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Aぇ!、Number_i、Da-iCE、ベビモン、JO1…神回だった「2024年5月17日のMステ」

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:イメージマート)

「2024年5月17日のMステ」は新たな神回として番組史に刻まれることになるだろう。

同日21時より放送された音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)は、放送開始直後からその番組タイトルや出演者の名前がXのトレンドの上位に次々とランクイン。出演したのは、Aぇ!group、JO1、Da-iCE、Number_i、BABYMONSTER、マカロニえんぴつの6組だった。

Aぇ!groupのCDデビューを拍手で祝福したNumber_i

5月10日に同回の出演者が発表されたとき、各界隈でさまざまなざわつきが起きた。

まず話題となったのはやはり、Number_iとAぇ!groupの共演だろう。細かく説明をする必要はないだろうが、旧ジャニーズ事務所を退所して滝沢秀明が設立したTOBEへ合流したメンバーで構成されるNumber_iと、旧ジャニーズ事務所の流れをくむSTARTO ENTERTAINMENTに所属するAぇ!groupが「Mステ」で顔を合わせるような出来事は、1年前の今頃では考えられなかったことだ。

特に2組の共演が賛否となったのは、5月15日にCDデビューしたばかりのAぇ!groupにとって初の「Mステ」単独出演という晴れ舞台に、「かつての仲間たちが居合わせるのはどうなのか」という風な声である。旧ジャニーズ問題以降、音楽番組などではさまざまな共演のあり方が増えてきた。ただ、今回のような共演を手放しでは喜べないファンはやはりいる。そしてその素直な心情は決して否定されるものではない。

そんな複雑に入りまじる感情をやわらげてくれたのが、Number_iの平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太の3人である。

オープニングでAぇ!groupのCDデビューのことがあらためてアナウンスされたとき、Number_iが拍手でそれを祝福する様子が映し出された。ファンの間、そして事務所の間では今でもなんらかのシコリは残っているかもしれない。ただそれは、アーティストが持つ音楽性やパフォーマンスとは別の話である。結成から約5年、山あり谷ありも経験しながらついにCDデビューにたどり着いたAぇ!groupのがんばりは当然評価されるべきであり、メジャーデビュー曲「《A》BEGINNING」も問答無用の良作である。そんなAぇ!groupにリスペクトを示したNumber_iの姿は実に清々しかった。

そういった点でも視聴者的には、番組冒頭から胸がいっぱいになるような瞬間があった。

「Mステ」念願出演のDa-iCE、韓国語のオリジナルバージョンを披露したBABYMONSTER

「2024年5月17日のMステ」では、Da-iCEとBABYMONSTERの「Mステ」初出演(BABYMONSTERは日本のテレビ初登場)も注目を集めた。

Da-iCEは結成から13年で念願の「Mステ」となった。ただこれまでの実績は抜群で、楽曲のセールス面はもちろんのこと、日本レコード大賞なども受賞しており、“「Mステ」に呼ばれなかった”のが不思議なくらいだった。初の「Mステ」では演奏開始とともにメンバーが客席やPAブースなどからステージへ駆けつける演出を見せるなど、思う存分弾けた。そして披露したのが、TikTokを中心に爆発的ヒットを記録する「スターマイン」(2022年)と「I wonder」(2024年)。楽曲センス、ボーカル力、キャッチーな振付、すべてが高い質を誇る同グループのポテンシャルをしっかり見せつけた。前述したようにDa-iCEもまた、1年前の今頃は、「Mステ」に出演するためにはいろんなハードルを越える必要があったかもしれない。ただ、この日の「Mステ」でのパフォーマンスを見ればそこに出て然るべきグループであることは一目瞭然。それくらい良いライブだった。

そしてなんといってもベビモンことBABYMONSTERである。BIGBANG、BLACKPINKらを輩出したYG ENTERTAINMENTの新星で、早くも世界的な評価を獲得しているガールズグループだ。韓国グループが日本のテレビ番組に出演する際、演奏曲は「日本語バージョン」、もしくは「日本にちなんだ特別バージョン」が披露されることが多々あるが、BABYMONSTERは「SHEESH」(2024年)を堂々と韓国語のオリジナルバージョンで歌い切った。パフォーマンスからも「なにものにも媚びない」という強いムードが漂っており、日本のポップソングを取り扱う音楽番組ではなかなかお目にかかれない“いかついサウンド”が、“金曜夜9時台”に流れること自体、事件性があった。

現在の日韓を代表する2組のダンスボーカルグループが「Mステ」に初登場したのも、この日の神回化に拍車をかけた。

複雑な感情が入りまじった「2024年5月17日のMステ」、ただ「音楽のすばらしさ」がそこにあった

前述したように「2024年5月17日のMステ」は、各アーティストのファン的にもいろんな感情がまじりあうものだった。ただ、そういう複雑な気持ちや事情を晴らしてくれたのは、やはり「音楽のすばらしさ」である。

たとえばトップバッターで登場したJO1は、瞬く間に自分たちのダンスとボーカルの世界へと持っていった。腕力の強さを感じさせるパフォーマンスで、この日の「Mステ」の音楽的興奮度を高めた。「Love seeker」をテレビ初披露したが、明らかに気合が入っていることが分かり、この日の「Mステ」の熱量を引き上げた立役者といっても過言ではない。後続で出演するグループにも好影響を与えたのではないか。

Number_iは、聴き込めば聴き込むほど味わいが深まり、なおかつ間違いなく世界照準の音楽性を持つ「BON」を初披露。しかも楽曲のテーマは「盆栽」であると説明。それを聞いた司会のタモリがそのことについてもっと話を聞きたそうにしていたのが、なんともおもしろかった。なにより平野紫耀のプロデュース曲ということで、彼の才気が感じられる内容だった。

Da-iCEとBABYMONSTERもしっかりとインパクトを残し、この日の出演者で唯一のロックバンドだったマカロニえんぴつももちろん素晴らしい演奏だった(当記事のタイトル含めてマカロニえんぴつの話をほとんど省くことになったのが申し訳ないくらい、良いパフォーマンス)。

大トリのAぇ!groupは、企画コーナーで紹介されたさまざまなアーティストのライブのオープニング演出にちなみ、マイケル・ジャクソンがコンサートの際に登場から1分39秒間、微動だにしなかった様子を模した。Aぇ!groupのメンバーは全員、まったく動かずに一旦、CMをまたいだ。CM明けも動かず、そして満を持して記念すべきメジャーデビュー曲「《A》BEGINNING」を披露した。Aぇ!groupのそういった遊び心もまた「Mステ」への単独出演の喜びを大いに感じさせるもので、充実していたこの日のラインナップのラストを飾るにふさわしいパフォーマンスでもあった。

旧ジャニーズ問題が取り上げられた際、『ミュージックステーション』は「忖度番組」の一つとして挙げられていた。しかしそれから「Mステ」は、「音楽番組として見せるべきことはなんなのか」を純粋に追求し直したようにも思える。その一つの答えが、「2024年5月17日のMステ」に詰まっていたのではないか。つまり、「音楽」がわだかまりなどを越える瞬間がとらえられていたのだ。

それくらいこの日、出演した6組のパフォーマンスは見応えがあるものだった。「2024年5月17日のMステ」は長く語り継がれて良い内容だった。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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