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「Never Stop」掲げていた東証、全銘柄の終日売買停止の影響は?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 東京証券取引所によるとシステム障害により、立会内市場では全銘柄について約定は成立しておらず、売買停止までの間に受け付けた注文は、すべて明日以降の売買には引き継がれない。ToSTNet取引に関しては、午前8時56分までに受け付けた注文は、約定が成立しているという(ロイター)。

 ToSTNet取引とは大口取引やバスケット取引などに対応できるようにするために設けられたもので、こちらの一部は約定しているが、そのほかの約定は成立していない。

 東証でシステム障害により全銘柄の売買が停止されるのは、2005年11月1日に株式の全銘柄の取引が約3時間にわたって止まって以来となる。また、売買が終日停止されるのは、1999年の取引のシステム化以降初めてという異例の事態となった。

 海外ではニュージーランドでは今年8月に取引所がサイバー攻撃を受け、1週間にわたって取引停止となるという事例もあった。

 ニューヨーク証券取引所、ロンドン証券取引所などでもシステム障害などにより、取引が中断されるような事態も発生していた。

 今回のようなシステム障害は起こりうる。そのためにバックアップ体制もしっかり講じられていたはずであるが、それが自動で機能しないという事態となった。朝方、すでに注文を受け付けてしまったことで、そのデータも消えてしまうことになるため、再立ち上げができずに、終日停止を決定したようである。

 日銀は、東京証券取引所が機器故障で全銘柄の売買を終日、停止したことについて、日銀と金融機関との間の資金のやりとりに影響は出ていないとコメントしていた。

 投資信託協会は1日、緊急対策委員会を開き、主に日本株に投資する投信について、同日分の設定・解約を停止する方針を決めた。基準価格に対する影響を重視し、純資産総額に対して日本株を2割以上組み入れている投信について設定・解約を停止する(1日日経新聞電子版)。

 東京証券取引所は1日、障害が起きた機器からフェイルオーバーと呼ばれるバックアップへの切り替えが正常に行われなかったため、相場情報の配信ができなくなったと発表した。システム障害の原因となったハードウエアを交換し、2日以降は正常な売買ができるよう対応しているという。

 今回の東証での全銘柄の取引の終日停止は、本来あったはずの売買の機会損失ともなる。10月1日は下半期のスタートともなり、重要な経済指標である日銀短観の発表もあった。前日には注目の米大統領候補の討論会もあった。

 投資家などにも当然ながら影響を与え、それを取り次いだり、自己売買を行っている証券会社などにも影響を与えることになる。さらに上場している企業にも影響は出よう。1日は広島市のひろぎんホールディングスなど3社が新規に上場する予定になっていた。

 証券取引のシステムも金融のインフラとして非常に重要であり、東証は2015年にシステムを刷新した際には、「Never Stop!(絶対に止まらない)」を旗印に掲げていたが、今回それがストップしてしまった。

 政府や東京都は「国際金融センター構想」を掲げている。資産運用業やフィンテックを中心に国内外の金融関係プレーヤーの東京市場参入を促進するというものであるが、その中心的な役割となっている東証のシステムだけに、今回の事例には海外の金融機関も注意して見ていると思われる。

 ただし、システム障害はどうしても避けられない面もある。このため、今回のようなことが起きた際に、どのように対処したのかも注目されるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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