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トルクメニスタン、トルコの軍事ドローンを初披露:ソ連から独立30年の軍事パレードでロシアへの抑止

佐藤仁学術研究員・著述家
(バイカル社提供)

ソビエト連邦から独立30年目の軍事パレードで初披露

トルクメニスタン軍は2021年9月に行われた軍事パレードで、トルコの軍事企業のバイカル社の攻撃ドローン「バイラクタル TB2」を初披露した。トルクメニスタンは1991年にソビエト連邦から独立して、今年で30年。トルクメニスタン軍は、2021年7月に3700万ドル(約41億円)でトルコの軍事企業バイカル社から購入していた。

NATO加盟国ではポーランド、ラトビアもトルコのバイカル社の攻撃ドローン「バイラクタル TB2」を購入している。またアルバニア、パキスタンも購入意向を示している。

▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」

軍事ドローンで注目度が高いトルコ

トルコは世界的にも軍事ドローンの開発技術が進んでいる。アゼルバイジャンやウクライナ、カタールにも提供している。2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突でもトルコの攻撃ドローンが紛争に活用されてアゼルバイジャンが優位に立つことに貢献した。またロシアと対峙しているウクライナにも軍事ドローンを提供しており、ロシアにとっても大きな脅威になっている。

攻撃ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。

特にロシアにとっては周辺の中小国が攻撃ドローンを大量に導入することは脅威である。NATOおよびEU加盟国で初めてトルコから軍事ドローンを購入したポーランド、ラトビアの標的は明らかにロシアであり、ロシアに対する抑止を狙っている。トルクメニスタンも同じである。

「神風ドローン」の大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。ドローンはコストも高くないので、大国でなくとも購入が可能であり、攻撃側は人間の軍人が傷つくリスクは低減されるので有益である。そして軍事ドローンを活用すればポーランドやラトビア、トルクメニスタンのような中小国であってもロシアのような大国に対して非対称な戦いが可能となるため、抑止力にもなり、バランスオブパワー(勢力均衡)を変える可能性がある。

▼バイカル社の攻撃ドローンの「バイラクタル TB2」でのアゼルバイジャンによるアルメニアへの攻撃

(バイカル社提供)
(バイカル社提供)

(バイカル社提供)
(バイカル社提供)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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