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ロシアW杯期間の宿泊料金の不当な値上げや強制キャンセルが横行中! 対策を検討してみた

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
ロシアW杯の開催都市エカテリンブルクにあるモニュメント(2018年1月筆者撮影)

今年6月から7月に開催されるワールドカップ(W杯)期間中において、ロシア国内の各開催都市のホテルで宿泊料金が高騰している。

ロシア政府観光局は23日、今夏に開催されるサッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会の期間中、試合が行われる都市のホテルで宿泊料金を不当に値上げしている事例があるとして、悪質だったホテル41軒の名前を公表した。

出典:W杯期間、ホテル料金50倍も…露が41軒公表

実際にホテル予約サイトで検索してみたところ、W杯期間中の各開催都市ともに最安値でも1泊5万円程度、アクセスの良い立地だと10万円を超える価格帯でしか、空き部屋が出てこない状態だ。

筆者が先月、ロシアW杯の開催都市を下見に行った際は(現地レポートはこちら)、街の中心部で1泊5千円前後から中級のホテルを予約できた。つまり普段の宿泊料金よりも10~20倍も値上げされているのだ。

ちなみに現在、ホテル予約サイトでW杯期間中の検索結果に出てくる部屋のほとんどが「民泊物件」となっている。実際に施設の詳細をクリックすると、「Hotel」という文言はなく、「Apartment」だったり、単なるストリート名が施設名に登録されていて、掲載されている写真を見ても一般の不動産物件である形が大半だ。

Booking.comで不当な値上げや強制キャンセルが横行中

私は昨年12月、グループステージの組み合わせが決まった直後、日本代表がセネガル戦を戦う都市、エカテリンブルクの宿泊施設(アパートメント)をBooking.comを通して、通常価格の1泊3,300ルーブル(約6,600円)で予約した。

すると、その1カ月後にBooking.comから6倍の1泊20,000ルーブル(約4万円)に値上げするという通知メールが来て、「受け入れられない」と返事をすると、強制的に予約がキャンセルされてしまった。

Booking.comから著者宛に送られてきたメール。1泊4万円が「可能な限りの低額」らしい
Booking.comから著者宛に送られてきたメール。1泊4万円が「可能な限りの低額」らしい

Booking.comに対してクレームを入れたが、「誤植を含む明らかな誤り・誤記がある場合、これらは拘束力を有しません」という利用規約を盾に、受け付けてくれなかった。

筆者は現地観戦予定のサポーターを200人集めたコミュニティを運営しているが、その中でBooking.comから一方的な値上げや強制キャンセルをされた人がいるかアンケートを取ったところ、こういった事案が10件以上も確認された。

なぜBooking.comのみにこのような事態が集中しているのだろうか?

旅行業界に詳しい関係者に聞いてみたところ、「Booking.comはキャンセル可の予約形式が多く、現地決済が基本。つまり事前に金銭のやり取りが発生しないため、宿側からのキャンセルも容易になる。Booking.comは宿側に金銭的なペナルティを課すわけでもなく、キャンセルされた客は宿に低評価を下すこともできない。そういったBooking.comの仕組みが、宿側による強制キャンセルを助長しているのではないか」と答えてくれた。

個人で各種手配を行っている人は注意してほしい。

宿泊料金が高騰している理由

そもそもなぜ、通常のホテルの空き部屋がホテル予約サイトで表示されないのだろうか?

日本の旅行代理店に取材したところ、FIFA公認の旅行代理店であるMatch社が開催都市の大半のホテルについて仮予約を入れていて、取材した代理店ですら開催都市における通常のホテルの直接予約ができない状態となっているそうだ。

要するに、旅行客が通常宿泊するようなホテルのほとんどが2月1日現在、ホテル予約サイトでは予約ができない状況となっているのだ。この供給過少な状態が、民泊物件の価格上昇の背景と言える。

ちなみにMatch社とは、確保したホテルと航空機やバスなどを組み合わせて、選手、大会関係者、スポンサー、各国旅行代理店などにツアーパッケージを提供する代理店である(Match社が押さえている一部のホテルについては、FIFAの公式サイトで一般旅行客向けに販売されている)。

筆者は2006年ドイツW杯、2010年南アフリカW杯、2014年ブラジルW杯と現地に行っているが、ここまで宿泊価格が高騰している大会は初めてだ。

「売り手市場」に対する対策は?

では、このように需要よりも供給の方が過少な「売り手市場」の状態に対して、僕ら現地に行く予定のサポーターは泣き寝入りせざるを得ないのだろうか?

筆者の答えはノーだ。

過去の事例を見ても、Match社が主催するパックツアーで全ての部屋が埋まることはまず有り得ないので、今後、Match社が仮押さえしていたホテルの部屋が、一般の個人手配の旅行客に開放される日が来ると予想される。

ただし、そもそもホテル数の少ない開催都市においては、一般旅行者向けに空き部屋が開放されない可能性もある。人口30万人のサランスク(日本代表がコロンビア戦を戦う都市)は厳しいだろう。

人口150万人のエカテリンブルクについては、1月の下見旅の際に街中にシティホテルがたくさんあるのを確認できた。Match社が仮予約した部屋を手放した後は、相場価格は下落すると見込んでいる。人口100万人のヴォルゴグラード(日本代表がポーランド戦を戦う都市)については、街を実際に歩いてみると人口の割にはホテルの数が少なく感じたので、何とも予想しがたい。

ちなみに、JTBやHISなど日本の大手旅行代理店は、2月に入った現在もまだ通常価格のW杯パックツアーの概要をリリースしていない。2014年のブラジル大会では12月時点で価格も含めて発表していた。前回と比べて2カ月もツアー概要の発表が遅れているのは、Match社が仮押さえしているホテルの部屋がリリースされるのを待っている状態と推測される。

Match社が空き部屋を開放する「Xデー」がいつになるかは不明だが、我々一般旅行者は現時点のバブル価格に手を出さないのが賢明な選択だろう。

あくまで過去3大会の経験に基づいた個人的意見だが、その「Xデー」を過ぎればロシアの宿泊価格の相場は一旦落ち着くと筆者は予想する。仮に価格が下落しなかったとしても、10万円以上する民泊物件が全て予約で埋まることはまずないので、最終的には直前で空いている物件の中から最もリーズナブルな部屋を予約すれば、「宿が手配できない」という最悪な事態は回避できるだろう。

とにかく現地観戦を予定しているサポーターは、今後ホテル予約サイトの価格をつぶさに確認することをお勧めする。

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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