したキヤノンは、加入前年が7位で昨季は10位。改めて上位進出を伺う状態です。確かに、今度のワールドカップで予選プール突破を目指す日本代表と状況は似ていそうです。

「(ワールドカップ)アイルランド代表とやることは、トップリーグで(優勝経験のある)パナ、ヤマハ、東芝と試合をするのと図式的には一緒かなと思います」

――そのワールドカップに向けて、この秋はオールブラックスことニュージーランド代表と試合をします。

「勝ちたいです。世界ランク1位のチームと試合ができることはなかなかないですし、全部、楽しみ。僕の専門は攻めることなので、テンポを上げて、攻めて勝ちたいです。イングランドはタイプが違いますけど、オールブラックスは僕たちとほぼ同タイプで、世界一強い。チャレンジしたいです。本当に」

 田村の言う通り、ニュージーランド代表と日本代表のコンセプトは類似。いずれもセットプレーを介さないアンストラクチャーの攻防で活路を見出す。挑む側の日本代表にとって今度の一戦は、目指すスタイルの理想形を皮膚感覚で把握しながら勝利を目指す80分となりそう。果たして田村は、「自分にプレッシャーがかかる状況」での日々を活かせるだろうか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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