「自分より会社を優先する」人を正社員にするべきだ
●今朝の100円ニュース:有期雇用期限「5年を10年に」(朝日新聞)
大学を卒業して13年が経つ。年齢が近い友人たちと話していると、挨拶代わりのように転職の報告をされたりする。すでに4社目だったりするのでこちらも驚かない。新卒で入った会社で働き続けている人のほうがむしろ少数派で、よほど居心地のいい会社なのかと興味がわく。
朝日新聞によると、管義偉官房長官が都内で講演し、契約社員が正社員のような無期限の契約に変われるまでの労働期間を現行の5年から10年へと延長する考えだという。入社5年目に「正社員」もしくは「雇い止め」という審判を下されることがなくなり、有期雇用のまま働き続けたい&働かせ続けたい労働者と企業にはメリットがある。
しかし、終身雇用であるはずの正社員でも、会社を辞めたくなったら自由に辞めることができる。実際、10年どころか5年も待たずに辞めていくのだ(僕は新卒で入った会社をわずか1年で逃げ出した)。契約が有期か無期かは企業側の問題であって、「就社」意識が薄い労働者側にはあまり関係がない。
関係があるとしたら、正社員と契約社員の業務内容の違いである。といっても、現場レベルでは正社員よりもはるかに質の高い仕事をしている契約社員も多く、管理業務を任されている場合も少なくない。
唯一の違いは、契約社員には異動や転勤がないことぐらいだろう。東京本社の営業部に入った契約社員が、大阪支社の経理部に異動になったというケースを聞いたことがない。自分はどの地域で暮らしてどんな仕事でキャリアを重ねていきたいのかがはっきりしている人は契約社員向きで、入社した会社が大好きで組織のためなら異動や転勤も厭わない(という建前を守れる)人が正社員向きと言える。正社員が待遇面で様々な恩恵を得られるのは、「自分の好き嫌いよりも組織の維持・発展を優先する」ことを選んだご褒美なのだ。
金融機関などでは転勤のない「エリア総合職」の正社員も存在する。そのほとんどがかつての「一般職」であり、男性は皆無に等しい。
この前提を活用して、正社員を駒のようにどんどん転勤させる会社や官庁も少なくない。移動生活を楽しめる家族であれば幸いだが、そうでなければ生活基盤を崩される。転勤の頻度が多かったり海外も含めて転勤地の距離が遠かったりする会社の正社員は、離婚など家庭不和率も高まる気がする。契約社員のままで働きたい人がいて当然だ。
契約期間の有無で「正社員か否か」を決めるのは現実に合わない。経営トップが一人ひとりの希望や能力、家族状況を見極めて「適材適所」するのが理想だが、それが無理なのであれば「この人は自分と会社のどちらを優先しているか」で組織人としての待遇を決めるべきだ。