ネットで批判されるのが嫌ならネットで情報発信なんかやめた方が良い?
こんな話題がちょっとした物議を醸しているようです。
■NewsPicksと三上俊輔に抗議する?私の記事はピックしないでほしい
■News PicksはNo Picking運動にどう向き合うのか?
要は、メディアコンサルタントの境さんがNewsPicks上で批判コメントに対して切れたのをきっかけに、前からNewsPicksに批判的だったネット論客の常見さんもかぶせてきている、という話のようです。
NewsPicksというのは実に不思議なサービスで、ファンも多い一方で、非常にアンチも多いんですよね。
私自身はどちらかというと、初期の頃のNewsPicksに感動してから応援はしているものの、最近のNewsPicksのやり方には賛同できない点がいくつかある、というポジティブ寄りの若干ネガティブ、という人間なのですが。
正直、境さんのこの問題提起はズルいなと思いましたので、横から反論したいと思います。
今回、境さんがNewsPicksの問題としてあげているのは整理するとこんな感じ。
■1.他メディアの見出しや本文を勝手に引用しているのは問題ではないか
■2.誹謗中傷や法的に問題があるコメントが放置されているのは問題ではないか
■3.記事を読まずに誤ったコメントをすることを誘発する仕様が問題ではないか
パロディのロゴまで作る力の入れようですからね。
さぞかし腹が立ったんだとは思います。
特に一つ目の問題は、先日のデジタルジャーナリズムフォーラムで山本一郎さんが「NewsPicksはランディングページ泥棒ではないか?」という問題提起をされたこともあり、NewsPicksに対して同様の問題意識を感じている人が多くいるようです。
丁度、その流れで今週NewsPicksのユーザーイベントが開催されてその辺の議論がされてたりもしてました。
このイベントの公式レポートはNewsPicks側から出るらしいのでいましばらくお待ち頂くとして。
個人的には、NewsPicksのサービス構造は、はてなブックマークと同様クリッピングサービスなので、クリッピングサービスが記事の見出しや本文の一部を勝手に使って個別ページを作る行為自体はグレーという話はありつつも、メディア側がRSSでデータを配信している時点でその範囲で使って良いよ、という紳士協定の範疇だと認識しています。
ただ、NewsPicksはどうしても、シェアした際のリンクのデフォルトが記事本文ではなくコメント一覧ページだったり、そこからコメント一覧を見ようと思ったら会員登録が必須だったり、はてなブックマークのような純粋なプラットフォームではなく、NewsPicks自らが有料メディアとして会員限定記事配信をしているメディアのライバルだったりするので、レベニューシェアのスキームに対する嫉みや、ただ乗り批判が大きくなるという十字架は背負っていると思います。
特にFacebookのフィードで、画像はメディアの記事を持ってきているのに記事ドメインがNewsPicksで表示されてNewsPicksの記事であると誤解させていたり、画像がないとNewsPicksの画像が記事タイトルとセットで表示されたりするあたりは、グロースハック的な経緯の結果だと思いますが、かなり悪質な行為とみられても仕方が無い仕様なので、早期の改善は必須だと思います。
まぁ、この辺の話は、前述のユーザー会でもNewsPicks社長の梅田さんが改善を約束していたので、改善して頂くとして。
個人的に境さんの問題提起で気になるのは、結局境さんは、自分の記事が批判されたから、自分の記事を批判するようなサービスからはリンクするなと言っているようにしか聞こえないという点です。
まぁ、実を言うと私自身、はてなブックマークが開始されてしばらくしてから、はてなブックマークにあまりに厳しいコメントが並ぶことが多いので、はてなブックマークのコメントを見に行くのが怖くなった時代があります。
ただ、その話をブロガーであるモダンシンタックスの永沢さんに飲み会で話したら、その時に一喝された言葉が今でも忘れられません。それがこちら。
「そんなに批判が怖いなら、ブログなんてやめちまえ!」
今でも本当に良く覚えています。
そのあたりの背景は、このあたりに書いてありますが。
参考:批判されるのが嫌なんだったら、ツイッターやブログはやめて、Facebookに閉じた方が良い、という話。
要は、自分達のが情報発信が簡単になったのとどうように、他の人の情報発信も簡単になってるわけで。
自分は好き勝手に発言したいのに、他の人の批判は許せないというのは、やっぱり無理があるワガママだと思うんですよね。
