Yahoo!ニュース

この地区の「全5チームが勝率.500以上」はどこまで続く!? 貯金ありでも地区最下位

宇根夏樹ベースボール・ライター
ヘラルド・ペルドモ(左)とアレック・トーマス May 8, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 アリゾナ・ダイヤモンドバックスは、開幕から3試合を終えて1勝2敗となって以来、1ヵ月近く借金を背負っていた。けれども、5月4日に13勝13敗として借金を完済した後は、5月6日~8日に○●○なので、勝率.500以上を保っている。現時点では、貯金1の15勝14敗だ。

 にもかかわらず、ダイヤモンドバックスは、依然として、ナ・リーグ西地区の最下位に位置する。

 この地区の5チームは、いずれも勝率.500以上を記録している。しかも、他4チームの勝率は、ダイヤモンドバックスよりも高い。5月8日の時点では、ダイヤモンドバックスが勝率.517、他はすべて勝率.571以上だ。ちなみに、ナ・リーグ東地区と中地区の計10チーム中7チームは、ダイヤモンドバックスの勝率を下回り、負け越している。

筆者差雨声
筆者差雨声

 これは、シーズン序盤に限ったことではない。勝率.500以上でも地区最下位、すなわち、地区の全チームが勝率.500以上でシーズンを終える可能性は、ゼロではない。

 例えば、こんなケースがあり得る。

 ダイヤモンドバックスは、同じ地区の4チーム、ロサンゼルス・ドジャース、サンディエゴ・パドレス、コロラド・ロッキーズ、サンフランシスコ・ジャイアンツと19試合ずつを行う。それぞれ、10勝9敗、10勝9敗、9勝10敗、9勝10敗の場合、計76試合で38勝38敗だ。さらに、ナ・リーグ東地区と中地区にア・リーグのチームと対戦する計86試合(162試合-76試合=86試合)が43勝43敗なら、シーズン全体では81勝81敗、勝率は.500ちょうどになる。ナ・リーグ西地区の他4チームが、ダイヤモンドバックスと同じく、同地区のチームに対し、10勝9敗、10勝9敗、9勝10敗、9勝10敗の計38勝38敗を記録し、あとの86試合で勝ち越せば、勝率.500のダイヤモンドバックスは地区最下位に終わる。

 実際、2005年のナ・リーグ東地区では、5チームすべてが勝率.500以上を記録した。アトランタ・ブレーブスが90勝72敗(勝率.556)、フィラデルフィア・フィリーズが88勝74敗(勝率.543)、フロリダ・マーリンズとニューヨーク・メッツがともに83勝79敗(勝率.512)、ワシントン・ナショナルズは81勝81敗(勝率.500)だ。

 1リーグ2地区だった1991年には、ア・リーグ西地区の全7チームが勝率.500以上を記録している。こちらは、地区最下位のカリフォルニア・エンジェルスが、81勝81敗(勝率.500)だった。

 一方、1994年のア・リーグ西地区は、全4チームが勝率.500に届かなかった(当時は、ア・リーグもナ・リーグも、東地区と中地区が各5チーム、西地区は4チーム)。テキサス・レンジャーズが52勝62敗(勝率.456)、オークランド・アスレティックスが51勝63敗(勝率.447)、シアトル・マリナーズが49勝63敗(勝率.438)、エンジェルスは47勝68敗(勝率.409)だ。

 1994年のレギュラーシーズンは、ストライキにより、途中で打ち切られた(ポストシーズンも開催されなかった)。最後まで行われていれば、どうなっていたかはわからない。もっとも、地区首位のレンジャーズですら、打ち切りの時点で借金10を抱えていた。ちなみに、ア・リーグ東地区と中地区の最下位に位置するチームの勝率は、どちらも.461。レンジャーズよりも高かった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事