北海道新幹線、渡島トンネルボーリング中止で遠のく札幌延伸 沿線首長は「近視眼的な主張」繰り返す
羊蹄トンネルの建設工事の遅れにより数年単位での札幌延伸開業の遅れ見込まれている北海道新幹線。現在、新函館北斗―新八雲間で建設工事が進められている渡島トンネルについても、地質を調べるための長尺ボーリングで機材が折れたことにより調査が中止したことが明らかになった。
渡島トンネルは、新函館北斗駅を札幌方面に向かってすぐのところに坑口のある全長32.7kmの長大トンネルだ。このトンネルが貫通するエリアには複雑な地質が続き、難工事が続いていることから、ボーリング調査の結果を踏まえて、工期短縮策などを検討し新たな開業時期を今冬以降に示す計画だった。しかし、このボーリング調査が中断したことにより、新たな開業時期を示すことさえ難しくなった。
北海道新聞が報じたところによると、こうした事態を受け新八雲駅ができる八雲町の岩村克詔町長は「開業の時期を示せないまでも、せめて目指す年だけでも言って欲しい。そうしなければまちづくりが進まない」とご立腹の様子だ。岩村町長は、この5月に北海道新幹線の建設主体である鉄道・運輸機構の藤田理事長が、謝罪と工事の状況を説明する際に北海道を訪問した際にも「なんだ、日本の土木技術も大したことないな」と発言し物議をかもした。
北海道新幹線の倶知安駅が建設中の倶知安町の文字町長も、北海道新幹線の建設以外には興味がないと見え、バスドライバーもいない中でまちづくりに支障が出るという理由から2025年での並行在来線の廃止を主張するなど、広域的な経済振興策を欠いた近視眼的な発言を繰り返している。
北海道新幹線の札幌延伸を巡っては、新幹線新駅のできる自治体首長は、交付金などを活用したまちづくりの再開発事業以外には興味がなく、新幹線開業を契機として沿線地域を訪れる人をいかに増やし経済を活性化していくのかという当たり前の議論がいまだ見られないことには、北海道の行政の質の低さを感じざるを得ない。
(了)