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がん患者さんへの影響は 新型コロナウイルス感染症が長引くことも想定した対策を 医師の視点

中山祐次郎外科医師・医学博士・作家
すでに「不要不急の手術」は延期されている(写真:アフロ)

新型コロナウイルス感染症の拡大で、がん患者さんへの影響が出始めている。筆者は日々大腸がんの診療をする外科医師であり、患者さんへの影響を実感している。

そこで、がん専門医の視点から、すでに起きている影響とこれから起きうることを挙げ、さらに対策についても提案した。

いずれも短期(2ヶ月以内程度)であればそれほど大きな影響はないが、長くなると影響が大きくなる可能性があるため、早めの対策が必要である。

3つの遅れ

1, 発見の遅れ

胃がんや大腸がんは、胃カメラや大腸カメラをしなければ診断できないことが多い。しかし、全国的に胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡検査を行わない病院が増えている。これにより、「がんである」という診断の遅れが発生している可能性がある。

また、病院での感染を心配するあまり、体調が悪いのに病院の「受診控え」をする人もいるだろう。

もちろん病院への受診は感染のリスクを伴うが、「これまでと明らかに異なる体調変化」がある人は無理な我慢をしない方が良い。心配であれば、かかりつけ病院へ電話し受診すべきかどうかを相談してみることをおすすめする。

2, 手術の遅れ

東京や大阪などの流行地域では、すでにがん患者さんであっても手術が延期されている。都内では複数の大学病院と国立がん研究センターなどの大きな病院が新規患者さんの受け入れを停止しているが、年間数千件のがん手術が停止する目算となるため、今後周辺の病院へ手術負担が発生してくる可能性がある。

患者さんにしてみればたまったものではない。胃がん・大腸がんなどは2, 3ヶ月であれば予後(よご、どれくらいの期間生きられるか)への影響はそれほどないと考えられるが、延期が長期になれば影響が出るだろう。なお、影響の大きさはがんの種類によって異なる。

3, 抗がん剤の遅れ

手術と同じように、抗がん剤の治療も一時延期となっているケースがある。これにより予後への影響が出る可能性はある。

筆者の経験でも、流行地域にいて病院の受診ができず、抗がん剤治療が受けられないという患者さんがいる。

以上、感染症の二次的な影響として、これらが考えられる。

対策は

前述したように、短期間であれば大きな影響はない。しかし問題は3ヶ月を超えるような期間になった場合だ。

対策としてまず考えられるのは、

・非流行地域へ患者さんが移動し、検査や治療を受けること

である。が、非流行地域へ感染が拡大する危険性があり、適切ではない。

非流行の国へ行くという手もあるが、現実的には受け入れてもらえないだろう。

となれば、新型コロナウイルスの感染リスクを持ちながら、検査や手術・抗がん剤治療を続けるしかない。

そのためには

・病院の中でレッドゾーン(感染症エリア)とそうでないエリアをしっかり分け、がん患者さんの検査や治療を継続する

という必要が出てくるだろう。

新型コロナウイルス感染症蔓延が中長期化するに当たり、このような対策が必要になると考えられる。

外科医師・医学博士・作家

外科医・作家。湘南医療大学保健医療学部臨床教授。公衆衛生学修士、医学博士。1980年生。聖光学院中・高卒後2浪を経て、鹿児島大学医学部卒。都立駒込病院で研修後、大腸外科医師として計10年勤務。2017年2月から福島県高野病院院長、総合南東北病院外科医長、2021年10月から神奈川県茅ヶ崎市の湘南東部総合病院で手術の日々を送る。資格は消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医など。モットーは「いつ死んでも後悔するように生きる」。著書は「医者の本音」、小説「泣くな研修医」シリーズなど。Yahoo!ニュース個人では計4回のMost Valuable Article賞を受賞。

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