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藤井聡太挑戦者(19)優位に立つ 渡辺明王将(37)粘って耐えられるか? 王将戦第2局2日目開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月23日。大阪府高槻市・山水館において第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第2局▲渡辺明王将(37歳)-△藤井聡太挑戦者(19歳)戦、1日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 本局の立会人は谷川九段。記録係は折田翔吾四段です。

谷川「それでは1日目の指し手を読み上げます」

折田「先手、渡辺王将▲2六歩。後手、藤井竜王△8四歩・・・」

 折田四段の棋譜読み上げに従って、両対局者は1日目の指し手を再現します。昨日は57手目、渡辺王将が馬取りに銀を出たあと、藤井挑戦者が58手目を封じました。

谷川「それでは封じ手を開封します」

 谷川九段が2通の封筒にはさみを入れ、開封しました。

谷川「封じ手は△3五銀です」

 藤井挑戦者は銀を出ました。攻めをつなげるうまい一手です。

 △3五銀という符号を聞くと、1971年名人戦七番勝負第3局▲大山康晴名人-△升田幸三九段戦で出た、升田九段の歴史的妙手を思い起こす方もおられるかもしれません。

谷川「それでは時間になっておりますので、対局を再開いたします」

 両対局者は改めて一礼。2日目の対局が始まりました。

 渡辺王将も封じ手は予想していたのでしょう。渡辺王将は馬、藤井挑戦者は飛車を取り合い、以下しばらくは、ぱたぱたと手が進んでいきました。形勢は藤井挑戦者優勢です。

 渡辺王将にとっては苦しい展開となりました。勝負とともにファンのため、早く終わらせないように、ということも考えているかもしれません。

 将棋界では、2日制の対局で1日目に終わった例は1度もありません。ただし2日目、昼食休憩前に終わる例はしばしばあります。

 2004年度王将戦七番勝負は森内俊之王将に羽生善治王位・王座が挑戦(当時、両者ともに34歳)。第4局は2日目の12時13分に終わり、羽生挑戦者が一気4連勝で復位を達成しました。

「羽生“昼飯前”奪回!」

 当時のスポーツニッポン紙には、そんなタイトルがつけられました。午後からはファンのため、大盤解説場において、復位なった羽生王将のトークショーが開催されています。

 本局、優位に立っている藤井挑戦者は慎重に時間を使って指し進めています。飛車を相手陣に打ち込み、あともう少しで相手玉に手が届きそう。しかしよくなってから勝ち切るのが難しいのが将棋です。藤井挑戦者も楽観している雰囲気はありません。

 渡辺王将ももちろん、あきらめている様子はありません。勝負はまだまだわかりません。少なくとも、すぐに終わることはなさそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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