アインシュタインが呼んだ「人類最大の発明」~数学センスで万事解決(第6回)~
1年ぶりの「数学センスで万事解決」(連載)です。今回は最近テレビで見た景気と金利の関係です。詳しい話は経済解説に譲りますが、一般に景気が悪いと預金金利が下がり、景気が良いと預金金利が上がるということでした。現在は景気が必ずしも良くないことから、低金利であり、大手銀行の定期金利はほぼ0.002%です。バブルと呼ばれた好景気の1990年には6%以上の高金利でした。当時3,000万円の元手があれば、利子だけで食べていけると言われたものです。100万円預ければ、年6万円づつ利子が付くのです。現在の定期であれば、100万円預けても20円しか利子が付きません。庶民にとって銀行は単なるお金の保管庫になってしまいました。
年利6%の時代、100万円を銀行の定期預金に預ければ12年で倍の200万円になると言っていました。現在の金利であれば、200万円にするためには35,000年かかります。ここで質問ですが、年に6万円の利子が付くのであれば、倍の100万円の利子を得るためには100万円を6万円で割って、17年かかるのではないかと思う人もいるのではないでしょうか。いえ、やはり12年で倍の200万円、利子が100万円付くのです。その理由を一口に言えば、利子にも利子が付くということです。年利6%であれば、100万円を1年預ければ、106万円になります。2年預けると112万円ではなく、106万円に6%に利子がついて、112万3,600円になります。利子が利子を生むのです。
バブルの時代、年利10%の金融商品も珍しくなく、大手銀行が「リッチョー」「ワリコー」「ビッグ」というような名前で売り出していました。もし年利10%で100万円を孫の孫の世代の100年間貯金したとすれば、いくらになるでしょうか。何と138億円になるのです。100年待たずとも50年後には1億円を超えています。夢が見れる時代だったと言えるでしょう。
この利子が利子を生む仕組みを複利計算と呼びます。相対性理論のアインシュタインが「人類最大の発明」あるいは「宇宙最大の力」と呼んだ(諸説あり)、この複利ですが、逆に借金が借金を生む仕組みにもなってしまいます。年利10%で100万円を100年借りたとすれば、上述の138億円の借金になってしまうのです。
数学が苦手な人が住宅ローンの返済に行き詰まって物件を差し押さえられる確率は、数学が得意な人の5倍に上る――。米国などの研究チームが実施した調査でそんな実態が浮き彫りになった。
以前、上述のような記事が話題になりました。住宅ローンの仕組みは米国も日本も同じです。金利が低いからと言って、借りたお金だけを返すのではなく、何十年という長期間になれば、借金にも金利が付き、場合によっては借りたお金の倍額以上を返済することになります。庶民にとって住宅ローンは一生のうちでも最大の買い物であり、借金にもつながります。現在は低金利の時代ですが、ゆくゆくは金利が上がって行くことでしょう。変動金利、固定金利等の選択、そして借り換えも含めて「複利」を正しく判断する力が必要です。