「共感」で熊本とつなぐ。東日本大震災から5年を過ぎた石巻で津田大介が語ったこと
東日本大震災から5年が経過し、関心が低下している宮城県石巻市の情報をどう発信するかージャーナリストの津田大介さんが28日、ヤフー石巻復興ベースで講演し、インターネットで話題になる要素は、「共感」「リアルタイム」「新規性」で、石巻の事例紹介は震災を経験した同士の共感につながるのではないか、と語りかけました。20人の参加者は講演後のワークショップで、熊本に石巻が出来ること、をテーマにアイデアを出し合いました。
メディアの特性を考えた発信を
津田さんの講演は「多メディア時代の“伝わる”情報発信術」とのタイトルで行われました。
新聞、テレビ、ソーシャルメディアなど、多数のメディアが登場するなかで、メディアの特性を理解した上で情報発信していく必要性を指摘しました。
東日本大震災が発生した2011年に比べ、熊本地震ではスマートフォンとソーシャルメディアの利用が大きく伸びているという数字を紹介。「情報インフラとして重要。これからも伸びていくのではれば、始めるのにコストゼロのソーシャルメディアを使って情報発信しない手はない」と述べました。
- スマートフォン1000万人(2011年)から7000万人(2015年)
- フェイスブックの月間アクティブ数は2400万人(2015年)
- ツイッターは670万人(2011年)から3500万人(2015年)
- ラインは2200万人(2015年、LINEは震災時には存在せず)
熊本地震では新聞や行政も活用
津田さんは熊本地震での2つの事例を紹介しました。
ひとつは、朝日新聞社会部が熊本県内の避難所情報をネットに掲載し、ツイッターで「どなたか地図に落としませんか?」と呼び掛けたもの。
- 熊本県内の避難所一覧(グーグルマップへのマッピング)
もうひとつは、熊本市の大西一史市長が水道の漏水箇所を見つけるために、ツイッターで「道路や橋に水が噴き出したり染み出した箇所を見つけたら出来れば写真を撮り住所をリプして下さい。」と呼び掛けたもの。
「朝日新聞の事例は、有志が呼びかけに応え、避難所マップが完成したケースは、情報を確認する新聞社とネットユーザーが効果的な連携だった。行政と市民がネットを通じて効果的に役割分担し、メディアの特性が分かった上で発信できる首長がでてきた。東日本大震災に比べて、発信する側のリテラシーが向上している」と解説しました。
ありきたりじゃない情報ないと全国に届かない
ワークショップでは参加者から「石巻方言のラジオ体操がつくられて人気になった。熊本の人と一緒にアップする」「ボランティアを受け入れることへの不快感をなくす」「長期の避難所運営のコツ。外国人へのサポート」「被災を経験したママさんのお悩み相談を」といった、熊本に石巻とをつなげるアイデアが出ました。
津田さんは「ボランティアを受け入れる側が不快になるといったテーマは、マスメディアに掲載されにくいのでネットに向いている。ただ、批判も来ることが予想されるので、説得力を得るために一つではなく、できるだけ多くの事例を集めたほうがいい」などとアドバイス。「三陸河北新報や石巻日日新聞にとっては、石巻の情報は重要だが、東京にとっては重要ではない。ありきたりなものは取り上げられない」と指摘していました。
注:講演は、筆者が代表を務める日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)が開催する「ジャーナリストキャンプ2016石巻」の一環で行われました。キャンプの記事はヤフーニュースに掲載されます。