100年ぶりによみがえった漱石の手はしっとりしていた
おそらく日本でもっとも有名な小説家・夏目漱石が亡くなって100年。いまも多くのファンをもつ明治の文豪が「アンドロイド」としてよみがえった。
漱石がかつて通った私塾を源流とする二松学舎大学が、創立140周年の記念事業として企画。アンドロイド研究の第一人者として知られる大阪大学大学院の石黒浩教授とタッグを組み、漱石のデスマスクなどの資料を所蔵する朝日新聞社の協力を得て、その姿を現代に復活させた。
漱石アンドロイドについては各メディアが報じているので、詳細はそれらの記事や二松学舎大学の特設サイトを見てほしい。
・漱石アンドロイドお披露目 孫の声で「夢十夜」を朗読(朝日新聞デジタル)
◇「目を合わせてくれて光栄です」
完成したアンドロイドは12月10日、東京の有楽町朝日ホールのギャラリーで、初めて一般公開された。朝日新聞社やフェリス女学院大学などが同ホールで開催した「夏目漱石 国際シンポジウム」に合わせて、お披露目されたのだ。
人々はスマホで写真を撮ったり、手を振ったりしていたが、ほとんどの人が満足そうな様子だった。漱石アンドロイドと握手をして「しっとりしている!」と驚く女性もいた。
ただ、実際に聞いてみると、具体的な感想はそれぞれ異なっていた。
夏目漱石の大ファンだという80代の女性は「私のところに目を合わせてくれた。光栄ですよ」と興奮した様子で語り、「ますます大好きになった」と話していた。
若いときに漱石の作品を読んで救われたという70代の女性も「ロボットという感じはしない。また会いたくなってしまう。(漱石は)英語の先生をしていたから、今度は英語の発音を聞いてみたい」と語っていた。
一方、若い世代の反応はもう少し冷静だった。テレビのニュースで知って来場したという20代の女性は「声と口の動きがあっていないので、違和感を感じた。腹話術と同じ感じ」と印象を語る。
その隣にいた同じく20代の男性は「今後、AIとかが入ってきたら、もっと人間っぽくなるんだろうと思う。まだ不完全さはあるけど、今後どうなっていくんだろうというワクワク感がある」と話していた。
◇「1時間ぐらいたつと慣れてくる」
会場には、漱石アンドロイドをこの世に送り出した二松学舎大学の関係者もいた。その担当者によると「1時間ぐらい接していると、だんだん慣れてくる」という。
二松学舎大学では、付属の中学校や高校で「漱石アンドロイド」に朗読させるテストをして、生徒にアンケートを実施した。記者発表会での同大学の回答によれば、「違和感がいつなくなったか」という点について男女で大きな差が出たとのことだ。
「男性は最初の違和感があまり変わらないが、女性は1時間見ていると急速に違和感がなくなっていくという傾向があった。今後、アンドロイドが人間にどう受け入れられていくのか。年齢や性別によって違いがあるのか、より詳しく調査していきたい」(二松学舎大学の担当者)
漱石アンドロイドは、二松学舎の大学や高校の授業で「作品朗読」をしていく。来年1月27日には、同大学で開かれるイベントで特別ゲストとして登場し、再び一般向けの場に登場する予定だ。