結局、この辺の議論って2ちゃんねる、はてなブックマーク、Twitter、NewsPicks、と記事に対するコメント系のサービスが出てくる度に巻き起こるわけですが、結局書いた記事が話題になれば、自分の友人以外のどこかの知らない人に記事が読まれるわけで、自分のことを知りもしない人に死ぬほど人格否定な厳しいコメントくらったりするわけです。
でも、それでも少なくともその人達も記事に大なり小なり目を通してくれているわけで、批判という形でフィードバックをくれているわけで、全く誰にも記事を読まれないよりは、読まれる方がマシという考え方もあると思います。
そもそも、境さんが名指しで指摘してる三上さんの発言を見ましたが、正直、個人的にはたいして誹謗中傷の発言だとは思いませんでした。
参考:(2) 「子育て」にきびしい国は、みんなが貧しくなる国だ
だって、ZARDとか坂井泉水を引き合いにだして比較されてるんですよね?全然良いじゃないですか。
これ坂井と境をかけてるんですよね、きっと。ちょっと上手いじゃないですか。
私なんか「こいつはつまらん」とか、「死ねば良いのに」とか、「顔が無駄に長い」とか、「倒産しろ」とか、はるかにひどい言葉を投げかけられることも珍しくありませんよ。
こんなのかわいいもんじゃないですか。
まぁ、本当に精神的に追い込まれるほどの誹謗中傷や殺害予告なら、それはそれで問題だと思いますが、その一つ一つのコメント自体の訴訟や反論を議論すべきで、それを元にプラットフォームからのリンクを拒否するのはちょっと違うんじゃないかなと思ったりします。
大昔に大手新聞社がリンク禁止というポリシーを貫いていてネットユーザーから不評を買っていた時代がありましたが、境さんのリクエストってこれとほとんど変わりませんよね。
実際問題、私たちがYahooニュースとかに書いている記事を見た企業の人が、こんなやつらにYahooで書かせるなとか、Yahooからはリンクするなって言ってきたら嫌じゃないですか。
でも、境さんが今回やってることって、構造的に同じだと思うんですよね。
NewsPicksに、自分に批判コメントするやつ排除しろとか、リンクさせるなとかいってるわけですよ。
そもそも転載禁止の有料媒体に記事を書いているならとにかく、RSSを配信している通常の無料ウェブメディアの記事をクリッピングされて批判されたからといって、サービス自体からのリンクを拒否するのは極端だと思うわけです。
しかも記事寄稿の場合、拒否するかどうかを決めるのは我々ではなく記事を掲載するメディア側の判断だと思いますし。
批判が増えてもそれによって記事を読んでくれる人が増えるなら、ある意味ありがたい構造だと思うんですよね。
あえて「私たち」と言いますが、私たちのようにブログとかソーシャルメディアの普及のお陰で、個人でも情報発信が手軽にできるようになり、Yahooニュースに記事が寄稿できたり、新聞社のニュースサイトに記事を寄稿できるようになった人間が、他の人がネットを使って発言するのを制限しようとするのって、個人的にはちょっとズルいと思うわけです。
そりゃ弁護士に聞けば、この手のサービスはグレーっていう話になると思うんですけど、そんなこと言ったらNaverまとめにしても、はてなブックマークにしても、Airbnbにしても、Uberにしても、Googleにしてもグレーな部分が多々あるわけで。
境さんみたいに、テレビとネットの新しいイノベーションを模索している側の人が、自分への批判があるからって、新しいウェブサービスの模索を頭ごなしに否定するのは良くない気がします。
大学の心理学の先生が言ってましたが、「愛」の反対は「憎しみ」ではなく「無視」だそうです。
批判者や批判者が使ってるサービスがムカつくなら、単純に無視をするのが良いのではないかと思います。
まぁ、そうは言いつつも、前半に書いたように現在のNewsPicksの仕様自体が、最近グロースハック的に振りすぎて、一線を越えている面もあり印象が悪いところがあるのは事実で。
丁度タイムリーに、私の所にメディアの記者の方から、私がNewsPicks経由でFacebookに記事をポストすると、画像は元記事のままなのにドメインがNewsPicksで投稿されて、まるでNewsPicksが作成した記事のように見えて紛らわしいから直接ポストしてくれないか、とお願いのメールが来たぐらいですので。
その辺をユーザーイベントでも指摘されていたNewsPicks側が今後どうしていくのか、というのは個人的にも非常に興味のあるところで張るのですし。
長いこと2ちゃんねるによる匿名による誹謗中傷が問題だから、どうやって日本のネット文化をもっと実名や顕名に変えていくべきかという議論をしていたはずなのに、いざ実名SNSの時代が来てみたら、実は実名による誹謗中傷の方が相手の顔や肩書きが見えるだけに、匿名での批判よりよっぽど腹が立つ、という現実を今回の議論で思い知らされて、複雑な気持ちになったりするわけですが。
長くなりましたので今日の所はこの辺で。