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【新生K-1】異色の兄弟対決を制したのは

藤村幸代フリーライター

90年代キックボクシング界のヒーロー、前田憲作(48)をプロデューサーにスタートを切った新生K-1。昨年11月の第1回に続き1月18日(日)、国立代々木体育館第二競技場で2回めとなる「K-1 WORLD GP」が開催された。

前評判通りの強さで日本人3選手を下し、-65Kg初代王者のベルトをその腰に巻いた “最強ムエタイ戦士”ゲーオ・フェアテックス(タイ/30)が前回の主役なら、今回、-60Kg初代王座を巡るストーリーの中心となったのは、卜部弘嵩(うらべ・ひろたか/25)と卜部功也(こうや/24)の2人だ。

別ブロックにエントリーした年子の兄弟は、海外強豪やワンデートーナメントにめっぽう強い名うてのベテランらをかき分け、ついに決勝で拳を交えることとなった。ボクシング界では93年に兄・江口九州男vs弟・江口勝昭が日本王座をかけて戦い話題となったが、プロキック界での兄弟対決、しかも世界王座決定戦はおそらく史上初だろう。

魔裟斗に次ぎ2人めのK-1 WORLD GP日本人覇者となった卜部功也
魔裟斗に次ぎ2人めのK-1 WORLD GP日本人覇者となった卜部功也

かつて難病にかかった父が「自分が死んだ後、心身共に強く生きていけるように」と幼い2人の子に空手を始めさせたのが、卜部兄弟の格闘技キャリアの原点。センス抜群で練習熱心な兄と、上昇志向に乏しくサボリ勝ちの弟という対照的な格闘技人生を歩んできたが、プロデビューを目指し始めた頃には弟も“開眼”。兄はスーパー・ライト級で、弟はライト級で共にISKA世界王者となるなど、揃ってキック界をけん引する存在となった。

試合にはいつも両親が駆けつけ、全力で応援する。団結力の強い家族だけに、「兄弟対決?ありえない。僕は絶対にイヤです」と以前は完全否定していた兄・弘嵩だが、今回のトーナメントが決まって以降は「兄弟だからという気持ちは捨てる。そうでなければ同じリングに立てない」。一方の弟・功也も複雑な思いを飲み込み「兄を超える」ことをテーマに本トーナメントに臨んだ。

決勝は、ここまでの激闘でダメージを負った相手の右足を、ほぼ無傷で勝ち上がったもう一方がローキックで攻め立てるという展開。判定勝利で精鋭8名の頂点に立ったのは、弟の功也だった。兄に放ったローキックに関しては、「自分も準決勝で足を痛めたけど、100%(の力)で打ちました。早く終わらせたいというのが正直な気持ちだった。でも、兄の意地を感じました」。最後までダウンを拒んだ兄は「弟だからこそ悔しい気持ちが強い。もちろん、このままじゃ終わらないですよ」

試合後「弟に負けたのは悔しい。でも闘えてよかった」と語った兄の卜部弘嵩
試合後「弟に負けたのは悔しい。でも闘えてよかった」と語った兄の卜部弘嵩

卜部兄弟を始め、今大会に出場した選手の多くはヘビー級や、魔裟斗を中心とする70Kg級で一世を風靡したかつてのK-1に憧れた世代。「今日の大会はテレビで見ていたK-1、いやそれ以上に盛り上がっていて最高でした。でも、もっと盛り上がっていくと思うし、そのためには自分がもっといい試合をしないといけない」と試合後、功也が語ったように、若き選手たちは“あの頃のK-1”以上のK-1を自分たちの拳で紡ぎ出そうとしている。

4月19日には第3回大会となる「-55Kg初代王座決定トーナメント」の開催が決定。ゲーオ、卜部兄弟に続く新たな主役は果たして誰か? 繰り広げられるであろうドラマの一つひとつが、新生K-1の歴史をつくり上げていく。

◆K-1 WORLD GP Official Website

http://www.k-1wg.com/

◆打撃系格闘技マガジン・ストライキング

https://www.facebook.com/pages/Striking/265595183650701?fref=ts

フリーライター

神奈川ニュース映画協会、サムライTV、映像制作会社でディレクターを務め、2002年よりフリーライターに。格闘技、スポーツ、フィットネス、生き方などを取材・執筆。【著書】『ママダス!闘う娘と語る母』(情報センター出版局)、【構成】『私は居場所を見つけたい~ファイティングウーマン ライカの挑戦~』(新潮社)『負けないで!』(創出版)『走れ!助産師ボクサー』(NTT出版)『Smile!田中理恵自伝』『光と影 誰も知らない本当の武尊』『下剋上トレーナー』(以上、ベースボール・マガジン社)『へやトレ』(主婦の友社)他。横須賀市出身、三浦市在住。

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