2月1日、新たな一歩を踏み出した「もと小虎」―若竹竜士投手―
若竹竜士投手(26)は、兵庫・育英高校から2005年の高校生ドラフト3位で阪神に入団。同期には鶴投手と大和選手がいます。独特のフォームから投じる、直球と80キロ台のスローカーブが印象的な右腕。2年目の2007年に1軍昇格し、7月5日のヤクルト戦(甲子園)で初登板初先発しました。2回に死球と内野安打などで1死二、三塁として福川選手の3ランを浴び、負け投手となっています。ただし5回まで投げて2安打のみ。つまり他の4イニングは完ぺきに抑えたわけです。
1軍初登板から1年後の2008年7月6日、ウエスタン中日戦(甲子園)でノーヒットノーラン達成!これは小虎ファンならずとも記憶に新しいところですね。でも、この年と2009年は1軍登板なし。その後の2年間は1軍で6試合投げただけで、2012年4月末に今成選手との交換トレードにより日本ハムへ移籍。1軍では2試合に登板。秋の優勝パレードが思い出に残ったと話しています。しかし昨年は1軍で投げることなく、オフに戦力外通告。1軍通算成績は10試合で0勝1敗、防御率6.75でした。
「まだ野球がやりたかったから」
昨年11月10日に静岡草薙球場で行われた12球団合同トライアウトの際は話せず、その後のことが気になっていたんですけど、どうやら社会人チームに入ったと聞き電話をしてみた次第です。「ちょうど、きょう(3日)が初出勤でした!」と元気な声が返ってきました。兵庫県の三菱重工神戸に2月1日付で入社。嘱託契約ですが、いずれは正社員になるべく仕事と野球に励みます。
話があったのは昨年12月初旬。1回目だけ受けたトライアウトの後、連絡はなく「何かしようと思っても野球しかしていなくて、社会のことを何も知らないから…いろいろと調べていたところ」だったそうです。高校時代にお世話になった方が三菱重工神戸で時おりピッチングコーチをされていて、声をかけてくださったとか。若竹投手はすぐに返事をしました。「まだ野球をやりたかったから」
実は三菱重工神戸がプロ野球経験者を採用するのは初めてのこと。「それについての不安はありません。でも野球だけをやっていればいいというわけではないので」。なるほど、そこが今までとは大きく違いますね。2月1日付での入社ですが、土日だったため3日に初めて会社へ行ったばかり。初日は「コンプライアンスとかの説明で終った」そうで、業務はこれから。なお野球部としての練習は年明けから既にやっています。
朝8時に出社して昼まで仕事、午後2時前から6時か7時まで練習というスケジュール。「毎日、スーツにネクタイですよ。土日は練習だけだからジャージでいいみたい(笑い)」。ちなみに野球部のグラウンドは明石市二見町にあり、みんなマイカーで移動するそうです。結構な距離でしょう?気をつけてください。それと、今まではスポーツメーカーから用具提供がありましたが、これからはすべて自腹。「僕らピッチャーはグラブとスパイクさえあれば大丈夫だけど、バッターは大変かもしれませんね」と若竹投手。そうはいってもメンテナンスなども自分でやるわけで、今まで通りとはいかないでしょう。
2年目の巨人戦が一番の思い出
タテジマのユニホームを着た約6年3か月で一番覚えているのは、1軍初登板ではなく「その次に投げたジャイアンツ戦」だと言います。「先発して、1回ちょっとで代わりましたけど」。2007年7月11日の東京ドーム、1回に二岡選手にタイムリーで1点先取されますが、2回に味方が5点を奪い大逆転!しかし、その裏に1死で江草投手と交代したもの。桜井選手が1軍初ホームランを打った試合でもありますね。またファームで思い出に残っているのは、やはりノーヒットノーランだと言っていました。
8年間、2月はキャンプという生活を送ってきたから違和感があるのでは?「そうですねえ。寂しいって気持ちも若干あるけど、今はそんなに。ああキャンプやなーとテレビのニュースを見て思う程度です」。まず新しい環境に慣れなくちゃいけませんものね。今まで遠征や契約更改の時くらいしか着用しなかったであろう、スーツとネクタイにも。
鶴と大和、今成には頑張ってほしい
同期の2人に「1軍でバリバリやってもらわないと。大和はレギュラーで、鶴もローテーションに入って。鶴は“チャンス、チャンス”って新聞に書いてあるでしょ(笑い)。先発ローテの枠が3つも空いているんだったら、頑張ってほしい」とエールを送りました。そして「あの活躍を見ていたら、今成にとってはよかったんじゃないかと思いますよ」と、交換トレードの相手にも言葉は及びます。今成選手も誕生日が4日違いの同い年。同級生は気になる?「そうですね、やっぱり」
ところで鶴投手も大和選手も、よき伴侶と巡り合ったようですが。「2人とも結婚しましたね!僕はまだ…。予定?ありません」。明るくかわされてしまいました。その前に“まだやりたかった野球”と、目いっぱい取り組みます。あのスローカーブで強打者が三振するところを、もっともっと見たい。
三菱重工神戸といえば、阪神ファームにとって天敵というくらい苦手なチームで、若竹投手も「そうでしたねえ」と思い出し笑い。ほんと、よく負けていました。「ことしも早速、対戦するみたいですよ」とのこと。その時はぜひ投げてください。「はい。ギャフンと言わせるように!」。おっと、なかなか鋭いジャブが来ました。覚悟しておきます。