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選手層の厚さが本物であることを証明した千葉ジェッツが、シーホース三河を圧倒しての2連覇達成

青木崇Basketball Writer
タフな三河相手に予想外の快勝で頂点に立った千葉ジェッツ(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

No Togashi? No problem.(富樫不在? 問題ないね)

 天皇杯2連覇を果たした千葉ジェッツが、ファイナル・ラウンド3試合で見せたプレーは、そんな言葉がビッタリ当てはまる。1月1日のアルバルック東京戦で、司令塔兼得点源でもある富樫勇樹が左大腿四頭筋挫傷で全治3〜4週間というケガで離脱。大野篤史コーチが「屈辱を味わった」と表現した東京戦の連敗もあり、チームの状態は下降気味だった。

 しかし、経験豊富なベテランでシュート力のある西村文男をスターターにして臨んだ天皇杯は、千葉の強みであるトランジションからの得点だけでなく、ハーフコート・オフェンスのボールムーブがより活発となる。その成果は、準々決勝の栃木ブレックス戦が19本、準決勝の京都ハンナリーズ戦が26本、決勝のシーホース三河戦が28本とアシスト数が増えていったことでも明らか。準決勝で11本、決勝で10本、この2試合の成功率が40%という3Pシュートは、活発なボールムーブの賜物であり、相手に強烈なダメージを与えていた。

「グループで戦うこと。チームとして一つ一つステップアップ」

 大野コーチがこう強調するように、千葉の選手たちは富樫不在の中でもやるべき仕事を遂行した。決勝の三河戦は、栃木戦や京都戦に比べると、ギャビン・エドワーズ、小野龍猛、西村の出場時間が多くなり、いずれも30分を超える。しかし、出場時間が減ったとしても、アキ・チェンバースは2Qの10分間で8点を奪い、西村をバックアップした阿部友和は10分未満であっても、3P1本を含む6点をマーク。「全員がエナジーを持ち、チームとして一体となってプレーすれば、我々を止めるのは難しい」と語ったチェンバースの8点は、千葉が前半で主導権を握るうえで大きな意味があった。今季途中で加わったレオ・ライオンズは、12本中2本成功とシュートが不調。それでも、アウトサイドでのディフェンスを得意としない三河の外国人選手に対し、ドライブから得点機会をクリエイトする。石井講祐はシューターとしての持ち味を発揮しきれなかったが、的確なパスで5アシストを記録していた。

 そんなバックアップたちのステップアップがあるからこそ、スターターもいい仕事ができる。ギャビン・エドワーズは20点、10リバウンドと攻防両面で存在感を示し、大会のMVPに選出。「多くの選手が古巣と対戦した際、ちょっとエキサイトしすぎていいプレーができないのを知っていた。自分は”古巣をチャンピオンシップで倒したい”と考えすぎないようにしていた」と振り返ったように、昨季まで在籍した三河相手であっても気負いすぎることがなかった。

 フロントラインでコンビを組むマイケル・パーカーも、22分強で15点、8リバウンドと堅実なプレーで貢献。富樫に代わって先発PGとなった西村は、10点、9アシストで司令塔として素晴らしい仕事をした。小野は3Q序盤で比江島慎の3Pで2点差に詰め寄られた直後、右ウイングから入れ返すなど、4本の3Pを含む18点をマーク。千葉が怒涛の20連続得点で70対48とリードを広げるきっかけになっただけでなく、三河の追撃を完全に断ち切ったことでも、小野が入れ返した3Pはビッグショットだった。

 三河は昨季のB1セミファイナルで、選手層の薄さが致命傷となって栃木に敗戦。オフにレバンガ北海道の得点源だった西川貴之、元日本代表のシューター松井啓十郎と契約したことで、ベンチ陣の底上げができると思われた。しかし、千葉との決勝は2人の出場時間がトータルで16分2秒しかなく、得点も西川の2点のみ。得点機会をクリエイトできる桜木ジェイアールのファウルトラブルが、三河のゲームプランを大きく狂わせたのはまちがいない。

 アイザック・バッツとダニエル・オルトンが同時にプレーする時間帯が増えたことで、三河はライオンズやパーカーへのディフェンス対応で苦戦。西川と松井が機能しなければ、比江島と金丸晃輔への負荷は当然のように増していく。千葉戦における鈴木貴美一コーチの采配は、新戦力とベンチ陣をまだ信頼し切れていないと指摘されても仕方ないものだった。桜木がベンチの時間帯、もしくは機能しなくなった試合になると、チーム力が落ちてしまうという三河の課題は、この天皇杯でも露呈される結果となった。

「短所をみんなで補いながら、長所を出せるようにしている」という言葉が象徴するように、千葉の大野コーチは現有戦力を信頼し、どんな状況でも使えるようなチームを構築している。選手層の厚さが本物であることは、天皇杯決勝というビッグゲームで改めて証明。B1制覇という大きなチャレンジに向けて、千葉ジェッツは大きな自信を手にした。

 

 

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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