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映画「グランツーリスモ」 ゲーマーがプロのレーサーになった本当の話

河村鳴紘サブカル専門ライター
映画「グランツーリスモ」

 累計出荷数9000万本の人気ゲーム「グランツーリスモ」シリーズを元にした同名の実写映画「グランツーリスモ」(ニール・ブロムカンプ監督)が15日、公開されました。ゲーム好きの若者が、本物のドライバーに抜擢(ばってき)されてモータースポーツに挑むという内容で、実話をベースにしています。

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 ゲーマーがプロのレーサーになるというのは、ウソのように思えますが、ゲームファンの間では知られている本当の話です。

 2008年~16年に実施されたドライバー育成プログラム「GT アカデミー」では、世界から選抜されたゲーム「グランツーリスモ」のプレーヤーが選抜試験を受け、運転技術はもちろん、体力・精神力を鍛えて、本物のレースに挑んだのです。当時、これを知ったメディア側ですら「大丈夫なのか」と思うほどでしたが、同プログラム出身のレーサーが、実際のレースで表彰台に上がるなどの結果を出しました。映画の主人公ヤン・マーデンボロー選手も、その一人です。

ゲーマーからプロのドライバーになったヤン(左)と、かつての伝説のドライバーで今はエンジニアのジャック
ゲーマーからプロのドライバーになったヤン(左)と、かつての伝説のドライバーで今はエンジニアのジャック

 映画「グランツーリスモ」は、幼いころから車好きでプロのドライバーになることを夢見ているものの、大学を中退してゲームに明け暮れる青年・ヤン(アーチー・マデクウィさん)が、父から怒られる日々を過ごす場面から始まります。

 ところが、ゲーム「グランツーリスモ」のトッププレーヤーから本物のレーサーを育成するという企画が発表され、ヤンはゲーム大会を勝ち抜いて、アカデミーへの参加権を勝ち取ります。伝説のレーサーだったジャック(デヴィッド・ハーバーさん)からしごかれるというストーリーです。

 プレーヤーの選択次第で無数の体験ができるゲームは、一本道の映像とは「相性が悪い」とされていました。しかし、ゲームの市場が広がるにつれて、消費者とコンテンツの接点を増やすことが重視されるようになり、ソニーは自社の人気ゲームの映像化に乗り出しています。映画「グランツーリスモ」もその一つということになります。

 そう説明するとゲームっぽさが鼻につきそうですが、そんなことはありません。映画「グランツーリスモ」では、レース中の順位の演出、レースのコース取りなどに、ゲーム的な表現を取り入れて分かりやすくしており、むしろゲームの利点を生かしているとさえ言えます。

 また分かりやすさもポイントで、「ゲーマーがレーサーとして成功するか」を主軸に据え、前半はプロのレーサーになるための奮闘、後半はプロのレーサーとしての活動が描かれています。そして予想もしない危機、逆境からの逆転劇といったエンタメの要素が詰め込まれています。ベタですが、大変分かりやすい作りになっています。

 そして合間に入る小ネタ……プロのレーサーになるには金持ちが有利とか、出るクイは打たれるとか、ゲームは親に歓迎されないとか、バカにされる話もありました。見る人によってはイラっとするかもですが、第三者視点もよく理解した上で描かれています。個人的には、プロジェクトの発起人でアカデミーの設立者・ダニー(オーランド・ブルームさん)の、小ずるい?立ち回りが憎めません。

映画のキーポイントで、観客の心をざわつかせるであろうダニー。
映画のキーポイントで、観客の心をざわつかせるであろうダニー。

 なお、映画に登場するゲーム画面と、実写のレースシーンですが、シームレスになっていて、その描写に引き込まれてしまいます。時速320キロのレースシーンは手に汗を握るでしょうし、ゲームの知識がなくても普通に楽しめる作品になっています。そして映画を見た後、ゲームがやりたくなるのは、ゲーム原作ならではのポイントと言えそうです。

 そして映画内でゲーム「グランツーリスモ」のことを、主人公が「シミュレーター」と修正するシーンがあるのですが、そこにもクリエーターの誇りを感じせてくれます。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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