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タクシーとライドシェアの両方に挑戦する「newmo」 ドライバー不足を解決できるか

山口健太ITジャーナリスト
タクシーとライドシェアを両方手がけるという(newmo提供資料より)

3月7日、タクシーとライドシェアを両方手がけるというスタートアップ企業「newmo」が発表会を開きました。

この会社は元メルカリの青柳直樹氏が設立したことで注目されており、地方のタクシー会社のライドシェア事業を支援していくモデルを今後展開していくといいます。

「ドライバーへの還元増やす」

日本では、4月からタクシー事業者によるライドシェア(いわゆる日本版ライドシェア)が始まりますが、その後の全面解禁については賛否両論があるのが現状です。

その中でnewmoは、あくまで現行法の範囲内でタクシー事業とライドシェア事業の両方を手がけるハイブリッドモデルにより、課題解決を目指していく方針としています。

タクシーとライドシェアの両方を手がけるという(newmo提供資料より)
タクシーとライドシェアの両方を手がけるという(newmo提供資料より)

背景にあるのがタクシードライバー数の減少です。2023年には23万人と、2009年の37万人から約4割減る事態になっており、高齢化や経済動向、コロナ禍といった要因を挙げています。

このタクシードライバーを増やすために、newmoは還元を増やすことを目指すとのこと。「タクシー会社の取り分は多く、ドライバーの手取りは5割〜6割というのが現状。これを5%でも10%でもドライバーへの還元を増やしていきたい」(青柳氏)と語っています。

newmo代表取締役CEOの青柳直樹氏。自身も普通二種免許を取得、東京都地理試験に合格したという(newmo提供資料より)
newmo代表取締役CEOの青柳直樹氏。自身も普通二種免許を取得、東京都地理試験に合格したという(newmo提供資料より)

ただ、数え方によるもののタクシー事業者は全国に5000ほどあり、その多くは家族経営などの中小規模とのこと。ライドシェアに向けて投資をしようにも、人材や資金の余裕はないとnewmoはみています。

そこでnewmoがそうしたタクシー事業者に資本参加や提携をすることで、タクシーとライドシェアの運行管理を一元化するといった手法により経営を改善し、収益をドライバーに還元するとしています。

新たな層の開拓にも期待しているようです。「ライドシェアなら自家用車の利用や遠隔の点呼により、自宅から出勤して帰宅できる。これまでタクシー運転手をやってみようとはとても考えなかった方々にも担っていただくことで、裾野を広げていく」(青柳氏)としています。

女性ドライバーを増やしていく上では、理不尽な要求やクレームを言う客からの「カスタマーハラスメント」対策の必要性にも言及。車内へのドライブレコーダーの設置や、低評価客への警告や利用停止といった措置を検討しているといいます。

その一方で、「誰でも」ドライバーに登録できるとなるとサービス低下につながることから、金融サービスのノウハウを活かし、登録にあたっては金融機関水準の審査を実施するとのこと。具体的には反社チェック、事故や犯罪歴などを外部のデータベースを利用して確認するとしています。

利用者はnewmoのアプリを利用して、タクシーとライドシェアを選べるほか、多様なニーズに応えていくようです。イメージ動画では、「ペット」や「大型荷物」、EVとみられる「環境に配慮」した車両を選べる様子を示しています。

配車時にはペットや大型荷物に対応した車両を選べるようだ(newmoのイメージ動画より)
配車時にはペットや大型荷物に対応した車両を選べるようだ(newmoのイメージ動画より)

ほかにも、女性客なら女性のドライバーを指定できるなど、「ライドシェアという新しいサービスの導入期に、安全、安心なのかを気にされる方のニーズにも応えていく」(青柳氏)と語っています。

ドライバーが見ている画面。マップに行き先が表示されている(newmoのイメージ動画より)
ドライバーが見ている画面。マップに行き先が表示されている(newmoのイメージ動画より)

2024年秋、大阪から開始

サービス開始にあたっては、大阪市域交通圏に展開する「岸交」にnewmoが資本参加。大阪・関西万博のタクシー需要に向けて、2024年秋からライドシェアを始める構えです。

インバウンド利用も多いとみられますが、newmoアプリだけでなく、ドライバーは複数のアプリからの配車リクエストを受けられる仕組みを考えているとしています。

既存の配車アプリとの競合については、「ダイナミックプライシングや効率的なマッチング、ライドシェアを念頭においた運行管理、オンボーディングは、既存事業者もほとんど手がけていない」(青柳氏)との見方を示しています。

青柳氏が元メルカリということもあり、newmoにはメルカリやメルペイの経験者が続々と参加しているようです。「新しいプロダクトやサービスを垂直で立ち上げていくメンバーが集まっており、そこを特色にしたい」(青柳氏)と語っています。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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